海外の包装と日本の場合
包装の三大機能の一つが、製品の保護です。写真は、イランのピスタチオの包装です。外装は、PPのシュリンクフィルムです。ピスタチオは、カートンに直接入っています。乾燥した地域では、これで良いかも知れませんが、高温多湿の日本では、焙煎したピスタチオが吸湿し、商品価値が落ちます。また、酸化防止も必要です。この商品が日本で流通するためには、日本の気候、流通、習慣などに適したように変えなくてはいけません。
・防湿性
・酸化防止
・易開封・再封性
・食べ方提案
・産地の物語
このくらいの対応は必要です。あるいは二次元コードでもっと情報を提供することも必要です。
今回は、防湿性について説明します。防湿性は、乾燥剤の入った小袋を入れる、もしくは、防湿性のある袋を使用する、この二通りが有ります。防湿性のある袋を使用する場合について説明します。
防湿性包装
アルミ箔をラミネートする方法と透明バリアフィルムを使用する方法が有ります。アルミ箔を使用した場合は、中身が見えなくなります。やや商品価値の面からは不利ですが、長期間の場合は、必要です。
今回は、透明フィルム仕様を考えたいと思います。防湿性のあるフィルムは、OPP, 透明蒸着PETフィルム、透明蒸着ナイロンフィルム、PVDCコートOPP, PVDCコートPETフィルム、PVDCコートナイロンフィルムが一般的な候補フィルムです。内面のヒートシール材は、PE, LLDPE, CPP が考えられます。
印刷をするか無地にするかは、販売する企業のデザインの問題となります。
この場合、ピスタチオが固いため、袋の内面の擦り傷防止の面からCPPの方が良いかも知れません。日本の場合は、脱酸素剤の小袋を封入することになるでしょう。また、量が多く一度に食べられないので易開封及び再封性が必要です。ジッパー付きの袋になります。
この包装設計において、さらに留意することは、充填シール機があります。縦ピロー包装をする場合は、中身の重量が結構ありますから、内面のシーラントのホットタック性の検討も必要です。
このように、一つのパッケージ商品を見るとその包装設計には多くの検討事項が有ります。市場ウォッチングが大切です。
もう少し技術的な面を説明しますと、防湿設計では、フィルムの水蒸気透過度の数値が重要です。(WVTR: Water Vapor Transmission Rate) 水蒸気透過度は「透湿度」とも呼ばれており、JIS K 7129で,次のように定義されています。
規定の温度及び湿度の条件で、単位時間に単位面積の試験片を通過する水蒸気の量
具体的には、水蒸気透過度は、24時間に透過した面積1m2当たりの水蒸気のグラム数[g/(m2・24h)]で表します。包装設計者は、多くのフィルムの大体の水蒸気透過度を頭に入れています。
酸化防止にはフィルムの酸素透過度の数値を検討します。酸素の場合は、透過する体積で表します。
酸素透過度(Oxygen Transmission Rate; OTR)
cc・20μ/m2・day・atm
cc・mil/100in2・day・atm
酸素のデータも包装設計者は、同様にデータを頭に入れています。市販されている包装製品は、このような設計に基づき包装されています。具体的な数値として、透明ハイバリアフィルムでは、1 g/m2/24 hr 1cc/m2/day/atm などです。
これは包装製品の保護に重要な設計事項です。もう少し学んでみてください。
住本技術士事務所 所長 住本充弘氏(すみもと みつひろ)
技術士(経営工学)、包装管理士((社)日本包装技術協会認定)
日本包装コンサルタント協会会員・理事
技術士包装物流グループ会員・理事
日本包装学会会員
新着トピックス
-
ケーススタディ 門那シーリング印刷(大阪)、除電機能で作業効率向上[Revoria Press PC1120導入事例]
-
ケーススタディ 尾崎スクリーン、熱転写の新たな領域へ[HP Indigo 7K デジタル印刷機導入事例]
リンクス、スキルレスで人材確保、育成期間短縮[JetPress750S導入事例]
2025年6月27日ケーススタディ
