キーワードで検索

共同印刷工業(京都)、安定性の高さが決め手[Revoria Press PC1120導入事例]

特殊トナーの表現力も評価:出版社の多様なニーズに応える

2024年10月9日ケーススタディ

 京都を拠点に出版印刷を手がける共同印刷工業(株)(本社/京都市右京区西院清水町156-1、江戸孝典社長)は2024年3月、富士フイルムのプロダクションカラープリンター「Revoria Press PC1120」(以下「PC1120」)を導入し、書籍の小ロット対応の体制を強化すると同時に、従来外注していたカバー・表紙・帯といった「付き物」の内製化を進めている。さらに、販促ツール制作や美術印刷などの領域でも積極的に活用。特殊紙を使ったアイテムや、オフセット並みの高い品質が求められる仕事もこなしている。そんな中でPC1120はどのようなメリットを発揮しているのか。導入の背景や活用戦略なども含めて江戸社長に伺った。

Revoria Press PC1120と江戸社長

 また今回、具体的な活用例として、フォトグラファー・竹村麻紀子氏の写真集にフォーカスし、写真家目線で見た仕上がりの印象などについて、竹村氏に語っていただいた。

カラーの内製化を進めるも、非効率なジョブが増加

 同社は、1948年に京都市上京区で活版書籍印刷業として創業。以来70年以上にわたり、書籍印刷を事業の主軸に据え、京都の出版業界とともに成長を続けてきた。同社が得意とするのは、学習参考書や専門書、学会誌といった1色~2色刷りの文字ものだ。可読性を追求した美しい文字組版と、書籍用の薄紙への安定した印刷を実現するノウハウが、長年培ってきた大きな強みのひとつになっている。

 2015年に江戸孝典氏が社長に就任してからは、それまで書籍本文の組版・印刷に特化していた業態を見直し、表紙やカバーなどのデザインから製本加工まで一貫対応できる環境を整備。近年高まっているという出版社の一括発注ニーズに応えている。

 「これまで出版社は、用紙の手配、印刷、製本を、書籍のパーツごとにそれぞれ分割発注するケースがほとんどだったが、最近はこうした発注業務を合理化する傾向にあるため、印刷会社は『原稿が入稿されたら本にして納める』というワンストップの対応が求められる。このようなニーズの変化に応えられるよう、人材や設備をそろえている」(江戸社長)

 現在、印刷設備としては、オフセット機4台(本社に菊全判4色機2台、四六全判2色機1台、子会社の(株)エーシーティーに菊全判4色機1台)に、新戦力であるPC1120を加えた体制。さらに、小ロット製本用に無線綴じ機・三方断裁機・ラミネーターも設備している。4色機を3台備えているのは、協力会社に外注していた表紙やカバーなどの内製化を進めるためだ。

 一方、出版物の部数減少という流れは、専門書の分野でも顕著に表れており、同社でも小ロットへの対応が必須となっている。

 「当社が手がける専門書の中には、大学の講義でテキストとして使用されるものも多いが、最近は講義の内容が細分化され、大人数で行われるものが減りつつある。つまり、ひとつの講義で必要とされるテキストの部数が減少している。また、コロナ禍以降、教授がオンライン授業を前提にレジュメを用意するケースが増え、学生が参考書などを購入する機会が少なくなっていることも、ひとつの要因」(江戸社長)

 内製化を推し進める中で、小ロット化も進行。その結果、同社では非効率なジョブが増加し、大きな課題となっていた。

薄紙1,000枚連続出力で安定性を見極める

 小ロットジョブが増え続ける中で、品質を担保しながらいかに生産効率を高めるか。そんな観点から、同社は新たな生産機としてデジタル印刷機の導入を検討。その際、最も重視したのは、作業効率を左右する「安定性」だと江戸社長は語る。

 「単に出力スピードが速いだけでなく、品質や表裏見当が安定していること。これによって、無駄な工数が削減でき、出力中にオペレーターが他の作業を並行して行うことも可能になる。生産効率を追求する上では非常に重要なポイント」

 安定性の高さを見極めるため、FFGSのショールームで連続出力の検証を行ったという。「書籍でよく使用する薄紙を、カラー両面で1000枚以上通した。機械にとってかなりシビアな条件だと思うが、出力中にシワが入ったり、色や見当がズレたりといったトラブルはなく、予想以上に安定していたので驚いた。表面に凹凸のある用紙もテストしたが、いずれも問題なく出力できた」(江戸社長)

 もうひとつ、導入の決め手になったのは、「特殊トナーによる表現力」だ。江戸社長はここに大きな可能性を感じたと語る。

 「小ロットの仕事を効率よくこなすことも重要だが、それはあくまでも社内の課題。それだけでなく、いままでにないデザイン表現などを生み出し、提案の幅を広げることで、お客さまに新しいメリットを提供できるようになると考えた」

