「アイデア什器」の(株)リンクス(本社/岐阜県関市倉知2639-1、吉田哲也社長)は昨年11月、富士フイルムの枚葉インクジェットデジタルプレス「JetPress750S」(厚紙仕様)を導入。オフセット印刷設備で懸念していたオペレータの高齢化問題を解消するとともに、ディスプレイの小ロット化、小型化といった環境変化に対応している。

簡単組み立て、コンパクトに
リンクスが本社を置く岐阜県関市は、日本三大刃物産地のひとつに数えられ、同社も1950年の創業当初は屋号「吉田印刷社」のもとで、包丁やハサミといった刃物製品のパッケージ印刷を手掛けていたという。
今年で75周年を迎える同社だが、その社歴の中で最大の転機となったのが、およそ40年前のディスプレイ分野への参入である。同社3代目で現在会長の吉田房生氏が、バブル景気で湧く首都圏の市場で新規開拓を開始したのを契機に、同社は主力事業をパッケージからディスプレイへと大きく舵を切った。当時、パッケージ8割、ディスプレイ2割だった売上比率は現在、完全に逆転している。
同社が得意とするのは、店頭販促の問題解決を促す「アイデア什器」。なかでもユニークなのが「1秒、3秒、5秒で組み立てられるディスプレイ」という設計コンセプトだ。吉田会長は、「ディスプレイは店頭スタッフによって組み立てられ、飾り付けされるものがほとんど。そこで組み立て作業が難解だと廃棄されてしまうことも多い。そのため『簡単に、素早く』組み立てられるディスプレイの構造設計が重要になる」と説明する。
また、岐阜という立地条件は、製造コスト抑制のメリットがある一方、その物理的な「距離」は物流コストに反映されてしまう。これについても得意の構造設計技術を活かし、折りたたむことでコンパクトな状態で納品。「簡単組み立て」とともに物流コスト削減にも挑戦している。
さらにディスプレイ分野においても「脱プラ」がトレンドになりつつあり、ここでも紙のディスプレイに耐久性を持たせる構造設計の技術が試される。「当社ではクライアントの要求に対して倍の加重を前提に設計を行い、徹底した検証も実施している」(吉田会長)

なお、同社では販促什器・店頭ディスプレイの専門サイト「リンクスル」でも「アイデア什器」を提供している。
オペレータの高齢化と小ロット化・小型化
同社は企画から設計、製作、アッセンブリ、配送までの社内一貫体制もひとつの「強み」としている。吉田会長は、「近隣に外注先がないため、やむを得ず内製化してきた結果」と話すが、とくにアッセンブリまでを含む一貫体制は、首都圏方面のクライアントから喜ばれている。また、映画関係の看板やディスプレイも手掛けていた同社では、早くからA倍判オフセット5色+コーター機を設備。貼り合わせなどの工数削減を謳ったこの戦略機は、当時は「めずらしい」ということもあって、これも首都圏方面で「ウケた」という。
しかし、このように脚光を浴びてきたA倍機もすでに20年選手となり、老朽化にともなう印刷トラブルが少しずつ出始めた。同社が手掛ける仕事は、化粧品や医薬品をはじめ、一般的にも「シビア」とされる品質要求のものが多い。この品質をどのような設備で、如何に担保するか。
「オフセット機の更新も考えたが、時代背景や市場トレンド、将来性を考慮した結果、デジタル印刷機の方が理に適っていると判断した」(吉田会長)

