富士フイルム(株)(後藤禎一社長・CEO)は今年3月に国内正式リリースを発表した「Jet Press FP790」をドイツ・デュッセルドルフで開催された国際印刷・メディア産業展「drupa2024」で初公開し、世界の軟包装印刷市場に向けて「水性インク」によるインクジェット印刷の訴求に名乗りを上げた。
食品や日用品などの軟包装印刷市場ではグラビア印刷が一般的で、多品種・小ロット化が進む業界において効率やコスト面がひとつの課題となっている。
また、使用されるインキには多くの溶剤が含まれており、VOCの排出が環境負荷として課題となる一方、臭気などの作業環境やシリンダー交換の作業負荷が人材確保の足枷となり、慢性化しつつある人手不足に拍車を掛けているという。
このような背景のもと富士フイルムでは、インクジェットデジタルプレス「Jet Press」で培った、商業印刷市場におけるインクジェットの知見や機器販売ノウハウなどを生かし、2017年に軟包装印刷向けUVインクジェットデジタルプレス「Jet Press 540WV」を市場導入している。FFGS技術二部の黒川慶彦担当課長は、「UVインクジェットによる軟包装印刷で一定のニーズに応えてきたが、食品パッケージがメインとなる軟包装印刷の市場では、法規制をクリアしているものの、臭気をはじめとしたUVのイメージが先行し、やはり『水性化』へのニーズは高かった」と振り返る。そこで今回、水性インクの課題であったフィルム基材に対する「滲み」や「密着性」を改良したインクを採用し、新たに軟包装印刷向け水性インクジェットデジタルプレス「Jet Press FP790」を市場導入した。
1,200dpiで毎分50m
「Jet Press FP790」は、1,200dpi×1,200dpiのプリントヘッドで最大790ミリ幅、12〜40μm厚までのフィルム基材に対して毎分50mでの高速印刷が可能。また、CMYK各色のプリントヘッドに加え、2組の白色プリントヘッドを搭載することで白の高隠蔽性を実現するとともに、顔料濃度や速乾性を高めたインクの採用で、色鮮やかな印刷を実現している。
さらに、印刷前の基材に処理液を塗布するプライマーの機構を搭載。撥水性のあるフィルム基材に対しても高いインク密着性を付与できるのが大きな特徴だ。
他社の類似機種との差別化について黒川課長は、「1,200dpiによる微細文字の再現やプライマーによる滲みのない画質や発色、さらにラミネートや製袋などの加工適性をグラビア印刷同等まで引き上げた」と説明する。
機械構成は、巻出からプライマー→インクジェットユニット→巻取となっており、KCMY→WWの順で印刷する裏刷りでの利用がメインとなっている。
ターゲットとなるユーザー層は、食品包装をメインに手掛けるグラビアコンバーターで、ロットのスイートスポットは4,000m以下。この小ロットの仕事をデジタル印刷機に振り向けることで、グラビア印刷機の稼働率向上に繋がるだけでなく、極小ロットやバージョニングといった潜在需要を喚起し、新事業に繋げることができる。
「データフローをはじめ、色管理、基材適性、加工適性など、FFGSはデジタル印刷機を本格稼働させるための様々な運用課題をサポートできる」と語る黒川課長。国内のテストユーザーでは、すでに商業ベースで稼働しており、現在イギリスのテストユーザーでも稼働中。drupa2024でもさらに海外で5社7台の受注を発表している。
環境対応の訴求と今後の改良も視野に
社会的に「脱プラ」への関心が高まる中、包装分野でも代替素材として「リサイクル樹脂を使用したフィルム」「植物由来のバイオマスフィルム」「紙化」などへの移行が求められており、黒川課長は「『水性』であることに加え、これら環境対応包材への適性もあるインクジェット印刷によって、グラビアコンバーターのお客様は環境対応やサステナビリティをアピールすることができる」と説明する。
今後の展開について黒川課長は「もちろん開発項目はまだまだ残されている。現在は一般的な軽包装用途だが、ボイルやレトルト包装といった熱処理への対応や、様々な種類の基材対応のニーズも高い。また、生産性向上の要望もあり、今後、将来的に対応していきたい」と語る。
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今後の展開について黒川課長は「もちろん開発項目はまだまだ残されている。現在は一般的な軽包装用途だが、ボイルやレトルト包装といった熱処理への対応や、様々な種類の基材対応のニーズも高い。また、生産性向上の要望もあり、今後、将来的に対応していきたい」と語る。
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