FFGS、持続可能な印刷産業を目指すために - 最優先課題は「人材育成」
デジタル技術活用による「紙の価値創造」
営業本部マーケティング担当部長 前田正樹氏に聞く
2022年8月9日企業・経営
業界が抱える3つの問題点
FFGSでは、「印刷業界の今後を考える〜Sustainable Printing」をテーマに、約60社の印刷会社にヒヤリングを行っており、その結果を、SDGs支援を含む同社の今後のソリューションに反映させるべく準備を進めている。
その結果から、印刷業界が抱える問題点として、大きく3つの視点が浮き彫りになった。
まずひとつ目は、「印刷物価値低下」である。これは印刷物の価値が低下しているのではなく(価値は変わっていない)、「紙の良さやポテンシャルを上手く伝えられていない」と考える。まず、紙の価値を再認識し、デジタルとの融合を考えることが必要である。
印刷技術を活用した紙の価値創造において、最近ではとくに「DM」に注目。当社が運営している情報コミュニケーションプラットフォーム「FGPlatz」において現在、BMWを20年間売り続けた伝説のコピーライター・中村ブラウン氏(マーケティングコンサルタント)による「DMは最強のマーケティングツール」と題した連載を掲載している。ぜひご一読願いたい。
2つ目の課題が、「財務体質の強化」である。現在の印刷会社の多くは、細かいセグメント毎の損益が見えない状態(JOB単位、顧客単位、工程単位など)にあり、MISおよびジョブ実績による分析と対策が必要である。しっかり対策を打って利益を出し、デジタル化や自動化、ロボット、RPA、クラウドなどに投資し、さらに生産効果を高めて企業として儲かる仕組みを作っていくことが理想的である。しかし、これらを設計するにも結局「人」が必要である。この部分を経営者1人ひとりが認識することで企業、あるいは業界の存続に期待が持てるのではないか。
3つめの課題がこの「人材育成・採用」である。
印刷業界が持続可能な産業であるためには、何より先に、まずは「人材育成」が重要である。いま必要なのは「マーケティングやITに強い人材」「紙媒体の価値向上を提案できる人材」ではないだろうか。また、営業の意識改革も必要だろう。自社設備のスペックを100%理解していれば、付加価値の提案やコストダウンの提案も可能になり、利益率も変わってくるはずだ。
もちろん、特殊印刷や美術印刷など、紙の価値を創造する印刷技術の向上はベースとして欠かせない。その上で、その紙の価値を訴求できる人材、ITに精通した人材が必要というわけだ。
これら課題を解決し、魅力的な産業として認められれば、人材も集まり、持続可能な産業を目指すことができる。
印刷会社のチェンジマネジメント
一方で、現状の利益バランスを見てみると、事業継続のためにデジタル商材やPODの増強は必要だが、それぞれ単独では利益額が少なく固定費を賄うまではいかないというのが実状かもしれない。印刷会社の固定費の大部分を賄っているのはオフセット印刷による利益だが、このオフセット印刷の量(利益額)が減少傾向にある。
オフセット印刷の工程を効率化して収益性を改善し、一方でOne to One DM、バリアブル、コンテンツ制作でマーケティングを強化することでPODの仕事を増やす。かつ自動化技術で収益性を高めることが理想的ではないだろうか。この分野のソリューション提供については、DTP技術を持つ印刷業界は他業界に比べてデジタル商材分野に着手しやすいはずである。
また、印刷会社の変革(チェンジマネジメント)の考え方も整理しておくべきだ。印刷会社は、これまで設備投資をすれば仕事はこなせた(仕事があった)わけだが、逆に言えば、人に投資をしてこなかった(人材育成、教育)のではないだろうか。印刷物の需要減少に対して生産設備の高性能化(生産性UP)、デジタル化による品質の標準化による低スイッチングコスト(業者変更コスト)という時代の変化に加え、ネット印刷通販の台頭による価格競争。この状況を考えると、アフターコロナ時代のチェンジマネジメントは、主軸業務を見直し、自社の強みを活かした価値提供企業へと変わる必要がある。そこでやはり重要になるのが「人財育成」である。
◇ ◇
FFGSでは、定期的に印刷業界のヒントとなる情報をメールマガジン「FGひろば電子版」で配信しており、登録を広く呼びかけている。メールマガジンで紹介したコンテンツは「FGPlatz」に掲載されている。