その決断のひとつのきっかけとなったのが、オペレータの高齢化問題である。「『仕事はあるが機械が回せない』という声をよく聞くようになった。オフセット印刷機のスキルレス化は進んでいるが、やはり機長となると知識と経験が必要になる。しかし、『その人材育成に費やす時間と余裕がない』、『そもそもオペレータとして若い人材を確保できない』といったジレンマを抱えている会社も多い。その分、デジタル印刷機ならスマホ世代の若者にとっても抵抗がなく、多能工化も容易になる。人手不足が慢性化する今、デジタル印刷機の選択は当然の結果だったと思う」(吉田会長)
一方、昨今では全国展開のディスプレイは減少傾向にあり、エリアマーケティングや試作といった規模の需要、いわゆる小ロット化が進んでいる。その形状もフロア型からカウンター型、吊り下げ型へと小型化のトレンドも顕著だ。
このような背景のもと、同社は昨年11月、省エネ補助金を活用して、0.6ミリまで通せる厚紙仕様の「JetPress750S」(以下「JetPress」)を導入。「オフセットを凌駕する品質」を担保した上で、市場性への対応や人手不足問題の解消を試みている。
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簡単組み立て、コンパクトに
リンクスが本社を置く岐阜県関市は、日本三大刃物産地のひとつに数えられ、同社も1950年の創業当初は屋号「吉田印刷社」のもとで、包丁やハサミといった刃物製品のパッケージ印刷を手掛けていたという。
今年で75周年を迎える同社だが、その社歴の中で最大の転機となったのが、およそ40年前のディスプレイ分野への参入である。同社3代目で現在会長の吉田房生氏が、バブル景気で湧く首都圏の市場で新規開拓を開始したのを契機に、同社は主力事業をパッケージからディスプレイへと大きく舵を切った。当時、パッケージ8割、ディスプレイ2割だった売上比率は現在、完全に逆転している。
同社が得意とするのは、店頭販促の問題解決を促す「アイデア什器」。なかでもユニークなのが「1秒、3秒、5秒で組み立てられるディスプレイ」という設計コンセプトだ。吉田会長は、「ディスプレイは店頭スタッフによって組み立てられ、飾り付けされるものがほとんど。そこで組み立て作業が難解だと廃棄されてしまうことも多い。そのため『簡単に、素早く』組み立てられるディスプレイの構造設計が重要になる」と説明する。
また、岐阜という立地条件は、製造コスト抑制のメリットがある一方、その物理的な「距離」は物流コストに反映されてしまう。これについても得意の構造設計技術を活かし、折りたたむことでコンパクトな状態で納品。「簡単組み立て」とともに物流コスト削減にも挑戦している。
さらにディスプレイ分野においても「脱プラ」がトレンドになりつつあり、ここでも紙のディスプレイに耐久性を持たせる構造設計の技術が試される。「当社ではクライアントの要求に対して倍の加重を前提に設計を行い、徹底した検証も実施している」(吉田会長)

なお、同社では販促什器・店頭ディスプレイの専門サイト「リンクスル」でも「アイデア什器」を提供している。
オペレータの高齢化と小ロット化・小型化
同社は企画から設計、製作、アッセンブリ、配送までの社内一貫体制もひとつの「強み」としている。吉田会長は、「近隣に外注先がないため、やむを得ず内製化してきた結果」と話すが、とくにアッセンブリまでを含む一貫体制は、首都圏方面のクライアントから喜ばれている。また、映画関係の看板やディスプレイも手掛けていた同社では、早くからA倍判オフセット5色+コーター機を設備。貼り合わせなどの工数削減を謳ったこの戦略機は、当時は「めずらしい」ということもあって、これも首都圏方面で「ウケた」という。
しかし、このように脚光を浴びてきたA倍機もすでに20年選手となり、老朽化にともなう印刷トラブルが少しずつ出始めた。同社が手掛ける仕事は、化粧品や医薬品をはじめ、一般的にも「シビア」とされる品質要求のものが多い。この品質をどのような設備で、如何に担保するか。
「オフセット機の更新も考えたが、時代背景や市場トレンド、将来性を考慮した結果、デジタル印刷機の方が理に適っていると判断した」(吉田会長)

その決断のひとつのきっかけとなったのが、オペレータの高齢化問題である。「『仕事はあるが機械が回せない』という声をよく聞くようになった。オフセット印刷機のスキルレス化は進んでいるが、やはり機長となると知識と経験が必要になる。しかし、『その人材育成に費やす時間と余裕がない』、『そもそもオペレータとして若い人材を確保できない』といったジレンマを抱えている会社も多い。その分、デジタル印刷機ならスマホ世代の若者にとっても抵抗がなく、多能工化も容易になる。人手不足が慢性化する今、デジタル印刷機の選択は当然の結果だったと思う」(吉田会長)
一方、昨今では全国展開のディスプレイは減少傾向にあり、エリアマーケティングや試作といった規模の需要、いわゆる小ロット化が進んでいる。その形状もフロア型からカウンター型、吊り下げ型へと小型化のトレンドも顕著だ。
このような背景のもと、同社は昨年11月、省エネ補助金を活用して、0.6ミリまで通せる厚紙仕様の「JetPress750S」(以下「JetPress」)を導入。「オフセットを凌駕する品質」を担保した上で、市場性への対応や人手不足問題の解消を試みている。
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