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デジタル印刷に求められる品質保証 2018 〜 ジクス 高原亮介社長に聞く

2018年3月31日スペシャリスト

検査工程をパスした「evidence」こそがデジタル印刷に求められる品質保証だ

高原 社長 展示会などで当社が展開しているPOD向けの検査装置「Theory」についての製品説明を行うと、必ずと言っていいほど「デジタル印刷の検査装置でいったい何を検査するのか?」とか「そんな品質(オフセット印刷)で求められた要求にデジタル印刷は対応できるのか?」といった質問がある。このことは「検査」に対する感覚が、オフセット印刷での検査に対するイメージにあること、つまり印刷の検査というものは重箱の隅をつつくようなものであったり、印刷物の種類によっては全数検査ではなくて問題があった場合には印刷予備や加工予備と差し換えれば対応できる...を思わせるものである。デジタル印刷においても、もちろんオフセット印刷の少量対応などの活用方法もあるが、POD機の持つバリアブル印刷市場では同じものは1枚しか印刷しないケースが確実に存在する。そして、そのような1枚しか存在しない印刷物でも全数検査を行い、その検査工程を経たという「evidence」を発行することが重要な意味をもつ。そして、それを実現させながら稼働率を低下させないで品質保証を行うことが、デジタル印刷に求められる理想の品質保証なのである。

工業製品である限り、「検査工程」は必ず通らなければならない

 前述のように、デジタル印刷であっても印刷物が工業製品である以上、検査はもはや必須の工程なので、同じものは1枚しかないフル・バリアブルな印刷物の場合は、1枚1枚目視検品などをしなければならない。しかし、その方法ではPOD機の稼働率は検査工程の速度によって大幅に低下してしまう。
 また人間がこのような検査を行うにはさまざまな問題がある。先般、新幹線の下部台車構造部に亀裂が入り、あわや大事故につながりかねないトラブルがニュースになっていたが、台車を作った製造工場では製造する技術者に「安全」に関する意識がなかったと報道されていた。しかしながら人間は機械に劣るわけではなく、良くトレーニングされていればはるかに機械を凌いだ能力を発揮できる。問題はその意識の違いによって大きなムラが見られることである。
 常に意識の高い教育を実施するのは企業において普遍のテーマであるが、今後印刷業界では検査要員の労働力確保が大きな課題であると言われている。熟達し、意識の高い検査要員がいつでも確保できる保証はない。
 また、目視の検査の場合は、何を基準に何と比較して検査するのか?ということが問題になる。オフセットの少量対応をPODで行っているケースは別にして、多くのケースにおいて多品種・小ロット、またはフル・バリアブルでのデジタル印刷ではデータと比較して検査しなければならない。もはやこの場合人間が対応するというのは不可能であろう。

デジタル印刷市場において検査装置に求められる内容は、コンテンツによってどのようにでも変化する

 よく言われるように、今後、従来は紙媒体の印刷物であったものがウェブサイトなどの電子媒体に代わるものも少なくはないと思われる。またそれに置き換わることで従来の印刷という市場は確かに減少していくだろう。しかし一方、「プリント・オンデマンド」という新しい印刷方式がもたらすフル・バリアブルな生産能力は、まったく新しい印刷市場を創り出す可能性に満ちている。今後デジタル印刷による市場は、そのコンテンツこそが重要になり、それをどう扱うかによってさまざまに変化した市場が現れることになるのは必至だ。
 そして検査によるevidenceが必須である以上、その変化へ柔軟に対応できることがデジタル印刷用検査装置へ求められる条件でもある。

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高原 社長 展示会などで当社が展開しているPOD向けの検査装置「Theory」についての製品説明を行うと、必ずと言っていいほど「デジタル印刷の検査装置でいったい何を検査するのか?」とか「そんな品質(オフセット印刷)で求められた要求にデジタル印刷は対応できるのか?」といった質問がある。このことは「検査」に対する感覚が、オフセット印刷での検査に対するイメージにあること、つまり印刷の検査というものは重箱の隅をつつくようなものであったり、印刷物の種類によっては全数検査ではなくて問題があった場合には印刷予備や加工予備と差し換えれば対応できる...を思わせるものである。デジタル印刷においても、もちろんオフセット印刷の少量対応などの活用方法もあるが、POD機の持つバリアブル印刷市場では同じものは1枚しか印刷しないケースが確実に存在する。そして、そのような1枚しか存在しない印刷物でも全数検査を行い、その検査工程を経たという「evidence」を発行することが重要な意味をもつ。そして、それを実現させながら稼働率を低下させないで品質保証を行うことが、デジタル印刷に求められる理想の品質保証なのである。

工業製品である限り、「検査工程」は必ず通らなければならない

 前述のように、デジタル印刷であっても印刷物が工業製品である以上、検査はもはや必須の工程なので、同じものは1枚しかないフル・バリアブルな印刷物の場合は、1枚1枚目視検品などをしなければならない。しかし、その方法ではPOD機の稼働率は検査工程の速度によって大幅に低下してしまう。
 また人間がこのような検査を行うにはさまざまな問題がある。先般、新幹線の下部台車構造部に亀裂が入り、あわや大事故につながりかねないトラブルがニュースになっていたが、台車を作った製造工場では製造する技術者に「安全」に関する意識がなかったと報道されていた。しかしながら人間は機械に劣るわけではなく、良くトレーニングされていればはるかに機械を凌いだ能力を発揮できる。問題はその意識の違いによって大きなムラが見られることである。
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 また、目視の検査の場合は、何を基準に何と比較して検査するのか?ということが問題になる。オフセットの少量対応をPODで行っているケースは別にして、多くのケースにおいて多品種・小ロット、またはフル・バリアブルでのデジタル印刷ではデータと比較して検査しなければならない。もはやこの場合人間が対応するというのは不可能であろう。

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 そして検査によるevidenceが必須である以上、その変化へ柔軟に対応できることがデジタル印刷用検査装置へ求められる条件でもある。

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