樋口印刷所(大阪)、下請け100%のJet Pressビジネスとは
[Jet Press導入事例]「短時間で稼げるマシン」〜品質重視の「推し活系」が8割
2025年10月8日ケーススタディ
口コミで広がるJet Pressの魅力
Jet Pressは、プリントヘッドにシングルパス方式の「SAMBA」、インクに広色域の水性顔料インク「VIVIDIA」を使用し、用紙上での打滴のにじみを抑える「RAPIC(ラピック)技術」により、多種の用紙にシャープで階調豊かな画像を形成するB2サイズ枚葉型インクジェットデジタル印刷機。同社の導入は2021年12月だが、その約4年弱でJet Pressの顧客は120社に及んでいる。樋口社長は、「当初はYouTubeやSNSを活用してアピールしていたが、現在はとくに営業活動は行っていない。現在の顧客はほとんどが口コミによるものだ」と説明する。
ここで特筆すべきポイントは、このJet Pressビジネスも下請け100%だということ。「下請け専業でJetPressを回す」。このユニークな立ち位置が良好な循環を生んでいる。
「当社はあくまで刷り屋であり、商品開発や販売促進は、正直苦手としている。ならばJet Pressの機能や技術を明確に提示することで、お客様に需要創出のアイデアを考えてもらう。そして、そのアイデアを具現化するための受け皿となる刷りの技術、製造に専念する。このようなパートナー関係で、ともにビジネスを成長させていきたい」(樋口社長)
取材時には、1%刻みで正確に色を再現できるJetPressの特性を活かしたカレンダーのサンプルを見せてくれた。これは、週毎に1日だけ色を数%変えたユニークなもので、「違う色の日を当てる」というゲーム性のある仕様になっている。同社のバーベキュー大会では、4色の内の1色の網を5%変えたカードを当てるというゲームを考案し、好評だったという。
「JetPressなら、なんとかなる」
樋口社長は、Jet Pressを「短時間で稼げるマシン」と表現する。
「オフセット印刷の場合、ひとつの仕事に対して段取り、紙積み、色替え、色合わせで、早くても20分程度はかかる。それがJet Pressなら5分だ。この優位性は10〜20枚程度の小ロットで大きく活きてくる」(樋口社長)
さらに、オフセット印刷に対するロットベースの分岐点は、以前は500枚程度だったが、相次ぐ印刷用紙の値上げを受けて、損紙を大幅に削減できるJetPressの守備範囲が計算上700枚程度にまで広がっている。さらに「安定した品質」「シビアな色再現」を求める顧客は、3,000枚くらいまでJetPressを指定してくるケースも増えている。これにより「1枚いくら」の世界であるデジタル印刷ビジネスの売上は右肩上がりだ。
また、JetPressがこなした最高ロットは1万5,000枚通し。これはいま流行の推し活系の缶バッチの仕事で、元となる絵柄を数十点面付けした印刷物である。樋口社長は、「推し活ブームで、消費者はひとつのキャラクター商品を複数点買うケースも多い。そこで色が違うとクレームになる」と説明。ここでJetPressの一貫した色の安定性が活きてくる。
また、この仕事は従来オフセットで印刷されていたが、ムラ、紙粉、誇り、ピンホール、汚れを検品する作業で相当なコストと手間がかかっていた。「色の安定」に加え、リアルタイム検査機能も搭載するJetPressなら、このコストを吸収し、かつ高品質な製品として提供できるというわけだ。
オフセット印刷の仕事は、特色が8割を占める。納期の関係からこの仕事をJetPressに振ることもあるようだが、基本的にはJetPressの稼働率が高まっているため、オフセットから仕事を引っ張ることはあまりない。実際、JetPressが稼ぎ出す売上は全体の1/3程度まで成長しており、仕事が溢れる状況も増えていることから、増設も視野に入れている。
「タイミングやスペースの問題もあるが、それだけ明らかな需要を見越している。印刷機もそうだが、生産機は1台では利益は出ない。2台で1台分を償却していくサイクルを回すことで、はじめて利益が生まれ、常に計画的な最新設備への更新が可能になる」(樋口社長)
