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大阪印刷、swissQprint UV IJプリンタ「Oryx4」「Impala4」導入

アクリル出力を「Impala4」に集約〜複数台分を1台で処理

2023年12月27日ケーススタディ

 同人誌印刷やアクリル商品で急成長する大阪印刷(株)(大阪市西淀川区御幣島5-5-23、根田貴裕社長)。コロナ禍の2021年売上は5億2,000万円ほどであったが、2023年は18億円になる見通しだ。同社は今後のさらなる受注増に対応する在庫スペースを確保するため、今年10月に旧社屋の3倍の延床面積のある現在地に移転した。共同経営者で製造部門を統括する緒方人志氏は「人手が足りず、現在も受注をストップしている状況」。そんな同社は2022年5月にswissQprintのフラットベッドUVインクジェットプリンタ「Oryx4」を導入。2023年3月には2台目となる「Impala4」を導入し、アクリル商品の出力専用機として活用している。

Impala4(手前)とOryx4の2台を活用

 同社は2012年、同人誌専門の「マンガ喫茶」というユニークな事業形態で創業。2014年には、そこに派生する同人誌印刷ビジネスに参入し、印刷業へと一気に業態変革を図った。当初は店舗型のサービスであったが、2017年に印刷通販サイト「OTACLUB」(https://otaclub.jp)を立ち上げ、ネット受注型のビジネスモデルへと経営の舵を切ることで大きく売上を伸ばした。

 創業から10年弱、大阪市浪速区日本橋の地で事業を展開していたが、コロナ禍で周りは40%〜60%も売上が落ちている中、同社は15%程度の落ち込みであった。緒方氏は「アフターコロナを見据えたとき、売上は倍増するかもしれないと考え此花区に社屋を移転したが、そこも在庫のスペースが少なくなり、商品を欠品しやすくなったことからわずか2年で現在地に移転した」と経緯について説明する。同社の従業員は8割が女性で、此花区では商品を高い棚に積み上げることで在庫スペースを辛うじて確保していたが、今回の移転を契機に女性でも脚立などを使わずとも手が届くように背の低いラックに取り替えた。このため、新社屋は従来の3倍となる1,200坪の延床面積があるものの、すでに面積の8〜9割は埋まっているようだ。緒方氏は「すでにフル稼働の図面は見えている。おそらく10年もこの場所にはいられないのではないか」とさらなる業務拡張を予測している。

 通販市場は大きな可能性を秘めているが、そのすべてが成功するという訳ではない。そのような中、同社が急成長を続けている理由として緒方氏は、「複合的な要因があると思うが、担当の社員が仕入れ先と交渉し、原材料費をできる限り落とせるように努力している。これにより、競合サイトと比較して低価格で商品を提供できていることが要因の1つとなっている。また、当社では2台のswissQprint製品のほか、デジタル印刷機『Indigo7000シリーズ』を6台、オンデマンド印刷機が8台、その他、レーザー加工機ほか多様な後加工機を保有しているため、多品種小ロットのニーズに柔軟に対応できていることが差別化になっていると考えている」と分析する。

他社メーカーを凌ぐ生産性と画質を評価。インクコストは5分の2に

 同社では、2022年5月に「Oryx4」を導入するまで、国産メーカーのUVインクジェットプリンタを十数台保有し、キーホルダーなどのアクリル商品の出力に活用していた。ただ、同一メーカーの製品を複数台保有することは、リスクヘッジにはなるが、保守代が高くつくことが気になっていたという。緒方氏は「例えば1台の保守代が年間30万円としても、十数台だと保守代だけで年間300万円〜600万円もかかることになる。ある時、これはもったいないなと思いswissQprintに話を聞くと、ヘッド代は実費がかかるものの、保守代は200万円程度とのことだった。それなら1台に集約するのも方法の1つではないかと検討を始めた」と振り返る。