「アイデア什器」の(株)リンクス(本社/岐阜県関市倉知2639-1、吉田哲也社長)は昨年11月、富士フイルムの枚葉インクジェットデジタルプレス「JetPress750S」(厚紙仕様)...全文を読む
コニカミノルタジャパン、AccurioDays2025で新たなフラッグシップモデルを公開
2025年6月4日製品・テクノロジー
コニカミノルタジャパン(株)は、デジタルカラー印刷システムの最上位機種「AccurioPress(アキュリオプレス) C14010シリーズ」の発売を記念して4月23・24日の2日間、...全文を読む
最新ニュース
エプソン、世界最少の小型軽量デジタルプリンター「EP-101」が「機械遺産」に選定
2025年8月7日
セイコーエプソン(株)がエプソンミュージアム諏訪(長野県諏訪市)に所蔵している、1968年より発売した世界最小(同社調べ(当時))の小型軽量デジタルプリンター「EP-101」が、(一...全文を読む
リコー、広幅対応DTFプリンター「RICOH Pro D1600」を松井色素化学工業所に供給開始
2025年8月7日
(株)リコー(大山晃社長)は、産業用テキスタイル印刷市場向けに、高生産性を実現する広幅対応Direct To Film(DTF)プリンター「RICOH Pro D1600」について、...全文を読む
コニカミノルタ、反応染料用インライン前処理インク「O'ROBE」の提供開始
2025年7月29日
コニカミノルタ(株)(本社/東京都千代田区、大幸利充社長、以下、コニカミノルタ)は、インクジェットテキスタイルプリンター「Nassenger(ナッセンジャー)」シリーズ用インクとして...全文を読む
連載|より包装材料の印刷の理解を深めるために - 9
伸びるデジタル印刷と包装分野への参入
2018年9月12日スペシャリスト

一般社団法人PODi
1996年に米国で誕生した世界最大のデジタル印刷推進団体。印刷会社800社、ベンダー50社以上が参加し、デジタル印刷を活用した成功事例をはじめ、多くの情報を会員向けに公開している。また、WhatTheyThinkをはじめDMAなどの海外の団体と提携し、その主要なニュースを日本語版で配信している。
海外の包装と日本の場合
包装の三大機能の一つが、製品の保護です。写真は、イランのピスタチオの包装です。外装は、PPのシュリンクフィルムです。ピスタチオは、カートンに直接入っています。乾燥した地域では、これで良いかも知れませんが、高温多湿の日本では、焙煎したピスタチオが吸湿し、商品価値が落ちます。また、酸化防止も必要です。この商品が日本で流通するためには、日本の気候、流通、習慣などに適したように変えなくてはいけません。
・防湿性
・酸化防止
・易開封・再封性
・食べ方提案
・産地の物語
このくらいの対応は必要です。あるいは二次元コードでもっと情報を提供することも必要です。
今回は、防湿性について説明します。防湿性は、乾燥剤の入った小袋を入れる、もしくは、防湿性のある袋を使用する、この二通りが有ります。防湿性のある袋を使用する場合について説明します。
防湿性包装
アルミ箔をラミネートする方法と透明バリアフィルムを使用する方法が有ります。アルミ箔を使用した場合は、中身が見えなくなります。やや商品価値の面からは不利ですが、長期間の場合は、必要です。
今回は、透明フィルム仕様を考えたいと思います。防湿性のあるフィルムは、OPP, 透明蒸着PETフィルム、透明蒸着ナイロンフィルム、PVDCコートOPP, PVDCコートPETフィルム、PVDCコートナイロンフィルムが一般的な候補フィルムです。内面のヒートシール材は、PE, LLDPE, CPP が考えられます。
印刷をするか無地にするかは、販売する企業のデザインの問題となります。
この場合、ピスタチオが固いため、袋の内面の擦り傷防止の面からCPPの方が良いかも知れません。日本の場合は、脱酸素剤の小袋を封入することになるでしょう。また、量が多く一度に食べられないので易開封及び再封性が必要です。ジッパー付きの袋になります。
この包装設計において、さらに留意することは、充填シール機があります。縦ピロー包装をする場合は、中身の重量が結構ありますから、内面のシーラントのホットタック性の検討も必要です。