特殊紙・特色を使用したジョブにも強みを発揮

 まだ導入からわずか数ヵ月だが、PC1120のメリットはすでにさまざまな面で発揮されている。まず安定性については、「導入前の検証でも確かめられた通り、薄紙をかなりの枚数通しても、色味や表裏見当の変動がなく、安心感がある」と江戸社長。「比較的ボリュームのある仕事で、出力時間が長いときには、オペレーターは他の作業を並行して行っており、常に張り付いている必要がない」

 また、制作部門においては、仕上がりのシミュレーションを即座に行える点が好評だという。

 「たとえば、ファンシーペーパーなどの風合いのある紙にデザインを乗せたときに、どんな仕上がりになるのか、やはり実際に出してみないとわからない。その点、PC1120では手軽にテスト出力して確認することができるので、デザイン的なトライアルがやりやすくなった。また、PC1120で印刷するジョブに関しては『高精度な本機校正を短納期で出せる』ということでもある」(江戸社長)

 特殊トナーの活用も積極的に提案し、着々と実績を重ねている。

 「ある書籍の仕事で、表紙にシルバートナーを使用したところ、『オフセットで刷るよりも銀色が鮮明に見え、期待以上の仕上がりになった』と、出版社だけでなく装丁家からも喜んでいただけた」(江戸社長)

 書籍以外では、小ロットの食品ラベルにゴールドトナーを効果的に使用して高い評価を得たケースもあり、「部数は少ないがデザイン性を重視したい」というニーズにマッチしているようだ。

 さらには、PET素材やタック紙を使用した仕事にもチャレンジ。PC1120の優れた用紙適性と、静電気除去装置による除電効果が活かされ、いずれも「問題なく出力し、納品できている」という。

新着トピックス

喜多氏と「AccurioJet KM-1e」

大阪印刷、同人誌印刷ビジネスで「圧倒的な画質」提供[AccurioJet KM-1e導入事例]

2024年9月20日ケーススタディ

 同人誌印刷ビジネスで急成長を遂げる大阪印刷(株)(大阪市西淀川区御幣島5-5-23、根田貴裕社長)は今年4月、コニカミノルタの29インチ枚葉UVインクジェット印刷機「AccurioJ...全文を読む

dp_1160cfg_drupa2024_tn.jpg

富士フイルムBI、独自のインクジェット技術で新たなソリューション提供

2024年9月11日製品・テクノロジー

 富士フイルムビジネスイノベーション(株)(本社/東京都港区、浜直樹社長・CEO)は2024年5月、新たな商業印刷向け高速ロール紙カラーインクジェットプリンター「Jet Press 1...全文を読む

最新ニュース

規格袋にPOD機で直接印刷

富士フイルム、TOKYO PACK 出展でパッケージの付加価値提案

2024年10月9日

 富士フイルムグループは、「TOKYO PACK 2024(東京国際包装展)」に出展し、インクジェット方式やトナー方式など、富士フイルムが独自開発した幅広いラインアップのデジタルプリン...全文を読む

dp_iic_j560hdx_tn.jpg

SCREEN GA、京都・久御山事業所に「インクジェットイノベーションセンター京都」開設

2024年10月7日

 (株)SCREENグラフィックソリューションズ(京都府京都市、田中志佳社長、以下、SCREEN GA)は、2024年10月に印刷関連機器の開発・製造を担う京都・久御山事業所に「インク...全文を読む

dp_book_on_demand_hsf2024_tn.jpg

SCREEN GA、「Horizon Smart Factory 2024」で無人化生産ラインを紹介

2024年9月24日

 (株)SCREENグラフィックソリューションズ(SCREEN GA)は、10月9日から11日の3日間、ホリゾン本社びわこ工場内「Horizon Inovation Park」(滋賀県...全文を読む

共同印刷工業(京都)、安定性の高さが決め手[Revoria Press PC1120導入事例]

特殊トナーの表現力も評価:出版社の多様なニーズに応える

2024年10月9日ケーススタディ

  • twitter
  • facebook
  • line

 京都を拠点に出版印刷を手がける共同印刷工業(株)(本社/京都市右京区西院清水町156-1、江戸孝典社長)は2024年3月、富士フイルムのプロダクションカラープリンター「Revoria Press PC1120」(以下「PC1120」)を導入し、書籍の小ロット対応の体制を強化すると同時に、従来外注していたカバー・表紙・帯といった「付き物」の内製化を進めている。さらに、販促ツール制作や美術印刷などの領域でも積極的に活用。特殊紙を使ったアイテムや、オフセット並みの高い品質が求められる仕事もこなしている。そんな中でPC1120はどのようなメリットを発揮しているのか。導入の背景や活用戦略なども含めて江戸社長に伺った。

Revoria Press PC1120と江戸社長

 また今回、具体的な活用例として、フォトグラファー・竹村麻紀子氏の写真集にフォーカスし、写真家目線で見た仕上がりの印象などについて、竹村氏に語っていただいた。

カラーの内製化を進めるも、非効率なジョブが増加

 同社は、1948年に京都市上京区で活版書籍印刷業として創業。以来70年以上にわたり、書籍印刷を事業の主軸に据え、京都の出版業界とともに成長を続けてきた。同社が得意とするのは、学習参考書や専門書、学会誌といった1色~2色刷りの文字ものだ。可読性を追求した美しい文字組版と、書籍用の薄紙への安定した印刷を実現するノウハウが、長年培ってきた大きな強みのひとつになっている。