 そして、swissQprintのUVインクジェットプリンタを検証する中、緒方氏が確信したことは「画質がずば抜けてきれい」であるということだ。「それまで使用してきた国産メーカーのプリンタと比較しても、圧倒的な差があった。これを導入することにより、品質でさらなる差別化が図れると考えた」(緒方氏)。そこで同社は幅2.5m×奥行2mという省スペースを実現しながらも、品質と生産性を両立した「Oryx4」を選択。それまでアクリル商品を出力していた国産メーカーのプリンタを減らし、「Oryx4」での出力を開始。その生産性について緒方氏は「実感でいうと、従来機の12台分の速度はある」。

 そして、緒方氏が導入してから気づいたメリットとして評価していることは、インクコストが従来の5分の2に削減できたということだ。緒方氏は「無駄なクリーニングがないので、その差が出ているのではないかという印象である。これまで1ヵ月に50万円から100万円かかっていたインクコストが30万円〜50万円以内に収まっている」と説明する。

 プリンタの価格は従来機とは比較にならないが、これらを総合して判断しても「コスト的にはトントンというイメージ」(緒方氏)。さらに十数台を保有していた従来は3人のオペレーターが必要であったが、「Oryx4は1人のオペレーターで対応できるため、人件費としても効果を発揮している」(緒方氏)。

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Impala4(手前)とOryx4の2台を活用

 同社は2012年、同人誌専門の「マンガ喫茶」というユニークな事業形態で創業。2014年には、そこに派生する同人誌印刷ビジネスに参入し、印刷業へと一気に業態変革を図った。当初は店舗型のサービスであったが、2017年に印刷通販サイト「OTACLUB」(https://otaclub.jp)を立ち上げ、ネット受注型のビジネスモデルへと経営の舵を切ることで大きく売上を伸ばした。

 創業から10年弱、大阪市浪速区日本橋の地で事業を展開していたが、コロナ禍で周りは40%〜60%も売上が落ちている中、同社は15%程度の落ち込みであった。緒方氏は「アフターコロナを見据えたとき、売上は倍増するかもしれないと考え此花区に社屋を移転したが、そこも在庫のスペースが少なくなり、商品を欠品しやすくなったことからわずか2年で現在地に移転した」と経緯について説明する。同社の従業員は8割が女性で、此花区では商品を高い棚に積み上げることで在庫スペースを辛うじて確保していたが、今回の移転を契機に女性でも脚立などを使わずとも手が届くように背の低いラックに取り替えた。このため、新社屋は従来の3倍となる1,200坪の延床面積があるものの、すでに面積の8〜9割は埋まっているようだ。緒方氏は「すでにフル稼働の図面は見えている。おそらく10年もこの場所にはいられないのではないか」とさらなる業務拡張を予測している。

 通販市場は大きな可能性を秘めているが、そのすべてが成功するという訳ではない。そのような中、同社が急成長を続けている理由として緒方氏は、「複合的な要因があると思うが、担当の社員が仕入れ先と交渉し、原材料費をできる限り落とせるように努力している。これにより、競合サイトと比較して低価格で商品を提供できていることが要因の1つとなっている。また、当社では2台のswissQprint製品のほか、デジタル印刷機『Indigo7000シリーズ』を6台、オンデマンド印刷機が8台、その他、レーザー加工機ほか多様な後加工機を保有しているため、多品種小ロットのニーズに柔軟に対応できていることが差別化になっていると考えている」と分析する。

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 そして、swissQprintのUVインクジェットプリンタを検証する中、緒方氏が確信したことは「画質がずば抜けてきれい」であるということだ。「それまで使用してきた国産メーカーのプリンタと比較しても、圧倒的な差があった。これを導入することにより、品質でさらなる差別化が図れると考えた」(緒方氏)。そこで同社は幅2.5m×奥行2mという省スペースを実現しながらも、品質と生産性を両立した「Oryx4」を選択。それまでアクリル商品を出力していた国産メーカーのプリンタを減らし、「Oryx4」での出力を開始。その生産性について緒方氏は「実感でいうと、従来機の12台分の速度はある」。

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