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2016年デジタル印刷市場は2.1%減の3,229億2,000万円〜マイナンバー関連需要が一服

2017年は1.4%増の見込み|矢野経済研究所:デジタル印刷市場調査実施

2017年9月15日マーケティング

 矢野経済研究所は、国内デジタル印刷市場の調査結果を発表した。
 これによると、2015年度のデジタル印刷市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比8.7%増の3,297億4,500万円で、この大幅拡大の要因は、マイナンバー制度施行に伴う需要拡大によるところが大きいとしている。
 具体的には2015年10月から始まったマイナンバー通知に関するデータプリントサービス(以下「DPS」)案件と送付後に発生したマイナンバー収集に関するビジネスプロセスアウトソーシング(以下「BPO」)案件がそれに当たる。通知書は当然ながら日本国内の全世帯に送付されたため、これまでにない大規模アウトソーシング需要となった。また、POD市場においても、オフィスコンビニ、フォトブックの両市場が牽引し、増加推移となっている。
 しかし、2016年度の同市場規模は、その通知案件の終了に加え、収集案件も前年度に比べると受注が減少したことにより、前年度比2.1%減の3,229億2,000万円と減少している。POD市場の増加やDPS市場における金融業からの受注拡大により、2014年度と比較すると市場規模は拡大しているものの、それら拡大した需要がマイナンバー制度関連案件の穴を埋めるまでには至らなかった。

各分野別市場動向

 DPS市場では、受注単価の減少やWeb化に伴う紙需要の喪失、案件の小ロット多品種化など、市場環境が厳しさを増す中で、近年は各DPS事業者の対応力の差が明確になっており、これが市場の二極化に繋がっている。主要なDPS事業者では、このような環境下において、フルデジタル印刷によってコストメリットや新たな付加価値を顧客に提案することで、紙出力案件の確保、引いては売上の確保を推進する動きが目立ってきている。
 また、大手DPS事業者を中心に、従来型のDPSからさらなる付加価値を加えた提案に力を入れており、請け負う業務の枠を広げたBPOサービスの実績が増加傾向にある。
 POD市場は、フォトブック市場とオフィスコンビニ市場の拡大により、ここ数年は増加傾向にあるが、それらを除く分野は減少傾向となっている。オフセット印刷とのロット分岐点が下がっていることによる案件の小規模化や小ロット領域での競合企業との熾烈な価格競争がその減少要因となっている。この領域でその動向が注目されている個別、またはセグメント別に趣向に合わせた内容を盛り込むことで訴求効果の向上を目指したバリアブルDMについても、依然として費用対効果の明示が大きな障害になり、停滞が続いている。
 ただ一方で、大手顧客を中心にユーザーDB情報の整備が急速に進む中で、マーケティングオートメーションを活用したデジタルマーケティングの有用性も認知されてきており、市場ではOne to Oneマーケティングの実現に向けた機運自体は高まっている。
 その状況下で、印刷品質の向上とコストの低減を両立できる可能性がある高解像度のフルカラーインクジェット印刷機を導入する事業者が徐々に増えており、今後の市場開拓が期待されている。
 フォトブック市場は拡大基調にある。2010年〜2012年に掛けて新興勢力として台頭してきた第2世代の事業者が主に展開するBtoC向けの低価格サービスが市場を牽引している。ただ一方で、このサービスが価格競争を助長しており、単価は減少傾向にある。
 今後に関しても、この低価格サービスの影響による単価ダウンで、金額ベースでは成長が鈍化する可能性はあるが、一方で低価格サービスもほぼ限界点の価格であり、また各事業者の差別化したサービスの充実やユーザー側において用途に応じた価格帯の使い分けも進んできていることから、今後は金額ベースと冊数ベースの成長率の乖離は小さくなると予測している。
 出版印刷分野におけるデジタル印刷の活用に関しては、新たに大手出版社のKADOKAWAが少部数生産ラインを導入することを発表、その他、デジタル印刷の活用に取り組む出版社も増えている。また、ネット書店におけるストア型PODが俄かに盛り上がり、それに伴いPOD取次事業者の存在感も高まっている。印刷事業者においても本格参入が相次いでいる。
 コストと品質という2つの大きな課題は依然として残っており、市場はまだ黎明期を脱していないものの、印刷事業者における実績は以前と比べて増加している。
 軟包装分野におけるデジタル印刷市場は、現状、軟包装印刷市場全体の1%にも満たない規模ではあるが、その市場規模は増加傾向にある。主に販売促進用途や土産用途などでの活用が進んでおり、デジタル印刷の需要が拡大している。とくに茶業界といった他の需要分野より小ロット化が進んでいる分野では、グラビア印刷では対応できないロットへの対応として、デジタル印刷の活用が進んでいる。コストと品質の課題に苦しむ軟包装印刷事業者は多いが、一方で生産面における様々な課題をクリアして、本格的な受注の取り込みを図っている事業者も徐々に増えてきており、これら自社のデジタル印刷事業の方向性を見出した事業者のさらなる増加により、今後も市場拡大が期待される。

