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京セラドキュメントソリューションズ、商業用高速インクジェット事業に本格参入

「未踏の領域」新たに開拓:IJプロダクションプリンタ TASKalfa Pro 15000c

2020年3月31日製品・テクノロジースペシャリスト

高生産性を弾き出す連続運転と用紙対応力

 プロダクションプリンタとしての「生産性」を追求する同機において、谷口氏はインクジェット技術の優位性を2つ挙げている。そのひとつは「連続印刷」だ。

 電子写真方式の場合、連続運転時に一定のサイクルでキャリブレーションが入り、ダウンタイムが発生する。それに対し、「TASKalfa Pro」は9,000枚/時のノンストップ連続印刷が可能である。そして本体の最大給紙容量は1万4,950枚。かつ、これらの用紙は印刷中でも出し入れできる構造になっており、排紙部では最大1万5,200枚の出力紙をストックできる。

 一方、インクについてもインク供給経路内にサブタンクを設けており、運転しながらのインク交換が可能である。

 2つ目は、厚紙への対応だ。「TASKalfa Pro」は、インクジェットヘッドと用紙の距離を用紙に合わせて調整する機能を装備することで52g/平米から360g/平米までの多種多様な用紙に前処理なしで印刷できる。電子写真方式の場合、とくに厚紙は「印刷速度を落とさないと定着しない」「凹凸のある用紙では、凹みの部分にトナーがのりにくい」という問題があるが、「TASKalfa Pro」では、360g/平米の厚紙や凹凸のある用紙でも速度を落とすことなく綺麗な細線が再現できる。

 このように、インクジェット技術の優位性を活かした「TASKalfa Pro」は、機械本体スペックとしての印刷速度に加え、連続運転や用紙対応力によって高い生産性を誇る。

 「多彩な当社の技術を組み込むことで、高い生産性を実現した同機だが、フルオプションのノンストップモデルの価格は3,120万円程度を想定している。イニシャルコストを抑えたコンセプトも大きな特徴で、おもしろいものができたと自負している」(谷口氏)

 一方、複写機の設計思想から受け継がれるユーザーメンテナンス性も高生産性に寄与している。「TASKalfa Pro」は、本体やオプション機器の内部に正面からアクセスできる「フルフロントアクセス」を採用。メンテナンス性を高めることでダウンタイムを最小限に抑える工夫が施されている。

 さらに、紙詰まり発生時にもひとつの工夫がある。高速機であるため、紙詰まり発生時には胴内に20〜30枚程度の用紙が残る。そこでまず詰まっていない紙は、乾燥・デカーラー部の下に自動排出。フロントを開くと、詰まっている箇所(自動復帰できない部分)をLEDランプで知らせるとともに、点滅によって復帰作業の順番をナビゲートしてくれる。「シンプルな構造ゆえに、もともとメンテ箇所は少ないが、このような機能を搭載することで、プロダクション分野に向けたダウンタイムの抑制を高い次元で実現している」(谷口氏)

狙う印刷ボリュームレンジは30〜100万枚/月

 「TASKalfa Pro」の開発に着手したのはおよそ4年前。昨年4月から米国、欧州を中心としたテストユーザーからのフェードバックによってブラッシュアップを実施し、すでにこれら地域では昨年12月から販売を開始している。そのテストユーザーの1社(米国)では、同機を7台導入。トランザクション分野で活用されているという。

 同機がターゲットとする印刷ボリュームレンジは30〜100万枚/月。バリアブル印刷を前提としたトランザクションやパーソナライズDMの分野で多くの期待が寄せられている同機だが、谷口氏は「電子写真だと文字が光ってテカリが生じるが、インクの場合はその問題もなく、『目に優しい印刷物』ができる」とし、そのテキスト品質の高さも強調している。

 また、窓付き封筒の印刷でも電子写真方式のように熱がかからないため、耐熱フィルム仕様の封筒を使う必要がなく、コストを抑えることができる。

 一方、ある印刷会社からは、「高速連帳インクジェット機のサブ機として活用できるのでは」という声もあったという。「トナー機をサブ機にすると色味があまりにも違うので使いづらい。その意味で興味をもっていただいている」(谷口氏)

