遊文舎、TASKalfa Pro1号機導入で限界利益向上へ - オフの守備範囲カバー
デジタル印刷の損益分岐ロット上昇〜付加価値額、加工高向上に寄与
2020年11月18日ケーススタディ
-
文字物の小ロットに強みを持つ(株)遊文舎(本社/大阪市淀川区木川東4-17-31、木原庸裕社長)は今年10月、商業用高速インクジェット事業に本格参入した京セラドキュメントソリューションズ(株)(伊奈憲彦社長)のインクジェットプロダクションプリンタ「TASKalfa Pro 15000c」1号機を導入。デジタル印刷の損益分岐となるロットを引き上げることで、これまでオフセットで印刷していた300〜1,000部の仕事の付加価値額、加工高向上を目指した運用をスタートさせている。
印刷オペレータの確保は大きな経営リスク
同社の創業は1969年。その社歴は、創業者である先代・木原基彌氏が大学からの印刷受託事業を開始したことにはじまる。学生団体である大阪大学新聞会で新聞の編集に携わるほか、大学生協と提携し、学生が講義で使用する高額な教科書を複製するリプリント事業をきっかけに、大学の語学テキストや各種団体の広報誌や年誌の編集・印刷へと事業を拡大。「文字組版に注力する、大阪でも珍しい会社」、いわゆる「文字物」に強みを持つ印刷会社として学術関係や出版社などの得意先を多く抱え、現在でも売上の55%を書籍が占める。
また、6年前には東京支社を開設し、新たな商圏で売上の8倍成長も達成。遊文舎全体としても文字組版を含めた文字物での技術力が顧客から高く評価され、着実に業績を伸ばしている。
設備面では、菊全2色反転機や菊半4色機などのオフセット印刷機に加え、5台ものトナーPOD機を併設。その背景について木原社長は、「今後、熟練を要するオフセット印刷のオペレータを確保することが難しくなる。これは印刷会社にとって大きな経営リスクだ。そのリスクヘッジの意味でもここ数年、デジタル印刷機への投資を進めてきた」と説明する。現在、デジタル印刷機とオフセット印刷機の比率は、ジョブベースで7対3、売上ベースでは6対4程度になっている。
一方、小ロット多品種化が顕著な出版の世界で、同社の平均受注ロットも2,000部を切っている。「もともと1つのコンテンツを大量に安く製造するのは得意な会社ではないが、デジタル印刷機への投資・運用の結果として、クライアントからは『小ロットに強い印刷会社』と評価されているようだ」(木原社長)
地に足のついた投資対象となるデジタル印刷機
今回の設備投資の背景には、まずオフセット印刷機の老朽化がある。25〜30年選手のオフセット印刷機の更新を考えた時、今後10〜20年後の市場予測が立たず、前記のように印刷オペレータの確保もままならない。さらにスペース的にも投資対象が限られる。そこで木原社長はここ2年ほど、ロール機を含めたハイエンドのインクジェットデジタル印刷機を検討するも、イニシャルコストの高さに加え、それらを回すための仕事量の確保に懸念を抱き、自社のスケールに合わないと判断。もっと地に足のついた投資対象となるデジタル印刷機を探していた。そんな矢先に、page2020で発表されたのがインクジェットプロダクションプリンタ「TASKalfa Pro 15000c(以下、TASKalfa Pro)」だ。
TASKalfa Proは、京セラドキュメントソリューションズが今年1月、商業用高速インクジェット事業に本格参入すべく市場投入したインクジェットプロダクションプリンタ。京セラ製インクジェットヘッド(解像度600dpi×600dpi)を搭載したA4毎分150枚の枚葉機で、高速連帳インクジェット機と粉体トナー機の中間に位置する「未踏の領域」をカバーすることをコンセプトに開発されたものである。
プロダクションプリンタとしての「生産性」を追求する同機において、インクジェット技術の優位性を発揮するひとつの特徴が「連続印刷」だ。
電子写真方式の場合、連続運転時に一定のサイクルでキャリブレーションが入り、ダウンタイムが発生する。それに対し、TASKalfa Proは9,000枚/時のノンストップ連続印刷が可能である。
また、インクジェットヘッドと用紙の距離を用紙種に合わせて調整する機能も装備し、普通紙、厚紙、インクジェット適正紙、エンボス紙、封筒、長尺のバナー印刷など多種多様な用紙にアンカーコートなどの前処理を要することなく印刷することができる。
