DXに関する疑問や不安を払拭
DXのネットワークには、規模に関係なく、様々な業態の印刷会社が参画し、それぞれの強みをシェアし合う場となる。また、1つのネットワークにすべての組合員が属するものではなく、全国各地域で様々な強みを持ったネットワークが構築されていくとイメージしてもらいたい。
例えば地域特性に特化したネットワークや単色印刷に特化したネットワークなど多種多様なネットワークを構成することができる。
これはDX視点では生産協調だが、参加企業視点ではBCP対策にもつながっていく。つまり我々は、仕事をシェアできる環境を整備・提供するだけで運用については、参加企業が最適な運用方法を協議して設定することができる。
また、DXの仕組みについて、いわゆる印刷通販と混同している方も多いが、まったく違うということを理解して欲しい。印刷通販は、低価格を全面に打ち出した印刷サービスである。DXは、価格競争を行うネットワークではなく、印刷会社同士が、発注する印刷仕様や印刷部数、印刷仕上がり品質など、あらゆる条件を考慮して、その時点で最適な発注先を選択するもの。ですから印刷通販と競合する仕組みではなく、あくまでも生産協調によるメリットを享受できる仕組みとして活用してもらいたい。
DXを運用することで生産協調を実現する仕組みを構築することはできる。しかし、一方で付加価値を生み出すには、どうすればいいのか、という組合員も多い。当然の疑問であるが、これについては、産業戦略デザイン室が、昨年1年間を通じて、DX導入後の印刷産業の新たな成長戦略について議論を重ね、そして今般新たに成長戦略提言書として発刊する「構造改革への道 INSATSU 未来トランスフォーメーション」を参考にして欲しい。
JDF連携が運用のポイント
全印工連が提供するDXのシステムとしては、付加価値創造のための組合員間受発注システム「JSP=Job Sharing Platform」、生産性向上のための生産管理システム「JWS=Job Workflow System」、経営の見える可のための業務基幹システム「MIS=Management Information System」がある。
「JSP」は、全印工連がオリジナルで開発したシステムで、参加する組合員間の円滑な受発注を実現するもの。
「JWS」については、富士フイルムビジネスイノベーションの「プロダクションコックピット」の使用許諾権を取得している。「プロダクションコックピット」は、ベンダー横断型のオープンプラットフォームであることが採用の背景にある。受発注データは、JDFに変換して流し込まれるので印刷から加工までの全工程を自動的に管理・最適化してくれる。
「MIS」については、自社の見える化ツールとして幅広く利用を促していきたい。この部分は、DXへの取り組みという観点とは別に、手書きなどのアナログ業務からデジタル化を推し進めていくことができればと考えている。
現時点では、推奨MISの1つとしてNECネクサソリューションの「SP-MULTI」の使用許諾権を取得している。MIS未導入の組合員企業に対しては、IT化の実装のファーストステップとして、ぜひ、数値管理による経営の見える化などに取り組んでもらいたい。
DXシステムの流れとしては、サービスプロバイダーは、発注と同時にグループ内のファクトリーから自動で見積を受け取ることができる。サービスプロバイダーは、各社の見積を確認した上で自社に最適なファクトリーを選択して発注を行う。また、ファクトリーには、繁忙期や閑散期など稼働状況に応じた価格設定ができるダイナミックプライシング機能も用意している。
受発注データはJDFに変換され、生産管理システムに移管される。これによりジョブの進捗状況や機械の稼働状況なども受発注側の双方で確認することができる。
海外では、JDFの運用によるスマートファクトリー化が進んでいるが、国内では、まだ少数に留まっていると思う。そのためDXでは、すべてのデバイスとのJDFによるインターフェースを目指していく。また、JDF連携については、多くのメーカーの協力のもと、様々な機器がつながるようになっているが、今後もメーカー各社の協力と理解を得た上で真のJDF連携によるスマートファクトリー化を目指していきたい。
今年度より運用トライアルを開始
今期の事業計画としては、これらシステムを組合員に提供していくこと。そのためには、改めて印刷DXへの理解を深めてもらうために、積極的に情報発信を行い、疑問や不安を払拭していきたい。
全国モデル地区でのトライアル参加企業の募集も6月中に行い、早ければ7月には、テスト運用を開始できればと考えている。
また、あくまでもモニターとして参加してもらうため、トライアルにおけるランニングコストは、全印工連側で負担していくが、イニシャルコストについては、参加企業各社での負担をお願いしている。今後は、経済産業省などと連携し、参加企業のコスト負担を軽減できるような仕組みを構築できればと考えている。
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DXに関する疑問や不安を払拭