 今回、同機には新たに独自開発した水性顔料インク(4色)が採用されている。これは、三重県の玉城工場で開発・製造されているもので、耐光性や耐水性に加え、色域や両面印刷適性、印字品質、発色性に優れている。

 また、多彩なインラインオプションも用意。後加工については、ドキュメントフィーダーで100枚のステープルができるほか、パンチや2つ折り、3つ折りの中折りユニットなどのオプションも用意。A4で80頁の折ブックレットも加工できる。「必要最低限の機能は持っているが、同機のパフォーマンスを考慮し、現在はオフラインでの後加工機との連携を想定している。将来的にはインライン化も視野に入れている」(谷口氏)

 フロント側は、標準搭載のコントローラかオプションのFiery印刷サーバーを選択でき、ワークフローとの連携に関しては、すでにSCREEN「EQUIOS」とアグフア「アポジー」との連携が確認済みである。

メディア対応力の拡充や微細化進める

 同社は今年2月の「page2020」にも出展し、京セラの商業印刷市場参入は、業界の明るい話題として大きな注目を集めた。「1時間毎にデモを実施したが、用意していた資料が足らなくなるくらい多くの方が見学に来られ、印刷商社からもオファーをいただいた。概ね品質にポジティブな評価をいただき、手応えを感じている」(谷口氏)

 現在、実機は東京本社と大阪本社のショールームにそれぞれ1台ずつ設置されており、随時、印刷テストにも応じている。

 今後の開発の方向性について谷口氏は、「この事業は我々にとっても『未踏の領域』。今後もマーケティングを進めながらニーズを拾っていきたい」としながらも、メディア対応力の拡充や微細化、コート紙への対応を進めているという。とくに解像度については、「現在は600dpiだが、京セラは1,200dpiのインクジェットプリントヘッドを持っており、微細化させる。ひとつの事業として成長させていく中で、さらに領域を広げることも考え、ラインアップを拡充していきたい」(谷口氏)

 また、検査機能とインクの大容量化にも要望が寄せられており、検査機能はインラインでの検討を進めていく方針で、インクの大容量化はオプション設定として準備を進めているという。

 販売目標は、世界で500台、日本国内はその10%にあたる50台を目指す方針。

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高生産性を弾き出す連続運転と用紙対応力

 プロダクションプリンタとしての「生産性」を追求する同機において、谷口氏はインクジェット技術の優位性を2つ挙げている。そのひとつは「連続印刷」だ。

 電子写真方式の場合、連続運転時に一定のサイクルでキャリブレーションが入り、ダウンタイムが発生する。それに対し、「TASKalfa Pro」は9,000枚/時のノンストップ連続印刷が可能である。そして本体の最大給紙容量は1万4,950枚。かつ、これらの用紙は印刷中でも出し入れできる構造になっており、排紙部では最大1万5,200枚の出力紙をストックできる。

 一方、インクについてもインク供給経路内にサブタンクを設けており、運転しながらのインク交換が可能である。

 2つ目は、厚紙への対応だ。「TASKalfa Pro」は、インクジェットヘッドと用紙の距離を用紙に合わせて調整する機能を装備することで52g/平米から360g/平米までの多種多様な用紙に前処理なしで印刷できる。電子写真方式の場合、とくに厚紙は「印刷速度を落とさないと定着しない」「凹凸のある用紙では、凹みの部分にトナーがのりにくい」という問題があるが、「TASKalfa Pro」では、360g/平米の厚紙や凹凸のある用紙でも速度を落とすことなく綺麗な細線が再現できる。

 このように、インクジェット技術の優位性を活かした「TASKalfa Pro」は、機械本体スペックとしての印刷速度に加え、連続運転や用紙対応力によって高い生産性を誇る。

 「多彩な当社の技術を組み込むことで、高い生産性を実現した同機だが、フルオプションのノンストップモデルの価格は3,120万円程度を想定している。イニシャルコストを抑えたコンセプトも大きな特徴で、おもしろいものができたと自負している」(谷口氏)

