朝日印刷工業、新たな事業領域創造の戦略機 -「新しい概念を買う」
富士フイルムの枚葉インクジェットデジタル印刷機「Jet Press 720S」導入
2016年3月25日ケーススタディ
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「小さな仕事を数多く」--朝日印刷工業(株)(本社/群馬県前橋市元総社町67、石川靖社長)は2015年10月、印刷ショップの展開と口コミサイトの運営を通じたBtoCビジネスを新たなステージへと引き上げるための戦略機として、富士フイルムの枚葉インクジェットデジタル印刷機「Jet Press 720S」を導入。これまでの印刷とは違う「新しい概念」を引っ提げ、新たな事業領域の創造に乗り出している。
同社の創業は戦後間もない昭和24年。敗戦の余波も色濃く残っていた時代に「群馬情報社」として産声をあげた同社は、書籍を中心とした頁物印刷で事業を拡大し、地域とともにおよそ70年の歴史を刻んできた。先進的な生産設備とデジタルへの積極投資によって総合印刷会社へと成長を遂げた現在でも「捨てられない印刷物」「手にとって見てもらえる印刷物」へのこだわりを貫いている。
そんな同社の最大の強みは「小ロットに対する瞬発力」だ。このことについて石川社長は「大量消費の時代は疾うの昔に終焉を迎えている。現代の印刷会社には、椀子蕎麦のように、小さな仕事を数多くこなす能力が問われている」と話す。
金額別の売上構成で、20万円以下の仕事が7割を越えるという同社。一方で、年間のジョブ数はおよそ1万件におよぶという。それだけに企画や制作といったクリエイティブ部門に多くの経営資源が投下され、人員も社員約100名中60名がクリエイティブ関連に従事している。「物事を考えて創造する」という「朝日イズム」がここにある。
「もっと小さく」という経営戦略を明確に打ち出す同社では、当然のことながらオンデマンド印刷への着手も早かった。まだまだPOD黎明期だった2001年にオンデマンドプリントショップ「DiPS朝日」を開設。BtoCビジネスを目指して石川社長の「遊び心」から始まった印刷ショップ展開は、Color 1000 Pressの導入をきっかけに大幅リニューアルした2011年以降、およそ5年でジョブ数、売上ともに200%の伸びを示している。
一方、時を同じくして群馬初の口コミナビサイト「ぐんラボ!」を開設。現在では掲載店舗数も3,800店を超え、これも地域コミュニティとして大きく成長している。◇ ◇
そんな同社が富士フイルムの枚葉インクジェットデジタル印刷機「Jet Press 720S」を導入したのが2015年10月。その背景について、富沢充芳制作部長は「印刷ショップの展開と口コミサイトの運営を通じて、当社と消費者が直結するパイプのような繋がりを育んできた。この繋がりを活かすためにも『印刷』という部分で提案力を強化する必要を痛感していた」と当時を振り返る。
機種選択について石川社長は「現時点で最も理想的なマシンだと判断した」と説明する。「次世代型インクジェット印刷機の概念を社員にも早い段階で浸透させたかった。様子を見ていたら遅すぎる、間に合わない。我々は『新しい印刷機を買った』のではなく『新しい概念を買った』のである」(石川社長)
既設機だったColor 1000 Pressは、写真領域をターゲットにするため、設定値300ドット、実測値280線相当ですべて運用されている。「やはりトナー機だと、どうしてもザラつきや不自然感が残る。これをクリアする高品位なインクジェット印刷機となると、現時点では選択肢はひとつしかなかった」(富沢部長)◇ ◇
新たな事業領域創造の戦略機として導入されたJet Press 720S。その実力を富沢部長に聞いてみた。
「オフセット同等、いやそれ以上と評価している。20ミクロンの点が変動なく1部から出力できる。写真品質においても表面の滑らかさ、きめ細かさ、そして不自然さがない。加えて色域の広さは我々にとって大きな武器となる」
写真関連事業を新たな市場として取り込みたい同社。「Jet Press品質」がスタンダードになると確信し、群馬の地で先行者利益を狙う。
一方、同社ではオフセット印刷機として、8色機を含む菊全機4台を所有。オフセット印刷部門とJet Pressとの関係については、「戦略的にまったく関連するところはない」と石川社長。同社では数年前に菊半裁機などの小型機を廃棄し、その仕事をPODへシフトすることを試みたが、思うような結果が出なかった。石川社長は、Jet Pressはあくまで新市場開拓の戦略機であることを強調する。
営業部門もオフセット印刷営業とは別に、POD専門の営業部隊を組織している。「自動車の営業に自転車は売れない」というのが石川社長の理論だ。POD営業は売上ではなく、ジョブ数で評価しているという。◇ ◇