また、樋口社長は「JetPressへの投資は、目の前に仕事があったからではない。ある意味、先行投資であり、自らを追い込むための投資でもあった」と振り返る。「人は追い込まれないと物事を必死に考えない。ただ、『JetPressなら、なんとかなる』という自信はあった。オフセットならこんな無謀な賭けはしない」とも...。
耐候性でポスターの需要も
JetPressの仕事の8割が、缶バッチの事例でもあった「推し活系」だ。やはり、シビアな品質を求める顧客が口コミによって駆け込んでくる。
一方、JetPressのインク自体にオフセット印刷の耐候インキ同等の耐候性があることから、ポスターの仕事も増えている。
「導入前からこのインク特性は聞いていたが、ユポなどが刷れなかったため、あまり宣伝はしなかった。ただ、コート紙でも窓際に貼る印刷物などに効果があるということで、『ポスターをJetPressで』というリクエストも増えている。菊半裁機しかなかった当社が小ロットのB2ポスターを取り込み、利益を取れる仕事になっている」(樋口社長)
「下請け×JetPress」という立ち位置が好循環を生んでいる同社。樋口社長は「中堅クラスの印刷会社がもっとJetPressをはじめとしたデジタル印刷機を導入すれば、もっと仕事が創出され、そこから溢れた仕事がさらに下請けの当社に回ってくると思う」とした上で、「ただ、今はまだそこまでいっておらず、当社のJetPressビジネスの成長も序盤に過ぎないと考える。市場で溢れた仕事の受け皿になるのが我々下請けの役目。『小ロットをこの品質、この価格でできる』ということを中堅クラス以上が積極的に訴求してくれることに期待している」と話す。
刷り一筋で利益を追求
「当社は今後も『刷り屋』として印刷に専念し、刷り一筋で利益を追求したい」と話す樋口社長。「オフセット印刷の当社がJetPressを導入したことで、『オフセットでまったく同じ色を正確に再現できるわけがない』ということをお客様に正々堂々と話せるようになった。そこから話をはじめることで、また新たな選択肢やアイデア、発想が生まれる。そのためにも、とにかく来社いただき、JetPressの実力を体感してほしい」(樋口社長)
印刷物にこれまでなかった技術や機能、品質を提示することで、発注者側の悩みを解決、あるいは発想意欲を掻き立てる。そこに下請けを専門とする印刷会社でも「交渉力」が生まれる。Jet Pressは、樋口印刷所の「印刷業としての確固たる自信」をさらに高めている。
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ここで特筆すべきポイントは、このJet Pressビジネスも下請け100%だということ。「下請け専業でJetPressを回す」。このユニークな立ち位置が良好な循環を生んでいる。
「当社はあくまで刷り屋であり、商品開発や販売促進は、正直苦手としている。ならばJet Pressの機能や技術を明確に提示することで、お客様に需要創出のアイデアを考えてもらう。そして、そのアイデアを具現化するための受け皿となる刷りの技術、製造に専念する。このようなパートナー関係で、ともにビジネスを成長させていきたい」(樋口社長)
取材時には、1%刻みで正確に色を再現できるJetPressの特性を活かしたカレンダーのサンプルを見せてくれた。これは、週毎に1日だけ色を数%変えたユニークなもので、「違う色の日を当てる」というゲーム性のある仕様になっている。同社のバーベキュー大会では、4色の内の1色の網を5%変えたカードを当てるというゲームを考案し、好評だったという。
「JetPressなら、なんとかなる」
樋口社長は、Jet Pressを「短時間で稼げるマシン」と表現する。
「オフセット印刷の場合、ひとつの仕事に対して段取り、紙積み、色替え、色合わせで、早くても20分程度はかかる。それがJet Pressなら5分だ。この優位性は10〜20枚程度の小ロットで大きく活きてくる」(樋口社長)
さらに、オフセット印刷に対するロットベースの分岐点は、以前は500枚程度だったが、相次ぐ印刷用紙の値上げを受けて、損紙を大幅に削減できるJetPressの守備範囲が計算上700枚程度にまで広がっている。さらに「安定した品質」「シビアな色再現」を求める顧客は、3,000枚くらいまでJetPressを指定してくるケースも増えている。これにより「1枚いくら」の世界であるデジタル印刷ビジネスの売上は右肩上がりだ。