機械本体スペックとしての印刷速度に加え、これら連続印刷や用紙対応力などによって高い生産性を誇る。
新着トピックス
コダック、「ゲームチェンジャー」へ〜4つのコア技術を自社完結
2024年9月20日製品・テクノロジースペシャリスト
コダックは「drupa2024」において、ULTRASTREAMコンティニュアスインクジェットテクノロジーを搭載した「PROSPER ULTRA 520プレス」と、PROSPERイン...全文を読む
大阪印刷、同人誌印刷ビジネスで「圧倒的な画質」提供[AccurioJet KM-1e導入事例]
2024年9月20日ケーススタディ
同人誌印刷ビジネスで急成長を遂げる大阪印刷(株)(大阪市西淀川区御幣島5-5-23、根田貴裕社長)は今年4月、コニカミノルタの29インチ枚葉UVインクジェット印刷機「AccurioJ...全文を読む
最新ニュース
富士フイルム、TOKYO PACK 出展でパッケージの付加価値提案
2024年10月9日
富士フイルムグループは、「TOKYO PACK 2024(東京国際包装展)」に出展し、インクジェット方式やトナー方式など、富士フイルムが独自開発した幅広いラインアップのデジタルプリン...全文を読む
SCREEN GA、京都・久御山事業所に「インクジェットイノベーションセンター京都」開設
2024年10月7日
(株)SCREENグラフィックソリューションズ(京都府京都市、田中志佳社長、以下、SCREEN GA)は、2024年10月に印刷関連機器の開発・製造を担う京都・久御山事業所に「インク...全文を読む
SCREEN GA、「Horizon Smart Factory 2024」で無人化生産ラインを紹介
2024年9月24日
(株)SCREENグラフィックソリューションズ(SCREEN GA)は、10月9日から11日の3日間、ホリゾン本社びわこ工場内「Horizon Inovation Park」(滋賀県...全文を読む
遊文舎、TASKalfa Pro1号機導入で限界利益向上へ - オフの守備範囲カバー
デジタル印刷の損益分岐ロット上昇〜付加価値額、加工高向上に寄与
2020年11月18日ケーススタディ
文字物の小ロットに強みを持つ(株)遊文舎(本社/大阪市淀川区木川東4-17-31、木原庸裕社長)は今年10月、商業用高速インクジェット事業に本格参入した京セラドキュメントソリューションズ(株)(伊奈憲彦社長)のインクジェットプロダクションプリンタ「TASKalfa Pro 15000c」1号機を導入。デジタル印刷の損益分岐となるロットを引き上げることで、これまでオフセットで印刷していた300〜1,000部の仕事の付加価値額、加工高向上を目指した運用をスタートさせている。
印刷オペレータの確保は大きな経営リスク
同社の創業は1969年。その社歴は、創業者である先代・木原基彌氏が大学からの印刷受託事業を開始したことにはじまる。学生団体である大阪大学新聞会で新聞の編集に携わるほか、大学生協と提携し、学生が講義で使用する高額な教科書を複製するリプリント事業をきっかけに、大学の語学テキストや各種団体の広報誌や年誌の編集・印刷へと事業を拡大。「文字組版に注力する、大阪でも珍しい会社」、いわゆる「文字物」に強みを持つ印刷会社として学術関係や出版社などの得意先を多く抱え、現在でも売上の55%を書籍が占める。
また、6年前には東京支社を開設し、新たな商圏で売上の8倍成長も達成。遊文舎全体としても文字組版を含めた文字物での技術力が顧客から高く評価され、着実に業績を伸ばしている。
設備面では、菊全2色反転機や菊半4色機などのオフセット印刷機に加え、5台ものトナーPOD機を併設。その背景について木原社長は、「今後、熟練を要するオフセット印刷のオペレータを確保することが難しくなる。これは印刷会社にとって大きな経営リスクだ。そのリスクヘッジの意味でもここ数年、デジタル印刷機への投資を進めてきた」と説明する。現在、デジタル印刷機とオフセット印刷機の比率は、ジョブベースで7対3、売上ベースでは6対4程度になっている。