将来予測

 2017年度のデジタル印刷市場規模は前年度比1.4%増の3,273億7,000万円の見込み。また、2018年度の同市場規模は前年度比1.6%増の3,325億7,000万円と予測している。
 POD市場は、フォトブック市場が低価格サービス拡大による端境期を終え、再び成長率の拡大が見込まれており、またオフィスコンビニ市場も棲み分けや淘汰の動きが一巡しつつあり、過去のような高成長はないが、今後も成長が期待できる市場になってきている。その他のPOD市場については、厳しい状況にあるが、ただ、出版印刷分野のように、今後本格的な市場形成が期待される分野もある。
 しかし一方で、デジタル印刷市場の最大分野であるDPS市場では、引き続き金融業からの受注は好調に推移しているものの、マイナンバー収集案件の需要に一服感が出ており、現状マイナンバー需要の先行きは不透明となっている。
 そのため、総じてデジタル印刷市場の今後1〜2年の成長速度は鈍化する見通しだ。
 ただマイナンバー関連需要に関しては、銀行口座への適用(マイナンバーの紐付け)が2021年には義務化されるため、それに伴い、銀行からの引き合いが活性化すると見られる。また、2019年を目途にマイナンバー利用範囲の拡大についても検討が行われる予定となっているため、民間利用に伴う需要創出も期待できる。このようにマイナンバーの活用がスケジュール通りに進めば、中長期的には、デジタル印刷市場の成長率は再び拡大する可能性はあると分析している。

▽資料名:「デジタル印刷市場の展望と戦略2017」
▽体裁:A4判 303頁
▽定価:15万円(税別)

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 矢野経済研究所は、国内デジタル印刷市場の調査結果を発表した。
 これによると、2015年度のデジタル印刷市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比8.7%増の3,297億4,500万円で、この大幅拡大の要因は、マイナンバー制度施行に伴う需要拡大によるところが大きいとしている。
 具体的には2015年10月から始まったマイナンバー通知に関するデータプリントサービス(以下「DPS」)案件と送付後に発生したマイナンバー収集に関するビジネスプロセスアウトソーシング(以下「BPO」)案件がそれに当たる。通知書は当然ながら日本国内の全世帯に送付されたため、これまでにない大規模アウトソーシング需要となった。また、POD市場においても、オフィスコンビニ、フォトブックの両市場が牽引し、増加推移となっている。
 しかし、2016年度の同市場規模は、その通知案件の終了に加え、収集案件も前年度に比べると受注が減少したことにより、前年度比2.1%減の3,229億2,000万円と減少している。POD市場の増加やDPS市場における金融業からの受注拡大により、2014年度と比較すると市場規模は拡大しているものの、それら拡大した需要がマイナンバー制度関連案件の穴を埋めるまでには至らなかった。

