ハタヤ、ワイドフォーマットUVインクジェット「JETI TITAN HS」:プライマーで高いインク密着性
サイン・ディスプレイ向けWeb to Print「Asanti StoreFront」も
2016年3月25日ケーススタディ
「街、人、空間、つながるデザインをご提案」--シルクスクリーン印刷とデジタルプリントによるサイン・ディスプレイ事業を展開する(有)ハタヤ(本社/兵庫県神戸市西区伊川谷町別府121-1、吉川眞五社長)は昨年5月、プラダンやPPボードへのインク密着性を高めるデジタルプライマーオプション搭載のスーパーワイドフォーマットUVインクジェットプリンタ「JETI TITAN HS」を導入。さらに今年1月にはサイン・ディスプレイ業界向けWeb to Print構築eコマースソリューション「Asanti StoreFront」を、国内第1号ユーザーとして採用し、営業改革と新規事業への挑戦に乗り出している。
同社の創業は昭和57年。神戸市の西部に位置する伊川谷の地でシルクスクリーン印刷を手掛ける「ハタヤ工業」として産声をあげた同社は、土木建築業向けに安全標識などを供給する会社に勤めていた吉川社長が独立する形で起業したサイン・ディスプレイのプロ集団だ。「シルクスクリーン印刷の知識も技術もまったくないゼロからのスタートだった。ただ、私自身がこの技術に対して先入観や既成概念を持ち合わせていなかったことが独自性を生み、成長に寄与したようにも思う」と創業当時を振り返る吉川社長。現場・技術にのめり込むことなく企業経営者としての「感性」を頼りに先進的な設備投資で兵庫県では名の知れたサイン・ディスプレイ会社として確固たる地位を築いている。
まさに「攻めの投資」を繰り返してきた同社だが、インクジェット技術を事業に採り入れたのは阪神淡路大震災の爪痕がまだ残る平成9年。POPや案内看板などのインクジェット化を皮切りに、スコッチプリントを活用した屋外サイン・ディスプレイなども手掛け、さらなるシルクスクリーン印刷工程の充実と並行させる形でインクジェット設備への投資を加速させた。
◇ ◇
インクジェット事業に「人」「物」「金」の多くの経営資源を投下する中で、平成18年にロールタイプのUVインクジェットプリンタを導入。「白」という概念を持ち合わせたUVインクジェットプリンタは、それまでシルクスクリーン印刷の守備範囲だった商材をカバーするものとして「鳴り物入り」で設置された。
しかし、ここで大きな課題が浮上する。それは「インクの密着性」だ。それまでシルクスクリーンで印刷していたPPやアクリルといった樹脂系の素材に対してUVインクが密着しないことから、同社では一旦、樹脂系素材でも密着性の高いインクをシルクスクリーンで印刷(下塗り)してからUVインクジェットプリンタで出力するという工程を余儀なくされていた。
そこで白羽の矢を向けられたのがアグフアのスーパーワイドフォーマットインクジェット「JETI TITAN」である。
同プリンタは、最大155平方メートル/時の出力が可能なフラットベッドUVインクジェットプリンタ。最新の高解像度インクジェットヘッドとリニアモーターシャトルを採用し、高生産性と高精細印刷を同時に実現している。
そして最大の特長が、インクジェットによるデジタルプライマーを搭載し、これまでUVインクジェットが苦手としていたプラダンやPPボードなどに対しても抜群の密着性を発揮する点である。印刷メディア全面に塗布することはもちろん、 必要な部分のみ塗布するスポットプライマーにも対応する。
早速、アグフアのベルギー本社にメディアを送って印刷テストを実施。送り返されてきたメディアをクロスカットテストしたところ、同社の要求レベルをクリアしたという。
「実はその前にもテストしたが、その当時はプライマーオプションがなかったため我々の要求を満たす密着性は得られなかった。設備投資はタイミングがすべて」と吉川社長。絶対条件であった「インクの密着性」、そして生産性においてもハタヤの要求レベルをクリアした「JETI TITAN」。フラットベッドの特性を活かしたボード素材へのダイレクト印刷も視野に入れ、そのハイエンドモデル「JETI TITAN HS」が本社工場の1階に設置された。昨年5月のことである。