一方、小ロット多品種化が顕著な出版の世界で、同社の平均受注ロットも2,000部を切っている。「もともと1つのコンテンツを大量に安く製造するのは得意な会社ではないが、デジタル印刷機への投資・運用の結果として、クライアントからは『小ロットに強い印刷会社』と評価されているようだ」(木原社長)
地に足のついた投資対象となるデジタル印刷機
今回の設備投資の背景には、まずオフセット印刷機の老朽化がある。25〜30年選手のオフセット印刷機の更新を考えた時、今後10〜20年後の市場予測が立たず、前記のように印刷オペレータの確保もままならない。さらにスペース的にも投資対象が限られる。そこで木原社長はここ2年ほど、ロール機を含めたハイエンドのインクジェットデジタル印刷機を検討するも、イニシャルコストの高さに加え、それらを回すための仕事量の確保に懸念を抱き、自社のスケールに合わないと判断。もっと地に足のついた投資対象となるデジタル印刷機を探していた。そんな矢先に、page2020で発表されたのがインクジェットプロダクションプリンタ「TASKalfa Pro 15000c(以下、TASKalfa Pro)」だ。
TASKalfa Proは、京セラドキュメントソリューションズが今年1月、商業用高速インクジェット事業に本格参入すべく市場投入したインクジェットプロダクションプリンタ。京セラ製インクジェットヘッド(解像度600dpi×600dpi)を搭載したA4毎分150枚の枚葉機で、高速連帳インクジェット機と粉体トナー機の中間に位置する「未踏の領域」をカバーすることをコンセプトに開発されたものである。
プロダクションプリンタとしての「生産性」を追求する同機において、インクジェット技術の優位性を発揮するひとつの特徴が「連続印刷」だ。
電子写真方式の場合、連続運転時に一定のサイクルでキャリブレーションが入り、ダウンタイムが発生する。それに対し、TASKalfa Proは9,000枚/時のノンストップ連続印刷が可能である。
また、インクジェットヘッドと用紙の距離を用紙種に合わせて調整する機能も装備し、普通紙、厚紙、インクジェット適正紙、エンボス紙、封筒、長尺のバナー印刷など多種多様な用紙にアンカーコートなどの前処理を要することなく印刷することができる。
機械本体スペックとしての印刷速度に加え、これら連続印刷や用紙対応力などによって高い生産性を誇る。
新着トピックス
-
共同印刷工業(京都)、安定性の高さが決め手[Revoria Press PC1120導入事例]
2024年10月9日 ケーススタディ
-
ミマキ、捺染方式を刷新 - 簡便性と汎用性の「TRAPIS」
2024年9月28日 製品・テクノロジー
-
コダック、「ゲームチェンジャー」へ〜4つのコア技術を自社完結
2024年9月20日 製品・テクノロジースペシャリスト
-
大阪印刷、同人誌印刷ビジネスで「圧倒的な画質」提供[AccurioJet KM-1e導入事例]
2024年9月20日 ケーススタディ
-
富士フイルムBI、独自のインクジェット技術で新たなソリューション提供
2024年9月11日 製品・テクノロジー
新着ニュース
SNSランキング
- 84shares大阪印刷、同人誌印刷ビジネスで「圧倒的な画質」提供[AccurioJet KM-1e導入事例]
- 68sharesafter drupa 2024|富士フイルム、「Discover the difference」─過去最大規模で
- 59sharesエプソン、印刷プロセスのデジタル化をリードするFiery社を完全子会社化
- 39sharesミマキ、印刷脱色技術実用化でタペストリーのアップサイクル実現
- 38shares富士フイルムBI、モノクロ機に印刷物の検品工程を自動化する新機能搭載
- 30shares独SDVグループ、PROSPER ULTRA 520プレス欧州初採用
- 30sharesエコー(東京)、「オフセットと遜色のない品質」[Revoria Press PC1120導入事例]
- 29shares日本HP、「HP Indigo実機見学会〜都内60分でおさえるHPデジタル印刷オープンハウス」開催
- 28shares富士フイルムBI、ワークフローの新領域へ〜真の自動化によるDXを訴求
- 21sharesSCREEN、「デジタルで彩るラベルの未来」テーマにラベルフォーラムジャパン2024に出展