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連載|より包装材料の印刷の理解を深めるために - 9

伸びるデジタル印刷と包装分野への参入

2018年9月12日スペシャリスト

一般社団法人PODi

一般社団法人PODi

1996年に米国で誕生した世界最大のデジタル印刷推進団体。印刷会社800社、ベンダー50社以上が参加し、デジタル印刷を活用した成功事例をはじめ、多くの情報を会員向けに公開している。また、WhatTheyThinkをはじめDMAなどの海外の団体と提携し、その主要なニュースを日本語版で配信している。

http://www.podi.or.jp

海外の包装と日本の場合

 包装の三大機能の一つが、製品の保護です。写真は、イランのピスタチオの包装です。外装は、PPのシュリンクフィルムです。ピスタチオは、カートンに直接入っています。乾燥した地域では、これで良いかも知れませんが、高温多湿の日本では、焙煎したピスタチオが吸湿し、商品価値が落ちます。また、酸化防止も必要です。この商品が日本で流通するためには、日本の気候、流通、習慣などに適したように変えなくてはいけません。


・防湿性
・酸化防止
・易開封・再封性
・食べ方提案
・産地の物語

 このくらいの対応は必要です。あるいは二次元コードでもっと情報を提供することも必要です。

 今回は、防湿性について説明します。防湿性は、乾燥剤の入った小袋を入れる、もしくは、防湿性のある袋を使用する、この二通りが有ります。防湿性のある袋を使用する場合について説明します。

防湿性包装

 アルミ箔をラミネートする方法と透明バリアフィルムを使用する方法が有ります。アルミ箔を使用した場合は、中身が見えなくなります。やや商品価値の面からは不利ですが、長期間の場合は、必要です。

 今回は、透明フィルム仕様を考えたいと思います。防湿性のあるフィルムは、OPP, 透明蒸着PETフィルム、透明蒸着ナイロンフィルム、PVDCコートOPP, PVDCコートPETフィルム、PVDCコートナイロンフィルムが一般的な候補フィルムです。内面のヒートシール材は、PE, LLDPE, CPP が考えられます。

 印刷をするか無地にするかは、販売する企業のデザインの問題となります。


 この場合、ピスタチオが固いため、袋の内面の擦り傷防止の面からCPPの方が良いかも知れません。日本の場合は、脱酸素剤の小袋を封入することになるでしょう。また、量が多く一度に食べられないので易開封及び再封性が必要です。ジッパー付きの袋になります。

 この包装設計において、さらに留意することは、充填シール機があります。縦ピロー包装をする場合は、中身の重量が結構ありますから、内面のシーラントのホットタック性の検討も必要です。

 このように、一つのパッケージ商品を見るとその包装設計には多くの検討事項が有ります。市場ウォッチングが大切です。

 もう少し技術的な面を説明しますと、防湿設計では、フィルムの水蒸気透過度の数値が重要です。(WVTR: Water Vapor Transmission Rate) 水蒸気透過度は「透湿度」とも呼ばれており、JIS K 7129で,次のように定義されています。

規定の温度及び湿度の条件で、単位時間に単位面積の試験片を通過する水蒸気の量

 具体的には、水蒸気透過度は、24時間に透過した面積1m2当たりの水蒸気のグラム数[g/(m2・24h)]で表します。包装設計者は、多くのフィルムの大体の水蒸気透過度を頭に入れています。

 酸化防止にはフィルムの酸素透過度の数値を検討します。酸素の場合は、透過する体積で表します。

酸素透過度(Oxygen Transmission Rate; OTR)
cc・20μ/m2・day・atm
cc・mil/100in2・day・atm

 酸素のデータも包装設計者は、同様にデータを頭に入れています。市販されている包装製品は、このような設計に基づき包装されています。具体的な数値として、透明ハイバリアフィルムでは、1 g/m2/24 hr 1cc/m2/day/atm などです。