各分野別市場動向

 DPS市場では、受注単価の減少やWeb化に伴う紙需要の喪失、案件の小ロット多品種化など、市場環境が厳しさを増す中で、近年は各DPS事業者の対応力の差が明確になっており、これが市場の二極化に繋がっている。主要なDPS事業者では、このような環境下において、フルデジタル印刷によってコストメリットや新たな付加価値を顧客に提案することで、紙出力案件の確保、引いては売上の確保を推進する動きが目立ってきている。
 また、大手DPS事業者を中心に、従来型のDPSからさらなる付加価値を加えた提案に力を入れており、請け負う業務の枠を広げたBPOサービスの実績が増加傾向にある。
 POD市場は、フォトブック市場とオフィスコンビニ市場の拡大により、ここ数年は増加傾向にあるが、それらを除く分野は減少傾向となっている。オフセット印刷とのロット分岐点が下がっていることによる案件の小規模化や小ロット領域での競合企業との熾烈な価格競争がその減少要因となっている。この領域でその動向が注目されている個別、またはセグメント別に趣向に合わせた内容を盛り込むことで訴求効果の向上を目指したバリアブルDMについても、依然として費用対効果の明示が大きな障害になり、停滞が続いている。
 ただ一方で、大手顧客を中心にユーザーDB情報の整備が急速に進む中で、マーケティングオートメーションを活用したデジタルマーケティングの有用性も認知されてきており、市場ではOne to Oneマーケティングの実現に向けた機運自体は高まっている。
 その状況下で、印刷品質の向上とコストの低減を両立できる可能性がある高解像度のフルカラーインクジェット印刷機を導入する事業者が徐々に増えており、今後の市場開拓が期待されている。
 フォトブック市場は拡大基調にある。2010年〜2012年に掛けて新興勢力として台頭してきた第2世代の事業者が主に展開するBtoC向けの低価格サービスが市場を牽引している。ただ一方で、このサービスが価格競争を助長しており、単価は減少傾向にある。
 今後に関しても、この低価格サービスの影響による単価ダウンで、金額ベースでは成長が鈍化する可能性はあるが、一方で低価格サービスもほぼ限界点の価格であり、また各事業者の差別化したサービスの充実やユーザー側において用途に応じた価格帯の使い分けも進んできていることから、今後は金額ベースと冊数ベースの成長率の乖離は小さくなると予測している。
 出版印刷分野におけるデジタル印刷の活用に関しては、新たに大手出版社のKADOKAWAが少部数生産ラインを導入することを発表、その他、デジタル印刷の活用に取り組む出版社も増えている。また、ネット書店におけるストア型PODが俄かに盛り上がり、それに伴いPOD取次事業者の存在感も高まっている。印刷事業者においても本格参入が相次いでいる。
 コストと品質という2つの大きな課題は依然として残っており、市場はまだ黎明期を脱していないものの、印刷事業者における実績は以前と比べて増加している。
 軟包装分野におけるデジタル印刷市場は、現状、軟包装印刷市場全体の1%にも満たない規模ではあるが、その市場規模は増加傾向にある。主に販売促進用途や土産用途などでの活用が進んでおり、デジタル印刷の需要が拡大している。とくに茶業界といった他の需要分野より小ロット化が進んでいる分野では、グラビア印刷では対応できないロットへの対応として、デジタル印刷の活用が進んでいる。コストと品質の課題に苦しむ軟包装印刷事業者は多いが、一方で生産面における様々な課題をクリアして、本格的な受注の取り込みを図っている事業者も徐々に増えてきており、これら自社のデジタル印刷事業の方向性を見出した事業者のさらなる増加により、今後も市場拡大が期待される。

将来予測

 2017年度のデジタル印刷市場規模は前年度比1.4%増の3,273億7,000万円の見込み。また、2018年度の同市場規模は前年度比1.6%増の3,325億7,000万円と予測している。
 POD市場は、フォトブック市場が低価格サービス拡大による端境期を終え、再び成長率の拡大が見込まれており、またオフィスコンビニ市場も棲み分けや淘汰の動きが一巡しつつあり、過去のような高成長はないが、今後も成長が期待できる市場になってきている。その他のPOD市場については、厳しい状況にあるが、ただ、出版印刷分野のように、今後本格的な市場形成が期待される分野もある。
 しかし一方で、デジタル印刷市場の最大分野であるDPS市場では、引き続き金融業からの受注は好調に推移しているものの、マイナンバー収集案件の需要に一服感が出ており、現状マイナンバー需要の先行きは不透明となっている。
 そのため、総じてデジタル印刷市場の今後1〜2年の成長速度は鈍化する見通しだ。
 ただマイナンバー関連需要に関しては、銀行口座への適用(マイナンバーの紐付け)が2021年には義務化されるため、それに伴い、銀行からの引き合いが活性化すると見られる。また、2019年を目途にマイナンバー利用範囲の拡大についても検討が行われる予定となっているため、民間利用に伴う需要創出も期待できる。このようにマイナンバーの活用がスケジュール通りに進めば、中長期的には、デジタル印刷市場の成長率は再び拡大する可能性はあると分析している。

▽資料名:「デジタル印刷市場の展望と戦略2017」
▽体裁:A4判 303頁
▽定価:15万円(税別)

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