衣類などへの転写プリントに使用する熱転写シートの製造・販売を手掛ける(株)尾崎スクリーン(本社/香川県坂出市、瀧本悠子社長)は、「HP Indigo 7K デジタル印刷機」を活用した国内初のフルカラーデジタル転写「DIGITAL OFFSET TRANSFERS(デジタル オフセット トランスファー、以下、D.O.T)」を確立し、市場提供を開始している。今回、同社・常務取締役の大須賀卓也氏、営業本部長の野口建太郎氏、技術マネージャーの柴田靖也氏にD.O.T開発の経緯や今後の取り組みなどについて聞いた。
1976年5月にシルク製版業として個人創業した同社は、1982年5月、(有)尾崎スクリーンとして設立。創業当時は、シルクスクリーン製版業を主軸に業務を展開していた。その同社に転機が訪れたのは1994年7月の「デジタル転写シート」(特許出願)の開発だ。
この「デジタル転写シート」は、従来の1色1版で転写マークを作成する手法をデジタルプリンターで1枚のデジタル転写マークの版として制作するもの。この技術の確立こそが現在の「D.O.T」の礎となっている。
以来、同社はシルクスクリーン製版業からデジタル転写シートの製造・販売へと業態を変革。このデジタル転写シートは、同社の主力商品として市場から高く評価され、生産拠点の拡充や東京への進出などにつながっていった。
2012年4月には、従来のカットシートではなく、ロール給紙による業界初のロール転写マーク「スターロール」の製造を開始し、大量生産体制を構築している。
国内初のデジタル転写「D.O.T」への挑戦
D.O.Tへの取り組みは2017年、Indigoを活用したデジタル転写を模索したことがきっかけだと大須賀氏は説明する。「Indigoによる高品質画質の転写シートの製造はできないか」と、以前からIndigoの品質や生産性に関心を寄せていた大須賀氏は、知人を介して日本HP社とコンタクトし、Indigoを生産機としたデジタル転写について検討を開始。実際に同社が使用する基材を持ち込み、テスト印刷なども行ったが、結果として導入に至る成果を出すことができなかった。
柴田氏は「当社が使用しているフィルムで印刷を行ったが定着が悪く、すぐにトナーが剥がれてしまった」と、また野口氏は「印刷ができても絵柄を転写できなければ商品にはならない。この印刷と転写のバランスがうまくいかなかった」と、その当時を振り返る。
具体的には、印刷の定着については、事前にプライマー処理を施したフィルムを使用することで問題をクリア。その転写フィルムで生地に絵柄を転写することにも成功した。しかし、転写先となるTシャツなどの衣類は、着替えたら必ず洗濯される。そこで転写した生地を実際に洗濯してみると絵柄は、綺麗に洗い流されてしまった。
この問題が解消されないまま2020年、世界を震撼させたコロナパンデミックにより、この新たな取り組みは頓挫していく。
海外事例を参考に取り組みを再開〜本稼働へ
Indigoを活用したデジタル転写への取り組みが再開したのは2021年のこと。当時の日本HPの担当が新たな提案を携えてきたことから始まる。その新たな提案とは、Indigoで転写マークを制作した海外の事例だ。海外で可能であれば自社でもできるはず。そう考えた大須賀氏は、改めてIndigoの活用を目指して活動を再開。これまでのテストで印刷と転写の確認はできている。残るは、洗濯による転写剥がれという課題の解消だ。そこで大須賀氏は、海外事例でデジタル転写に使用されている資材の提供先と直接取引ができるルートを確立。Indigoと海外で実績のある資材を活用することで、これまでの課題を克服できると確信した。そして、その生産機として同社は、HP Indigo 7K デジタル印刷機の導入を決断した。
同社が導入したHP Indigo 7K デジタル印刷機は、CMYK4色に加え、特色を3色搭載でき、最大で7色印刷が可能。黒い紙や色紙、蒸着紙、合成紙など幅広いメディアに対応する。最大用紙サイズは、330×482mmで、用紙対応厚は、最大550ミクロン。同社では、プレミアムホワイト、ビビッドピンク、ビビットグリーンの特色3色を搭載した7色モデルを採用した。そして2023年10月、D.O.Tをスタートさせる。
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以来、同社はシルクスクリーン製版業からデジタル転写シートの製造・販売へと業態を変革。このデジタル転写シートは、同社の主力商品として市場から高く評価され、生産拠点の拡充や東京への進出などにつながっていった。
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