◇ ◇
インクジェットによるビジネスが、いまや事業全体の7割を締めるという同社では、今年1月にサイン・ディスプレイ業界向けのWeb to Print構築eコマースソリューション「Asanti StoreFront」を、国内第1号ユーザーとして採用し、インターネットを活用した新たな展開に着手している。
「Asanti StoreFront」は、インターネットを使用して印刷会社が自社のネットショップを開設したり、印刷物の受発注システムをクライアントに提案したりでき、新たな販路の開拓やクライアントとの関係強化が図れるクラウド(SaaS)ベースのサービスだ。同社でも最終的な目標を「営業改革」と定め、既存顧客の受発注窓口としての機能に期待を寄せている。
「5人の営業は現在、タイトな納期などから既存顧客で精一杯の状況。当社がさらに売上を伸ばすには営業改革が必須だと考える。この仕組みは営業の効率化をもたらすだけでなく、クライアントのニーズを探るマーケティングツールとしても機能するはず」(吉川社長)
一方同社では、この「営業改革」機能への足がかりとして「Asanti StoreFront」を使った2つのBtoC向けネットショップをまもなくオープンする予定だ。
ひとつがシルクスクリーン印刷をアートの世界に転用したポストカードなどを販売するサイト。ブランド名は「sutta」。シルクスクリーン印刷の「手間」を「付加価値」に変えていく取り組みである。「ニッチな市場かもしれないがネットの世界にある新たな価値観、感性に期待している」(吉川社長)
もうひとつが、個人の写真や絵などを送ると「JETI TITAN」でキャンバスに印刷し、パネルとして提供するサイト。ブランド名は「モノコト」。両サイトとも、デザインはほぼ完了しており、現在、決済部分などの改良を加えている段階である。
「設備が仕事を呼び込む時代は終わった。印刷をどこに出してもある一定の品質は得られ、あとは価格やデリバリの問題になる。そんな中では、自らが考え、そして発信、提案していく会社しか生き残れない。『考える会社』、そうなるために『JETI TITAN』と『Asanti StoreFront』は当社にとって大きな意味を持つ」(吉川社長)
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同社の創業は昭和57年。神戸市の西部に位置する伊川谷の地でシルクスクリーン印刷を手掛ける「ハタヤ工業」として産声をあげた同社は、土木建築業向けに安全標識などを供給する会社に勤めていた吉川社長が独立する形で起業したサイン・ディスプレイのプロ集団だ。「シルクスクリーン印刷の知識も技術もまったくないゼロからのスタートだった。ただ、私自身がこの技術に対して先入観や既成概念を持ち合わせていなかったことが独自性を生み、成長に寄与したようにも思う」と創業当時を振り返る吉川社長。現場・技術にのめり込むことなく企業経営者としての「感性」を頼りに先進的な設備投資で兵庫県では名の知れたサイン・ディスプレイ会社として確固たる地位を築いている。
まさに「攻めの投資」を繰り返してきた同社だが、インクジェット技術を事業に採り入れたのは阪神淡路大震災の爪痕がまだ残る平成9年。POPや案内看板などのインクジェット化を皮切りに、スコッチプリントを活用した屋外サイン・ディスプレイなども手掛け、さらなるシルクスクリーン印刷工程の充実と並行させる形でインクジェット設備への投資を加速させた。
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インクジェット事業に「人」「物」「金」の多くの経営資源を投下する中で、平成18年にロールタイプのUVインクジェットプリンタを導入。「白」という概念を持ち合わせたUVインクジェットプリンタは、それまでシルクスクリーン印刷の守備範囲だった商材をカバーするものとして「鳴り物入り」で設置された。
