デジタル印刷に参入するとき、印刷市場、印刷機の選定、印刷価格、印刷ロットなどが当然気がかりですが、参考のために、米国の軟包装分野でのデジタル印刷の展開事例を紹介します。
本事例は、米国の軟包装分野における第三者機関であるFlexible Packaging Association (FPA)が主催するFlexible Packaging Achievement Awardsの受賞作品です。
また、その他の入賞作品については、Flexible Packaging Association (FPA)より、リリースとして公開されており、下記からリリース(PDF)をダウンロードすることができます。
Release2016FPAFlexiblePackagingAchievementAwards1
本事例ではパッケージを販売促進用に上手に使用しています。コカコーラの名前入りのラベルとはまた違った企画ですが、消費者から「夏の思い出、お気に入りの写真」を応募してもらい、審査の結果、OKとなった写真を図の写真のように追い刷りして発売しています。当然、自分の写真が印刷されたスナックが店頭に並べば購入するでしょう。デジタル印刷の特徴である「追い刷り」を上手に活用しています。
従来の印刷法では、追い刷りもできますが、「版」を使用するため、特定の写真を印刷する場合は、次々と「版」を変えないと、このような企画の製品は発売できません。印刷の版替えの時間ロスで割高な製品になります。ポイントをまとめると以下のようになります。
顧客に「商品提案」ができる力が必要
デジタル印刷を行う場合、印刷受注だけに徹しても多くの利益を上げることは難しいと思います。積極的な受注のために、デジタル印刷を上手に展開できる力量が重要と思います。自社でできない場合は、「パートナー」を選定し、共にWIN-WINの関係を構築することが重要です。
包装印刷の後工程も重要
包装は、多くの場合、内面にヒートシール層としてPE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)のフィルム層をラミネートします。あるいは多量の場合は、押出しコート(EC:Extrusion Coat)を行います。これらの知識も必要となります。
さらに 巻き取り納入、製袋納入となりますと、スリッター(slitter)や製袋機の知識も必要となります。自社で無理な場合は、「パートナー」を選定し、共にWIN-WINの関係を構築することが重要です。
印刷フィルムの知識
軟包装は、フィルムに表刷り、あるいは裏刷りをして後工程のラミネート工程などに進みます。印刷基材は、基本的には、OPP、PET、ONフィルムですが、CPP、PEなども製品・用途によっては印刷対象となります。
日本には、多くのフィルムの種類がありますので、製品の包装目的に合ったフィルムのグレード選定が重要です。どのフィルムに印刷して良いか判断できない場合は、専門の方に相談して進行するのが良いと思います。
包装される内容物を十分に理解
包装の印刷においては、包装対象となる製品をよく理解した上で印刷基材など材料を選定します。内容物は何か?包装後の処理はどのような方法か?(ボイル、冷凍など)、包装後の後処理に適した印刷基材を選定します。耐熱性がないとできた包材がシュリンクします。カールして変形し、包装商品として販売できなくなります。
包装印刷にクレームはつきもの
雑誌、パンフレットなど通常の印刷品と同様に、包装の印刷にも「クレーム」は発生します。「クレーム」対応力が有るか無いかで、その後の受注も決まります。クレームが発生したら、その道の専門家に相談することが賢明だと思います。
次回はこの続きを説明します。
住本技術士事務所 所長 住本充弘氏(すみもと みつひろ)
技術士(経営工学)、包装管理士((社)日本包装技術協会認定)
日本包装コンサルタント協会会員・理事
技術士包装物流グループ会員・理事
日本包装学会会員
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伸びるデジタル印刷と包装分野への参入
2018年7月13日スペシャリスト

一般社団法人PODi
1996年に米国で誕生した世界最大のデジタル印刷推進団体。印刷会社800社、ベンダー50社以上が参加し、デジタル印刷を活用した成功事例をはじめ、多くの情報を会員向けに公開している。また、WhatTheyThinkをはじめDMAなどの海外の団体と提携し、その主要なニュースを日本語版で配信している。
デジタル印刷に参入するとき、印刷市場、印刷機の選定、印刷価格、印刷ロットなどが当然気がかりですが、参考のために、米国の軟包装分野でのデジタル印刷の展開事例を紹介します。
本事例は、米国の軟包装分野における第三者機関であるFlexible Packaging Association (FPA)が主催するFlexible Packaging Achievement Awardsの受賞作品です。
また、その他の入賞作品については、Flexible Packaging Association (FPA)より、リリースとして公開されており、下記からリリース(PDF)をダウンロードすることができます。
Release2016FPAFlexiblePackagingAchievementAwards1
本事例ではパッケージを販売促進用に上手に使用しています。コカコーラの名前入りのラベルとはまた違った企画ですが、消費者から「夏の思い出、お気に入りの写真」を応募してもらい、審査の結果、OKとなった写真を図の写真のように追い刷りして発売しています。当然、自分の写真が印刷されたスナックが店頭に並べば購入するでしょう。デジタル印刷の特徴である「追い刷り」を上手に活用しています。
従来の印刷法では、追い刷りもできますが、「版」を使用するため、特定の写真を印刷する場合は、次々と「版」を変えないと、このような企画の製品は発売できません。印刷の版替えの時間ロスで割高な製品になります。ポイントをまとめると以下のようになります。
顧客に「商品提案」ができる力が必要
デジタル印刷を行う場合、印刷受注だけに徹しても多くの利益を上げることは難しいと思います。積極的な受注のために、デジタル印刷を上手に展開できる力量が重要と思います。自社でできない場合は、「パートナー」を選定し、共にWIN-WINの関係を構築することが重要です。
包装印刷の後工程も重要
包装は、多くの場合、内面にヒートシール層としてPE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)のフィルム層をラミネートします。あるいは多量の場合は、押出しコート(EC:Extrusion Coat)を行います。これらの知識も必要となります。
さらに 巻き取り納入、製袋納入となりますと、スリッター(slitter)や製袋機の知識も必要となります。自社で無理な場合は、「パートナー」を選定し、共にWIN-WINの関係を構築することが重要です。
印刷フィルムの知識
軟包装は、フィルムに表刷り、あるいは裏刷りをして後工程のラミネート工程などに進みます。印刷基材は、基本的には、OPP、PET、ONフィルムですが、CPP、PEなども製品・用途によっては印刷対象となります。
日本には、多くのフィルムの種類がありますので、製品の包装目的に合ったフィルムのグレード選定が重要です。どのフィルムに印刷して良いか判断できない場合は、専門の方に相談して進行するのが良いと思います。
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