 一方、複写機の設計思想から受け継がれるユーザーメンテナンス性も高生産性に寄与している。「TASKalfa Pro」は、本体やオプション機器の内部に正面からアクセスできる「フルフロントアクセス」を採用。メンテナンス性を高めることでダウンタイムを最小限に抑える工夫が施されている。

 さらに、紙詰まり発生時にもひとつの工夫がある。高速機であるため、紙詰まり発生時には胴内に20〜30枚程度の用紙が残る。そこでまず詰まっていない紙は、乾燥・デカーラー部の下に自動排出。フロントを開くと、詰まっている箇所(自動復帰できない部分)をLEDランプで知らせるとともに、点滅によって復帰作業の順番をナビゲートしてくれる。「シンプルな構造ゆえに、もともとメンテ箇所は少ないが、このような機能を搭載することで、プロダクション分野に向けたダウンタイムの抑制を高い次元で実現している」(谷口氏)

狙う印刷ボリュームレンジは30〜100万枚/月

 「TASKalfa Pro」の開発に着手したのはおよそ4年前。昨年4月から米国、欧州を中心としたテストユーザーからのフェードバックによってブラッシュアップを実施し、すでにこれら地域では昨年12月から販売を開始している。そのテストユーザーの1社(米国)では、同機を7台導入。トランザクション分野で活用されているという。

 同機がターゲットとする印刷ボリュームレンジは30〜100万枚/月。バリアブル印刷を前提としたトランザクションやパーソナライズDMの分野で多くの期待が寄せられている同機だが、谷口氏は「電子写真だと文字が光ってテカリが生じるが、インクの場合はその問題もなく、『目に優しい印刷物』ができる」とし、そのテキスト品質の高さも強調している。

 また、窓付き封筒の印刷でも電子写真方式のように熱がかからないため、耐熱フィルム仕様の封筒を使う必要がなく、コストを抑えることができる。

 一方、ある印刷会社からは、「高速連帳インクジェット機のサブ機として活用できるのでは」という声もあったという。「トナー機をサブ機にすると色味があまりにも違うので使いづらい。その意味で興味をもっていただいている」(谷口氏)

 今回、同機には新たに独自開発した水性顔料インク(4色)が採用されている。これは、三重県の玉城工場で開発・製造されているもので、耐光性や耐水性に加え、色域や両面印刷適性、印字品質、発色性に優れている。

 また、多彩なインラインオプションも用意。後加工については、ドキュメントフィーダーで100枚のステープルができるほか、パンチや2つ折り、3つ折りの中折りユニットなどのオプションも用意。A4で80頁の折ブックレットも加工できる。「必要最低限の機能は持っているが、同機のパフォーマンスを考慮し、現在はオフラインでの後加工機との連携を想定している。将来的にはインライン化も視野に入れている」(谷口氏)

 フロント側は、標準搭載のコントローラかオプションのFiery印刷サーバーを選択でき、ワークフローとの連携に関しては、すでにSCREEN「EQUIOS」とアグフア「アポジー」との連携が確認済みである。

メディア対応力の拡充や微細化進める

 同社は今年2月の「page2020」にも出展し、京セラの商業印刷市場参入は、業界の明るい話題として大きな注目を集めた。「1時間毎にデモを実施したが、用意していた資料が足らなくなるくらい多くの方が見学に来られ、印刷商社からもオファーをいただいた。概ね品質にポジティブな評価をいただき、手応えを感じている」(谷口氏)

 現在、実機は東京本社と大阪本社のショールームにそれぞれ1台ずつ設置されており、随時、印刷テストにも応じている。

 今後の開発の方向性について谷口氏は、「この事業は我々にとっても『未踏の領域』。今後もマーケティングを進めながらニーズを拾っていきたい」としながらも、メディア対応力の拡充や微細化、コート紙への対応を進めているという。とくに解像度については、「現在は600dpiだが、京セラは1,200dpiのインクジェットプリントヘッドを持っており、微細化させる。ひとつの事業として成長させていく中で、さらに領域を広げることも考え、ラインアップを拡充していきたい」(谷口氏)

 また、検査機能とインクの大容量化にも要望が寄せられており、検査機能はインラインでの検討を進めていく方針で、インクの大容量化はオプション設定として準備を進めているという。

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