大鹿印刷所、本紙校正用インクジェットプリンター「Proof Jet F780」導入
顧客やデザイナーも評価
校正作業の課題を本紙出力で完全解決
2018年1月15日ケーススタディ
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求めるのはオフセット印刷同等のクオリティ
「PJ-F780」導入にあたり、同社は、さらに違うメーカーが提供している本紙対応校正システムとの比較検証を実施。その結果、新たな本紙校正システムとして「PJ-F780」の導入を決定した。
その決定を大きく左右したのは、現場スタッフの意見だと、渡辺部長は説明する。
「実際のプリント業務を行うスタッフでPJ-F780の実機を見学したところ、基本性能や印刷品質など、すべての面で見学したスタッフの評価が高かった」
同社に在籍する56名のデザイナーのうち、36名が女性である。そのため女性が使いやすい機械であることも、導入条件の大きな選択肢となったようだ。
「PJ-F780」の本格運用に向け、同社では検証テストを開始。その1つが用紙検証だ。同社では、様々な用紙を使用してテストを実施し、デザイナーが求める色をしっかりと再現できているかなどを確認していった。
同社・生産部CTP課の古田課長は、「ベンチマークとしては、既設インクジェットプリンターの出力時間に対し、PJ-F780では、どのモードで出力すると品質が担保できるか、また、どれだけオフセット印刷の品質に近づけることができるかなどを検証した。いかに本紙対応といえども、オフセット印刷の品質、つまり本製品に近い色再現ができなければ、PJ-F780を導入した意味がない」と実施した検証作業について説明する。
同社が生産するパッケージは、消費者に対して商品をアピールすることが最大の使命である。陳列された数多くの商品の中で、いかに消費者の目を引き、購入意欲をかき立てるかが求められている。商品の売れ行きが好調になれば、顧客のビジネスにも影響する。そのため品質要求は年々高まり、校正といえども例外ではない。だからこそ、同社も検証テストに一切の妥協を許さなかったという。
そして約3週間のテスト運用を経て、本格稼働を開始。「フラットベットタイプであることから、これまでのプリンターとの機構上の違いに若干、戸惑いもあったもののメディアテクノロジージャパンとCGS Japan社のサポートもあり、CMSではインクジェット専用紙よりも印刷物に近い色域を再現することができ、スムーズな立ち上げを行うことができた」と小林氏。そして「PJ-F780」による本紙校正は、多くのメリットをもたらすこととなった。本紙校正が全体の75%に〜コスト削減にも効果
導入以前の同社では、顧客の理解のもと、インクジェットプリンターで出力した色校正と本紙をCADでカットし、製函したダミー箱を提出して、全体的なイメージを確認してもらっていた。しかし、このやり方ではやはり製品のイメージを正確に把握できない。
だが、「PJ-F780」運用開始後は、印刷本紙に出力し、本製品の仕様を完全に再現したサンプルを提供できるようになった。
「仕上がり品質だけではなく、持ったときの紙の質感や、実際に商品を入れた時の重量感など、総合的にお客様に確認してもらえるようになった。これにより、校了までのタイムスケジュールも大幅に短縮している」(渡辺部長)
さらに校正に要する時間だけでなく、印刷立ち会いの回数も減少するなど全体的な作業時間短縮にも貢献している。
「デザイン部門と生産部門で色に関する認識が完全に一致したので、これまでのような色確認のための突発的な印刷機停止なども抑制できるようになった」(大鹿社長)
また、本紙校正の運用は、コスト面でも大きな成果を上げている。これまで圧倒的に多かったインクジェット専用紙の使用量は、全体の25%まで減少し、逆に「PJ-F780」での本紙出力が75%を占めるようになった。これにより、年間で数百万円かかっていたインクジェット専用紙コストを大幅に圧縮することができた。
同社の「PJ-F780」は、デザイナーの作業ルームから廊下を挟み、少し離れたプリンタールームに設置されている。そのため、出力完了の確認には、そのプリンタールームまで足を運ばなくてはならない。当然、出力時間は、そのデザイン内容によって異なってくる。そこで同社では、出力完了を3段階で知らせる表示灯を設置し、無駄な待ち時間をなくす工夫をしている。
昨年12月に増設し2台体制へ
そして1台目の導入から約5ヵ月後の12月、同社は2台目の「PJ-F780」を導入。これには増設による100%本紙校正運用だけでなく、ある別の目的があるという。同社が導入した1台目はニスインクを、そして2台目は白インクをオプション搭載している。今後は、このオプション機能を最大限に発揮した校正作業を実施していくことが狙いだ。