しかし、ここで大きな課題が浮上する。それは「インクの密着性」だ。それまでシルクスクリーンで印刷していたPPやアクリルといった樹脂系の素材に対してUVインクが密着しないことから、同社では一旦、樹脂系素材でも密着性の高いインクをシルクスクリーンで印刷(下塗り)してからUVインクジェットプリンタで出力するという工程を余儀なくされていた。
そこで白羽の矢を向けられたのがアグフアのスーパーワイドフォーマットインクジェット「JETI TITAN」である。
同プリンタは、最大155平方メートル/時の出力が可能なフラットベッドUVインクジェットプリンタ。最新の高解像度インクジェットヘッドとリニアモーターシャトルを採用し、高生産性と高精細印刷を同時に実現している。
そして最大の特長が、インクジェットによるデジタルプライマーを搭載し、これまでUVインクジェットが苦手としていたプラダンやPPボードなどに対しても抜群の密着性を発揮する点である。印刷メディア全面に塗布することはもちろん、 必要な部分のみ塗布するスポットプライマーにも対応する。
早速、アグフアのベルギー本社にメディアを送って印刷テストを実施。送り返されてきたメディアをクロスカットテストしたところ、同社の要求レベルをクリアしたという。
「実はその前にもテストしたが、その当時はプライマーオプションがなかったため我々の要求を満たす密着性は得られなかった。設備投資はタイミングがすべて」と吉川社長。絶対条件であった「インクの密着性」、そして生産性においてもハタヤの要求レベルをクリアした「JETI TITAN」。フラットベッドの特性を活かしたボード素材へのダイレクト印刷も視野に入れ、そのハイエンドモデル「JETI TITAN HS」が本社工場の1階に設置された。昨年5月のことである。
◇ ◇
インクジェットによるビジネスが、いまや事業全体の7割を締めるという同社では、今年1月にサイン・ディスプレイ業界向けのWeb to Print構築eコマースソリューション「Asanti StoreFront」を、国内第1号ユーザーとして採用し、インターネットを活用した新たな展開に着手している。
「Asanti StoreFront」は、インターネットを使用して印刷会社が自社のネットショップを開設したり、印刷物の受発注システムをクライアントに提案したりでき、新たな販路の開拓やクライアントとの関係強化が図れるクラウド(SaaS)ベースのサービスだ。同社でも最終的な目標を「営業改革」と定め、既存顧客の受発注窓口としての機能に期待を寄せている。
「5人の営業は現在、タイトな納期などから既存顧客で精一杯の状況。当社がさらに売上を伸ばすには営業改革が必須だと考える。この仕組みは営業の効率化をもたらすだけでなく、クライアントのニーズを探るマーケティングツールとしても機能するはず」(吉川社長)
一方同社では、この「営業改革」機能への足がかりとして「Asanti StoreFront」を使った2つのBtoC向けネットショップをまもなくオープンする予定だ。
ひとつがシルクスクリーン印刷をアートの世界に転用したポストカードなどを販売するサイト。ブランド名は「sutta」。シルクスクリーン印刷の「手間」を「付加価値」に変えていく取り組みである。「ニッチな市場かもしれないがネットの世界にある新たな価値観、感性に期待している」(吉川社長)
もうひとつが、個人の写真や絵などを送ると「JETI TITAN」でキャンバスに印刷し、パネルとして提供するサイト。ブランド名は「モノコト」。両サイトとも、デザインはほぼ完了しており、現在、決済部分などの改良を加えている段階である。
「設備が仕事を呼び込む時代は終わった。印刷をどこに出してもある一定の品質は得られ、あとは価格やデリバリの問題になる。そんな中では、自らが考え、そして発信、提案していく会社しか生き残れない。『考える会社』、そうなるために『JETI TITAN』と『Asanti StoreFront』は当社にとって大きな意味を持つ」(吉川社長)
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