このように、一つのパッケージ商品を見るとその包装設計には多くの検討事項が有ります。市場ウォッチングが大切です。
もう少し技術的な面を説明しますと、防湿設計では、フィルムの水蒸気透過度の数値が重要です。(WVTR: Water Vapor Transmission Rate) 水蒸気透過度は「透湿度」とも呼ばれており、JIS K 7129で,次のように定義されています。
規定の温度及び湿度の条件で、単位時間に単位面積の試験片を通過する水蒸気の量
具体的には、水蒸気透過度は、24時間に透過した面積1m2当たりの水蒸気のグラム数[g/(m2・24h)]で表します。包装設計者は、多くのフィルムの大体の水蒸気透過度を頭に入れています。
酸化防止にはフィルムの酸素透過度の数値を検討します。酸素の場合は、透過する体積で表します。
酸素透過度(Oxygen Transmission Rate; OTR)
cc・20μ/m2・day・atm
cc・mil/100in2・day・atm
酸素のデータも包装設計者は、同様にデータを頭に入れています。市販されている包装製品は、このような設計に基づき包装されています。具体的な数値として、透明ハイバリアフィルムでは、1 g/m2/24 hr 1cc/m2/day/atm などです。
これは包装製品の保護に重要な設計事項です。もう少し学んでみてください。
住本技術士事務所 所長 住本充弘氏(すみもと みつひろ)
技術士(経営工学)、包装管理士((社)日本包装技術協会認定)
日本包装コンサルタント協会会員・理事
技術士包装物流グループ会員・理事
日本包装学会会員
新着トピックス
-
門那シーリング印刷(大阪)、除電機能で作業効率向上[Revoria Press PC1120導入事例]
2025年8月8日 ケーススタディ
-
尾崎スクリーン、熱転写の新たな領域へ[HP Indigo 7K デジタル印刷機導入事例]
2025年8月4日 ケーススタディ
-
リンクス、スキルレスで人材確保、育成期間短縮[JetPress750S導入事例]
2025年6月27日 ケーススタディ
-
コニカミノルタジャパン、AccurioDays2025で新たなフラッグシップモデルを公開
2025年6月4日 製品・テクノロジー
-
大村印刷、特殊トナーと用紙対応力で小ロット・高付加価値ニーズに対応
2025年5月8日 ケーススタディ
新着ニュース
SNSランキング
- 50sharesリコー、企業内・商用印刷の幅広いニーズに対応するカラー機の新機種発売
- 47sharesキヤノンPPS、4月11日「Hunkeler Innovationdays 2025レポートセミナー」開催
- 38shares門那シーリング印刷(大阪)、除電機能で作業効率向上[Revoria Press PC1120導入事例]
- 38sharesコニカミノルタジャパン、AccurioDays2025で新たなフラッグシップモデルを公開
- 35sharesKOMORI、China Print 2025でB2デジタル「J-throne29」を中国初出展
- 33sharesウケゼキ、小ロット厚紙・パッケージ印刷を強化[Revoria PressEC1100導入事例]
- 30sharesコニカミノルタジャパン、機能強化モデル「AccurioPress C7100 ENHANCED」発売
- 28sharesパラシュート、Webプラットフォームをベースとした販促資材管理サービスの提供開始
- 28shares日印機工とプリデジ協、IGAS2027の日程決定-2027年8月に東京ビッグサイトで開催
- 24shares尾崎スクリーン、熱転写の新たな領域へ[HP Indigo 7K デジタル印刷機導入事例]
おすすめコンテンツ
尾崎スクリーン、熱転写の新たな領域へ[HP Indigo 7K デジタル印刷機導入事例]
竹田印刷、多様な個性をかたちに〜アール・ブリュット作品を世界に発信
奥村印刷、新たな価値を紙に付加〜「折り紙食器 beak」でIPA2024に入賞