 これは包装製品の保護に重要な設計事項です。もう少し学んでみてください。


住本技術士事務所 所長 住本充弘氏(すみもと みつひろ)
技術士(経営工学)、包装管理士((社)日本包装技術協会認定)
日本包装コンサルタント協会会員・理事
技術士包装物流グループ会員・理事
日本包装学会会員

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伸びるデジタル印刷と包装分野への参入

2018年9月12日スペシャリスト

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1996年に米国で誕生した世界最大のデジタル印刷推進団体。印刷会社800社、ベンダー50社以上が参加し、デジタル印刷を活用した成功事例をはじめ、多くの情報を会員向けに公開している。また、WhatTheyThinkをはじめDMAなどの海外の団体と提携し、その主要なニュースを日本語版で配信している。

http://www.podi.or.jp

海外の包装と日本の場合

 包装の三大機能の一つが、製品の保護です。写真は、イランのピスタチオの包装です。外装は、PPのシュリンクフィルムです。ピスタチオは、カートンに直接入っています。乾燥した地域では、これで良いかも知れませんが、高温多湿の日本では、焙煎したピスタチオが吸湿し、商品価値が落ちます。また、酸化防止も必要です。この商品が日本で流通するためには、日本の気候、流通、習慣などに適したように変えなくてはいけません。


・防湿性
・酸化防止
・易開封・再封性
・食べ方提案
・産地の物語

 このくらいの対応は必要です。あるいは二次元コードでもっと情報を提供することも必要です。

 今回は、防湿性について説明します。防湿性は、乾燥剤の入った小袋を入れる、もしくは、防湿性のある袋を使用する、この二通りが有ります。防湿性のある袋を使用する場合について説明します。

防湿性包装

 アルミ箔をラミネートする方法と透明バリアフィルムを使用する方法が有ります。アルミ箔を使用した場合は、中身が見えなくなります。やや商品価値の面からは不利ですが、長期間の場合は、必要です。

 今回は、透明フィルム仕様を考えたいと思います。防湿性のあるフィルムは、OPP, 透明蒸着PETフィルム、透明蒸着ナイロンフィルム、PVDCコートOPP, PVDCコートPETフィルム、PVDCコートナイロンフィルムが一般的な候補フィルムです。内面のヒートシール材は、PE, LLDPE, CPP が考えられます。

 印刷をするか無地にするかは、販売する企業のデザインの問題となります。


 この場合、ピスタチオが固いため、袋の内面の擦り傷防止の面からCPPの方が良いかも知れません。日本の場合は、脱酸素剤の小袋を封入することになるでしょう。また、量が多く一度に食べられないので易開封及び再封性が必要です。ジッパー付きの袋になります。

 この包装設計において、さらに留意することは、充填シール機があります。縦ピロー包装をする場合は、中身の重量が結構ありますから、内面のシーラントのホットタック性の検討も必要です。

 このように、一つのパッケージ商品を見るとその包装設計には多くの検討事項が有ります。市場ウォッチングが大切です。

 もう少し技術的な面を説明しますと、防湿設計では、フィルムの水蒸気透過度の数値が重要です。(WVTR: Water Vapor Transmission Rate) 水蒸気透過度は「透湿度」とも呼ばれており、JIS K 7129で,次のように定義されています。

規定の温度及び湿度の条件で、単位時間に単位面積の試験片を通過する水蒸気の量

 具体的には、水蒸気透過度は、24時間に透過した面積1m2当たりの水蒸気のグラム数[g/(m2・24h)]で表します。包装設計者は、多くのフィルムの大体の水蒸気透過度を頭に入れています。

 酸化防止にはフィルムの酸素透過度の数値を検討します。酸素の場合は、透過する体積で表します。

酸素透過度(Oxygen Transmission Rate; OTR)
cc・20μ/m2・day・atm
cc・mil/100in2・day・atm

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 これは包装製品の保護に重要な設計事項です。もう少し学んでみてください。


住本技術士事務所 所長 住本充弘氏(すみもと みつひろ)
技術士(経営工学)、包装管理士((社)日本包装技術協会認定)
日本包装コンサルタント協会会員・理事
技術士包装物流グループ会員・理事
日本包装学会会員

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