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業界が抱える3つの問題点
FFGSでは、「印刷業界の今後を考える〜Sustainable Printing」をテーマに、約60社の印刷会社にヒヤリングを行っており、その結果を、SDGs支援を含む同社の今後のソリューションに反映させるべく準備を進めている。
その結果から、印刷業界が抱える問題点として、大きく3つの視点が浮き彫りになった。
まずひとつ目は、「印刷物価値低下」である。これは印刷物の価値が低下しているのではなく(価値は変わっていない)、「紙の良さやポテンシャルを上手く伝えられていない」と考える。まず、紙の価値を再認識し、デジタルとの融合を考えることが必要である。
印刷技術を活用した紙の価値創造において、最近ではとくに「DM」に注目。当社が運営している情報コミュニケーションプラットフォーム「FGPlatz」において現在、BMWを20年間売り続けた伝説のコピーライター・中村ブラウン氏(マーケティングコンサルタント)による「DMは最強のマーケティングツール」と題した連載を掲載している。ぜひご一読願いたい。
2つ目の課題が、「財務体質の強化」である。現在の印刷会社の多くは、細かいセグメント毎の損益が見えない状態(JOB単位、顧客単位、工程単位など)にあり、MISおよびジョブ実績による分析と対策が必要である。しっかり対策を打って利益を出し、デジタル化や自動化、ロボット、RPA、クラウドなどに投資し、さらに生産効果を高めて企業として儲かる仕組みを作っていくことが理想的である。しかし、これらを設計するにも結局「人」が必要である。この部分を経営者1人ひとりが認識することで企業、あるいは業界の存続に期待が持てるのではないか。
3つめの課題がこの「人材育成・採用」である。
印刷業界が持続可能な産業であるためには、何より先に、まずは「人材育成」が重要である。いま必要なのは「マーケティングやITに強い人材」「紙媒体の価値向上を提案できる人材」ではないだろうか。また、営業の意識改革も必要だろう。自社設備のスペックを100%理解していれば、付加価値の提案やコストダウンの提案も可能になり、利益率も変わってくるはずだ。
もちろん、特殊印刷や美術印刷など、紙の価値を創造する印刷技術の向上はベースとして欠かせない。その上で、その紙の価値を訴求できる人材、ITに精通した人材が必要というわけだ。
これら課題を解決し、魅力的な産業として認められれば、人材も集まり、持続可能な産業を目指すことができる。
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一方で、現状の利益バランスを見てみると、事業継続のためにデジタル商材やPODの増強は必要だが、それぞれ単独では利益額が少なく固定費を賄うまではいかないというのが実状かもしれない。印刷会社の固定費の大部分を賄っているのはオフセット印刷による利益だが、このオフセット印刷の量(利益額)が減少傾向にある。
オフセット印刷の工程を効率化して収益性を改善し、一方でOne to One DM、バリアブル、コンテンツ制作でマーケティングを強化することでPODの仕事を増やす。かつ自動化技術で収益性を高めることが理想的ではないだろうか。この分野のソリューション提供については、DTP技術を持つ印刷業界は他業界に比べてデジタル商材分野に着手しやすいはずである。
また、印刷会社の変革(チェンジマネジメント)の考え方も整理しておくべきだ。印刷会社は、これまで設備投資をすれば仕事はこなせた(仕事があった)わけだが、逆に言えば、人に投資をしてこなかった(人材育成、教育)のではないだろうか。印刷物の需要減少に対して生産設備の高性能化(生産性UP)、デジタル化による品質の標準化による低スイッチングコスト(業者変更コスト)という時代の変化に加え、ネット印刷通販の台頭による価格競争。この状況を考えると、アフターコロナ時代のチェンジマネジメントは、主軸業務を見直し、自社の強みを活かした価値提供企業へと変わる必要がある。そこでやはり重要になるのが「人財育成」である。
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