また、JetPressがこなした最高ロットは1万5,000枚通し。これはいま流行の推し活系の缶バッチの仕事で、元となる絵柄を数十点面付けした印刷物である。樋口社長は、「推し活ブームで、消費者はひとつのキャラクター商品を複数点買うケースも多い。そこで色が違うとクレームになる」と説明。ここでJetPressの一貫した色の安定性が活きてくる。
また、この仕事は従来オフセットで印刷されていたが、ムラ、紙粉、誇り、ピンホール、汚れを検品する作業で相当なコストと手間がかかっていた。「色の安定」に加え、リアルタイム検査機能も搭載するJetPressなら、このコストを吸収し、かつ高品質な製品として提供できるというわけだ。
オフセット印刷の仕事は、特色が8割を占める。納期の関係からこの仕事をJetPressに振ることもあるようだが、基本的にはJetPressの稼働率が高まっているため、オフセットから仕事を引っ張ることはあまりない。実際、JetPressが稼ぎ出す売上は全体の1/3程度まで成長しており、仕事が溢れる状況も増えていることから、増設も視野に入れている。
「タイミングやスペースの問題もあるが、それだけ明らかな需要を見越している。印刷機もそうだが、生産機は1台では利益は出ない。2台で1台分を償却していくサイクルを回すことで、はじめて利益が生まれ、常に計画的な最新設備への更新が可能になる」(樋口社長)
また、樋口社長は「JetPressへの投資は、目の前に仕事があったからではない。ある意味、先行投資であり、自らを追い込むための投資でもあった」と振り返る。「人は追い込まれないと物事を必死に考えない。ただ、『JetPressなら、なんとかなる』という自信はあった。オフセットならこんな無謀な賭けはしない」とも...。
耐候性でポスターの需要も
JetPressの仕事の8割が、缶バッチの事例でもあった「推し活系」だ。やはり、シビアな品質を求める顧客が口コミによって駆け込んでくる。
一方、JetPressのインク自体にオフセット印刷の耐候インキ同等の耐候性があることから、ポスターの仕事も増えている。
「導入前からこのインク特性は聞いていたが、ユポなどが刷れなかったため、あまり宣伝はしなかった。ただ、コート紙でも窓際に貼る印刷物などに効果があるということで、『ポスターをJetPressで』というリクエストも増えている。菊半裁機しかなかった当社が小ロットのB2ポスターを取り込み、利益を取れる仕事になっている」(樋口社長)
「下請け×JetPress」という立ち位置が好循環を生んでいる同社。樋口社長は「中堅クラスの印刷会社がもっとJetPressをはじめとしたデジタル印刷機を導入すれば、もっと仕事が創出され、そこから溢れた仕事がさらに下請けの当社に回ってくると思う」とした上で、「ただ、今はまだそこまでいっておらず、当社のJetPressビジネスの成長も序盤に過ぎないと考える。市場で溢れた仕事の受け皿になるのが我々下請けの役目。『小ロットをこの品質、この価格でできる』ということを中堅クラス以上が積極的に訴求してくれることに期待している」と話す。
刷り一筋で利益を追求
「当社は今後も『刷り屋』として印刷に専念し、刷り一筋で利益を追求したい」と話す樋口社長。「オフセット印刷の当社がJetPressを導入したことで、『オフセットでまったく同じ色を正確に再現できるわけがない』ということをお客様に正々堂々と話せるようになった。そこから話をはじめることで、また新たな選択肢やアイデア、発想が生まれる。そのためにも、とにかく来社いただき、JetPressの実力を体感してほしい」(樋口社長)
印刷物にこれまでなかった技術や機能、品質を提示することで、発注者側の悩みを解決、あるいは発想意欲を掻き立てる。そこに下請けを専門とする印刷会社でも「交渉力」が生まれる。Jet Pressは、樋口印刷所の「印刷業としての確固たる自信」をさらに高めている。
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