 2015年に江戸孝典氏が社長に就任してからは、それまで書籍本文の組版・印刷に特化していた業態を見直し、表紙やカバーなどのデザインから製本加工まで一貫対応できる環境を整備。近年高まっているという出版社の一括発注ニーズに応えている。

 「これまで出版社は、用紙の手配、印刷、製本を、書籍のパーツごとにそれぞれ分割発注するケースがほとんどだったが、最近はこうした発注業務を合理化する傾向にあるため、印刷会社は『原稿が入稿されたら本にして納める』というワンストップの対応が求められる。このようなニーズの変化に応えられるよう、人材や設備をそろえている」(江戸社長)

 現在、印刷設備としては、オフセット機4台(本社に菊全判4色機2台、四六全判2色機1台、子会社の(株)エーシーティーに菊全判4色機1台)に、新戦力であるPC1120を加えた体制。さらに、小ロット製本用に無線綴じ機・三方断裁機・ラミネーターも設備している。4色機を3台備えているのは、協力会社に外注していた表紙やカバーなどの内製化を進めるためだ。

 一方、出版物の部数減少という流れは、専門書の分野でも顕著に表れており、同社でも小ロットへの対応が必須となっている。

 「当社が手がける専門書の中には、大学の講義でテキストとして使用されるものも多いが、最近は講義の内容が細分化され、大人数で行われるものが減りつつある。つまり、ひとつの講義で必要とされるテキストの部数が減少している。また、コロナ禍以降、教授がオンライン授業を前提にレジュメを用意するケースが増え、学生が参考書などを購入する機会が少なくなっていることも、ひとつの要因」(江戸社長)

 内製化を推し進める中で、小ロット化も進行。その結果、同社では非効率なジョブが増加し、大きな課題となっていた。

薄紙1,000枚連続出力で安定性を見極める

 小ロットジョブが増え続ける中で、品質を担保しながらいかに生産効率を高めるか。そんな観点から、同社は新たな生産機としてデジタル印刷機の導入を検討。その際、最も重視したのは、作業効率を左右する「安定性」だと江戸社長は語る。

 「単に出力スピードが速いだけでなく、品質や表裏見当が安定していること。これによって、無駄な工数が削減でき、出力中にオペレーターが他の作業を並行して行うことも可能になる。生産効率を追求する上では非常に重要なポイント」

 安定性の高さを見極めるため、FFGSのショールームで連続出力の検証を行ったという。「書籍でよく使用する薄紙を、カラー両面で1000枚以上通した。機械にとってかなりシビアな条件だと思うが、出力中にシワが入ったり、色や見当がズレたりといったトラブルはなく、予想以上に安定していたので驚いた。表面に凹凸のある用紙もテストしたが、いずれも問題なく出力できた」(江戸社長)

 もうひとつ、導入の決め手になったのは、「特殊トナーによる表現力」だ。江戸社長はここに大きな可能性を感じたと語る。

 「小ロットの仕事を効率よくこなすことも重要だが、それはあくまでも社内の課題。それだけでなく、いままでにないデザイン表現などを生み出し、提案の幅を広げることで、お客さまに新しいメリットを提供できるようになると考えた」

特殊紙・特色を使用したジョブにも強みを発揮

 まだ導入からわずか数ヵ月だが、PC1120のメリットはすでにさまざまな面で発揮されている。まず安定性については、「導入前の検証でも確かめられた通り、薄紙をかなりの枚数通しても、色味や表裏見当の変動がなく、安心感がある」と江戸社長。「比較的ボリュームのある仕事で、出力時間が長いときには、オペレーターは他の作業を並行して行っており、常に張り付いている必要がない」

 また、制作部門においては、仕上がりのシミュレーションを即座に行える点が好評だという。

 「たとえば、ファンシーペーパーなどの風合いのある紙にデザインを乗せたときに、どんな仕上がりになるのか、やはり実際に出してみないとわからない。その点、PC1120では手軽にテスト出力して確認することができるので、デザイン的なトライアルがやりやすくなった。また、PC1120で印刷するジョブに関しては『高精度な本機校正を短納期で出せる』ということでもある」(江戸社長)

 特殊トナーの活用も積極的に提案し、着々と実績を重ねている。

 「ある書籍の仕事で、表紙にシルバートナーを使用したところ、『オフセットで刷るよりも銀色が鮮明に見え、期待以上の仕上がりになった』と、出版社だけでなく装丁家からも喜んでいただけた」(江戸社長)

 書籍以外では、小ロットの食品ラベルにゴールドトナーを効果的に使用して高い評価を得たケースもあり、「部数は少ないがデザイン性を重視したい」というニーズにマッチしているようだ。

 さらには、PET素材やタック紙を使用した仕事にもチャレンジ。PC1120の優れた用紙適性と、静電気除去装置による除電効果が活かされ、いずれも「問題なく出力し、納品できている」という。

新着トピックス

新着ニュース

PAGE TOP