「私は現在56歳。父が亡くなった60歳までに100年企業への道筋をつけたいと考えている。それには小ロット・多品種対応しかない。これは自分、世間、業界に対する挑戦だと考えている。そこで重要な役割を担うツールとしてJet Press 720Sがある」(石川社長)
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同社の創業は戦後間もない昭和24年。敗戦の余波も色濃く残っていた時代に「群馬情報社」として産声をあげた同社は、書籍を中心とした頁物印刷で事業を拡大し、地域とともにおよそ70年の歴史を刻んできた。先進的な生産設備とデジタルへの積極投資によって総合印刷会社へと成長を遂げた現在でも「捨てられない印刷物」「手にとって見てもらえる印刷物」へのこだわりを貫いている。
そんな同社の最大の強みは「小ロットに対する瞬発力」だ。このことについて石川社長は「大量消費の時代は疾うの昔に終焉を迎えている。現代の印刷会社には、椀子蕎麦のように、小さな仕事を数多くこなす能力が問われている」と話す。
金額別の売上構成で、20万円以下の仕事が7割を越えるという同社。一方で、年間のジョブ数はおよそ1万件におよぶという。それだけに企画や制作といったクリエイティブ部門に多くの経営資源が投下され、人員も社員約100名中60名がクリエイティブ関連に従事している。「物事を考えて創造する」という「朝日イズム」がここにある。
「もっと小さく」という経営戦略を明確に打ち出す同社では、当然のことながらオンデマンド印刷への着手も早かった。まだまだPOD黎明期だった2001年にオンデマンドプリントショップ「DiPS朝日」を開設。BtoCビジネスを目指して石川社長の「遊び心」から始まった印刷ショップ展開は、Color 1000 Pressの導入をきっかけに大幅リニューアルした2011年以降、およそ5年でジョブ数、売上ともに200%の伸びを示している。
一方、時を同じくして群馬初の口コミナビサイト「ぐんラボ!」を開設。現在では掲載店舗数も3,800店を超え、これも地域コミュニティとして大きく成長している。
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そんな同社が富士フイルムの枚葉インクジェットデジタル印刷機「Jet Press 720S」を導入したのが2015年10月。その背景について、富沢充芳制作部長は「印刷ショップの展開と口コミサイトの運営を通じて、当社と消費者が直結するパイプのような繋がりを育んできた。この繋がりを活かすためにも『印刷』という部分で提案力を強化する必要を痛感していた」と当時を振り返る。
機種選択について石川社長は「現時点で最も理想的なマシンだと判断した」と説明する。「次世代型インクジェット印刷機の概念を社員にも早い段階で浸透させたかった。様子を見ていたら遅すぎる、間に合わない。我々は『新しい印刷機を買った』のではなく『新しい概念を買った』のである」(石川社長)
既設機だったColor 1000 Pressは、写真領域をターゲットにするため、設定値300ドット、実測値280線相当ですべて運用されている。「やはりトナー機だと、どうしてもザラつきや不自然感が残る。これをクリアする高品位なインクジェット印刷機となると、現時点では選択肢はひとつしかなかった」(富沢部長)
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新たな事業領域創造の戦略機として導入されたJet Press 720S。その実力を富沢部長に聞いてみた。
「オフセット同等、いやそれ以上と評価している。20ミクロンの点が変動なく1部から出力できる。写真品質においても表面の滑らかさ、きめ細かさ、そして不自然さがない。加えて色域の広さは我々にとって大きな武器となる」
写真関連事業を新たな市場として取り込みたい同社。「Jet Press品質」がスタンダードになると確信し、群馬の地で先行者利益を狙う。
一方、同社ではオフセット印刷機として、8色機を含む菊全機4台を所有。オフセット印刷部門とJet Pressとの関係については、「戦略的にまったく関連するところはない」と石川社長。同社では数年前に菊半裁機などの小型機を廃棄し、その仕事をPODへシフトすることを試みたが、思うような結果が出なかった。石川社長は、Jet Pressはあくまで新市場開拓の戦略機であることを強調する。
営業部門もオフセット印刷営業とは別に、POD専門の営業部隊を組織している。「自動車の営業に自転車は売れない」というのが石川社長の理論だ。POD営業は売上ではなく、ジョブ数で評価しているという。
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