同社では、既設UVインクジェットプリンターでフィルムや蒸着紙など、特殊原反のプルーフ出力を行っているが、これらの校正出力も「PJ-F780」に移行することを検討している。
「UVインクジェットプリンターは、メタル系基材などに出力できるメリットがある反面、全体的な色再現性に課題があり、そのため色が合ってないことを説明した上で、お客様に提出していた。しかし、2台目のPJ-F780は、白インクが使用できるので特殊紙でも高精度で色再現ができると思う」(鈴木氏)
また、水性顔料インクの「PJ-F780」は、UV独特の臭気を発生することなく、作業環境の改善につながることもメリットとして挙げている。
白インクの運用については、現在、マッチング作業を進めており、同社に最適なシステムとしての構築も近いようだ。
また、今後の要望としては、ニスインクのバリエーションの拡充やオフセットインキメーカ毎の色味を再現できるインクジェットインクの開発に期待しているという。PJ-F780は校正における品質管理の要
「PJ-F780」の導入により、同社の抱えていた課題が解決でき、また、顧客に対しても本製品同等の見本を提示できるようになったことは大きな成果である。その成功の背景には、「PJ-F780」の本格運用に奔走した鈴木氏と小林氏の功績があると古田課長は語る。
「どんなに優れた機械を導入しても、カラーマッチングがうまくいかなければ、デザイナーから評価されない。また、カラーマッチングができても、その運用の仕組みに問題があればデザイナーは納得して使用してくれない。この課題に対し、2人の女性スタッフが中心となって積極的に取り組んでくれたことが本格稼働につながり、また、ここまでの効率化を実現できたはず」
国内パッケージ印刷市場は、ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックなどの国際イベントを控えていることから、多くの需要が期待されている。同社は、デザイン力や印刷技術を駆使し、「創注産業」、つまり注文を自ら創り出し、「創造・貢献・向上」を理念に顧客のビジネスに貢献する企業として今後も展開していく方針だ。
「当社では、印刷の品質管理体制の強化を目的にこれまで多くの設備投資を実施してきた。そのため品質に対するこだわりは、当社の強みといえる。その中でPJ-F780は、デザインや校正の品質管理を担う戦力機と位置付けている」(大鹿社長)新着トピックス
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顧客やデザイナーも評価 校正作業の課題を本紙出力で完全解決
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求めるのはオフセット印刷同等のクオリティ
「PJ-F780」導入にあたり、同社は、さらに違うメーカーが提供している本紙対応校正システムとの比較検証を実施。その結果、新たな本紙校正システムとして「PJ-F780」の導入を決定した。
その決定を大きく左右したのは、現場スタッフの意見だと、渡辺部長は説明する。
「実際のプリント業務を行うスタッフでPJ-F780の実機を見学したところ、基本性能や印刷品質など、すべての面で見学したスタッフの評価が高かった」
同社に在籍する56名のデザイナーのうち、36名が女性である。そのため女性が使いやすい機械であることも、導入条件の大きな選択肢となったようだ。
「PJ-F780」の本格運用に向け、同社では検証テストを開始。その1つが用紙検証だ。同社では、様々な用紙を使用してテストを実施し、デザイナーが求める色をしっかりと再現できているかなどを確認していった。
同社・生産部CTP課の古田課長は、「ベンチマークとしては、既設インクジェットプリンターの出力時間に対し、PJ-F780では、どのモードで出力すると品質が担保できるか、また、どれだけオフセット印刷の品質に近づけることができるかなどを検証した。いかに本紙対応といえども、オフセット印刷の品質、つまり本製品に近い色再現ができなければ、PJ-F780を導入した意味がない」と実施した検証作業について説明する。
同社が生産するパッケージは、消費者に対して商品をアピールすることが最大の使命である。陳列された数多くの商品の中で、いかに消費者の目を引き、購入意欲をかき立てるかが求められている。商品の売れ行きが好調になれば、顧客のビジネスにも影響する。そのため品質要求は年々高まり、校正といえども例外ではない。だからこそ、同社も検証テストに一切の妥協を許さなかったという。
そして約3週間のテスト運用を経て、本格稼働を開始。「フラットベットタイプであることから、これまでのプリンターとの機構上の違いに若干、戸惑いもあったもののメディアテクノロジージャパンとCGS Japan社のサポートもあり、CMSではインクジェット専用紙よりも印刷物に近い色域を再現することができ、スムーズな立ち上げを行うことができた」と小林氏。そして「PJ-F780」による本紙校正は、多くのメリットをもたらすこととなった。