DXのネットワークには、規模に関係なく、様々な業態の印刷会社が参画し、それぞれの強みをシェアし合う場となる。また、1つのネットワークにすべての組合員が属するものではなく、全国各地域で様々な強みを持ったネットワークが構築されていくとイメージしてもらいたい。
例えば地域特性に特化したネットワークや単色印刷に特化したネットワークなど多種多様なネットワークを構成することができる。
これはDX視点では生産協調だが、参加企業視点ではBCP対策にもつながっていく。つまり我々は、仕事をシェアできる環境を整備・提供するだけで運用については、参加企業が最適な運用方法を協議して設定することができる。
また、DXの仕組みについて、いわゆる印刷通販と混同している方も多いが、まったく違うということを理解して欲しい。印刷通販は、低価格を全面に打ち出した印刷サービスである。DXは、価格競争を行うネットワークではなく、印刷会社同士が、発注する印刷仕様や印刷部数、印刷仕上がり品質など、あらゆる条件を考慮して、その時点で最適な発注先を選択するもの。ですから印刷通販と競合する仕組みではなく、あくまでも生産協調によるメリットを享受できる仕組みとして活用してもらいたい。
DXを運用することで生産協調を実現する仕組みを構築することはできる。しかし、一方で付加価値を生み出すには、どうすればいいのか、という組合員も多い。当然の疑問であるが、これについては、産業戦略デザイン室が、昨年1年間を通じて、DX導入後の印刷産業の新たな成長戦略について議論を重ね、そして今般新たに成長戦略提言書として発刊する「構造改革への道 INSATSU 未来トランスフォーメーション」を参考にして欲しい。
JDF連携が運用のポイント
全印工連が提供するDXのシステムとしては、付加価値創造のための組合員間受発注システム「JSP=Job Sharing Platform」、生産性向上のための生産管理システム「JWS=Job Workflow System」、経営の見える可のための業務基幹システム「MIS=Management Information System」がある。
「JSP」は、全印工連がオリジナルで開発したシステムで、参加する組合員間の円滑な受発注を実現するもの。
「JWS」については、富士フイルムビジネスイノベーションの「プロダクションコックピット」の使用許諾権を取得している。「プロダクションコックピット」は、ベンダー横断型のオープンプラットフォームであることが採用の背景にある。受発注データは、JDFに変換して流し込まれるので印刷から加工までの全工程を自動的に管理・最適化してくれる。
「MIS」については、自社の見える化ツールとして幅広く利用を促していきたい。この部分は、DXへの取り組みという観点とは別に、手書きなどのアナログ業務からデジタル化を推し進めていくことができればと考えている。
現時点では、推奨MISの1つとしてNECネクサソリューションの「SP-MULTI」の使用許諾権を取得している。MIS未導入の組合員企業に対しては、IT化の実装のファーストステップとして、ぜひ、数値管理による経営の見える化などに取り組んでもらいたい。
DXシステムの流れとしては、サービスプロバイダーは、発注と同時にグループ内のファクトリーから自動で見積を受け取ることができる。サービスプロバイダーは、各社の見積を確認した上で自社に最適なファクトリーを選択して発注を行う。また、ファクトリーには、繁忙期や閑散期など稼働状況に応じた価格設定ができるダイナミックプライシング機能も用意している。
受発注データはJDFに変換され、生産管理システムに移管される。これによりジョブの進捗状況や機械の稼働状況なども受発注側の双方で確認することができる。
海外では、JDFの運用によるスマートファクトリー化が進んでいるが、国内では、まだ少数に留まっていると思う。そのためDXでは、すべてのデバイスとのJDFによるインターフェースを目指していく。また、JDF連携については、多くのメーカーの協力のもと、様々な機器がつながるようになっているが、今後もメーカー各社の協力と理解を得た上で真のJDF連携によるスマートファクトリー化を目指していきたい。
今年度より運用トライアルを開始
今期の事業計画としては、これらシステムを組合員に提供していくこと。そのためには、改めて印刷DXへの理解を深めてもらうために、積極的に情報発信を行い、疑問や不安を払拭していきたい。
全国モデル地区でのトライアル参加企業の募集も6月中に行い、早ければ7月には、テスト運用を開始できればと考えている。
また、あくまでもモニターとして参加してもらうため、トライアルにおけるランニングコストは、全印工連側で負担していくが、イニシャルコストについては、参加企業各社での負担をお願いしている。今後は、経済産業省などと連携し、参加企業のコスト負担を軽減できるような仕組みを構築できればと考えている。
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