本紙校正が全体の75%に〜コスト削減にも効果
導入以前の同社では、顧客の理解のもと、インクジェットプリンターで出力した色校正と本紙をCADでカットし、製函したダミー箱を提出して、全体的なイメージを確認してもらっていた。しかし、このやり方ではやはり製品のイメージを正確に把握できない。
だが、「PJ-F780」運用開始後は、印刷本紙に出力し、本製品の仕様を完全に再現したサンプルを提供できるようになった。
「仕上がり品質だけではなく、持ったときの紙の質感や、実際に商品を入れた時の重量感など、総合的にお客様に確認してもらえるようになった。これにより、校了までのタイムスケジュールも大幅に短縮している」(渡辺部長)
さらに校正に要する時間だけでなく、印刷立ち会いの回数も減少するなど全体的な作業時間短縮にも貢献している。
「デザイン部門と生産部門で色に関する認識が完全に一致したので、これまでのような色確認のための突発的な印刷機停止なども抑制できるようになった」(大鹿社長)
また、本紙校正の運用は、コスト面でも大きな成果を上げている。これまで圧倒的に多かったインクジェット専用紙の使用量は、全体の25%まで減少し、逆に「PJ-F780」での本紙出力が75%を占めるようになった。これにより、年間で数百万円かかっていたインクジェット専用紙コストを大幅に圧縮することができた。
同社の「PJ-F780」は、デザイナーの作業ルームから廊下を挟み、少し離れたプリンタールームに設置されている。そのため、出力完了の確認には、そのプリンタールームまで足を運ばなくてはならない。当然、出力時間は、そのデザイン内容によって異なってくる。そこで同社では、出力完了を3段階で知らせる表示灯を設置し、無駄な待ち時間をなくす工夫をしている。
昨年12月に増設し2台体制へ
そして1台目の導入から約5ヵ月後の12月、同社は2台目の「PJ-F780」を導入。これには増設による100%本紙校正運用だけでなく、ある別の目的があるという。同社が導入した1台目はニスインクを、そして2台目は白インクをオプション搭載している。今後は、このオプション機能を最大限に発揮した校正作業を実施していくことが狙いだ。
同社では、既設UVインクジェットプリンターでフィルムや蒸着紙など、特殊原反のプルーフ出力を行っているが、これらの校正出力も「PJ-F780」に移行することを検討している。
「UVインクジェットプリンターは、メタル系基材などに出力できるメリットがある反面、全体的な色再現性に課題があり、そのため色が合ってないことを説明した上で、お客様に提出していた。しかし、2台目のPJ-F780は、白インクが使用できるので特殊紙でも高精度で色再現ができると思う」(鈴木氏)
また、水性顔料インクの「PJ-F780」は、UV独特の臭気を発生することなく、作業環境の改善につながることもメリットとして挙げている。
白インクの運用については、現在、マッチング作業を進めており、同社に最適なシステムとしての構築も近いようだ。
また、今後の要望としては、ニスインクのバリエーションの拡充やオフセットインキメーカ毎の色味を再現できるインクジェットインクの開発に期待しているという。
PJ-F780は校正における品質管理の要
「PJ-F780」の導入により、同社の抱えていた課題が解決でき、また、顧客に対しても本製品同等の見本を提示できるようになったことは大きな成果である。その成功の背景には、「PJ-F780」の本格運用に奔走した鈴木氏と小林氏の功績があると古田課長は語る。
「どんなに優れた機械を導入しても、カラーマッチングがうまくいかなければ、デザイナーから評価されない。また、カラーマッチングができても、その運用の仕組みに問題があればデザイナーは納得して使用してくれない。この課題に対し、2人の女性スタッフが中心となって積極的に取り組んでくれたことが本格稼働につながり、また、ここまでの効率化を実現できたはず」
国内パッケージ印刷市場は、ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックなどの国際イベントを控えていることから、多くの需要が期待されている。同社は、デザイン力や印刷技術を駆使し、「創注産業」、つまり注文を自ら創り出し、「創造・貢献・向上」を理念に顧客のビジネスに貢献する企業として今後も展開していく方針だ。
「当社では、印刷の品質管理体制の強化を目的にこれまで多くの設備投資を実施してきた。そのため品質に対するこだわりは、当社の強みといえる。その中でPJ-F780は、デザインや校正の品質管理を担う戦力機と位置付けている」(大鹿社長)
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