狙いは「ファブリック素材」と「板物」への対応
新たな出力デバイスへの投資の背景には、既設機の老朽化という現実的な理由もあったが、本当に吉田社長が求めたのは、「大判インクジェット出力サービスの事業領域を拡張するためのツール」だった。
「海外の展示会にもよく足を運ぶが、そこで市場の変化として、ファブリックなどのエコ素材への転換とUVプリンタの台頭を感じた。その変化と自社の事業を照らし合わせた結果、『UV機』、なおかつ『スーパーワイドフォーマット』という結論に至った」(吉田社長)
早速、機種選択に乗り出した同社。そこでまず選択ポイントに定めたのが「ファブリック素材」と「板物」への対応である。
現在、ディスプレイの多くがFFシートやターポリンを素材にしたものだが、吉田社長が言うように、海外ではファブリック電飾看板のようなものが主流になりつつある。これは、合成繊維の布地に印刷し、軽量アルミフレームにテンションをかけて裏からLED照明を照らして掲示するサインシステムで、従来のサインと比べて軽量かつコンパクトに折りたたむことができ、施工もユーザー自ら行うことができる。「今後、日本でも主流になる。そうなると幅広のUV機が必要になると考えた」(吉田社長)
一方、板物については、溶剤系プリンタで塩ビフィルムにプリントし、ラミネート加工、さらにパネルにはめ込むというのがこれまでの工程。この工数は「コスト」に跳ね返る。また「脱プラ」という観点からもUVによるダイレクト印刷が望ましい。そこで同社では、ロール/シートのハイブリッド仕様機に照準を定めた。そこで最有力候補として浮上したのが「JETI MIRA」である。
ただ、そこには2つの課題があった。JETI MIRAのロールユニットの印刷可能幅が2.05mまでであった点と、もうひとつはハイブリッド仕様であるためロールユニットの印刷時は板物に同時に印刷はできないという点である。「ロールで3.2m幅を印刷する」、そして「ロール/シートの両方を効率的に運用し、最大のパフォーマンスを継続維持する」。これら条件をクリアする新たな手段としてアグフアから提案されたのがJETI MIRAとANAPURNAの併用だった。「かなり思い切った決断だった」と振り返る吉田社長だが、その裏には、それだけの投資に見合う市場が見えていたということだろう。昨年12月、両機は肩を並べる形で札幌営業所に設置された。
生産性と品質をバランス良く両立
「圧倒的な生産性」に加え、「新たなアプリケーションへの開発意欲を掻き立てるプリンタ」として高い評価を得るJETI MIRA。その代表的な特殊機能が「白インクの厚盛り」と「ニスを使った3Dレンズ印刷」である。もちろんサインズドットコムでも、この「付加価値創造機能」は機種選択を左右する大きな要素となった。
「白インクの厚盛り」は、言うまでもなく、実際のデザインの質感や凹凸感をリアルに表現できる。また、JETI MIRAによる3Dレンズ印刷とは、専用のソフトウェアを使い、視覚効果によって立体的な表現を実現するもの。裏に6色+白を印刷した後、表にクリアニスで小さな球状のレンズを印字することで3D効果を表現できる。吉田社長は、「『従来の仕事+α』の付加価値と独自性にも大きな魅力を感じた。新たなアプリケーションの可能性に投資する価値があると判断した」と振り返る。
一方、運用を通じた両機の評価について吉田社長は、「生産性と品質をバランス良く両立したプリンタ」と表現する。「品質はクライアントからも高く評価されている。グラフィックアーツの世界でアグフアが選ばれる理由が分かった」(吉田社長)
JETI MIRAは、メディア厚50mmまで、解像度1,200dpi、6色(C・M・Y・K・LC・LM)+白+クリアニスの仕様。基本的に板物へのダイレクト印刷を担う。一方、ANAPURNAは、メディア厚45mmまで、解像度1,440dpi、6色(C・M・Y・K・LC・LM)の仕様。主に大型の懸垂幕やターポリン、ファブリックへの印刷を担う。なお、紙素材への印刷は、従来の溶剤系や水性系のプリンタで対応。ラミネート加工がある場合も、UVではインクを盛っている分、エッジにエアーが入ることから溶剤系、水性系プリンタの出番となる。
強みを活かす営業ノウハウを蓄積
今後、「SDGs」を意識した経営に軸足を置いていくという吉田社長。環境素材への対応とダイレクト印刷による脱・塩ビという観点からもUVプリンタの活用を推進していく考えだ。
また、両プリンタの品質と「厚盛り」「3Dレンズ印刷」といった特殊印刷機能を武器に、北海道に限定していた大判インクジェット出力サービスを全国展開していくことも視野に入れている。
「昨今のあらゆる市場で、安いものと付加価値があるものの二分化が見られ、中途半端なものは受け入れられない世の中になっている。品質を含めた両プリンタの付加価値は『高価でも受け入れられるもの』になる。また、インクジェット出力サービスは、これまで資機材販売の従来顧客とバッティングするビジネスだったが、『スーパーフォーマット』という希少性と『付加価値』という独自性をもって、従来顧客の下請け的存在にもなれると考えている」(吉田社長)。
現在、大判インクジェット出力事業は売上全体の10%程度だが、目先の目標として20%程度まで引き上げたいとする吉田社長。今後、サービスの全国展開で市場が確認できれば、本州のどこかにプリンタを設置することも考えている。「その時に向けて、今はその強みを活かせるような営業ノウハウを蓄積する段階にある」とし、それだけに両プリンタのポテンシャルが生み出す営業的な波及効果にも期待がかかっている。
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「海外の展示会にもよく足を運ぶが、そこで市場の変化として、ファブリックなどのエコ素材への転換とUVプリンタの台頭を感じた。その変化と自社の事業を照らし合わせた結果、『UV機』、なおかつ『スーパーワイドフォーマット』という結論に至った」(吉田社長)
早速、機種選択に乗り出した同社。そこでまず選択ポイントに定めたのが「ファブリック素材」と「板物」への対応である。
現在、ディスプレイの多くがFFシートやターポリンを素材にしたものだが、吉田社長が言うように、海外ではファブリック電飾看板のようなものが主流になりつつある。これは、合成繊維の布地に印刷し、軽量アルミフレームにテンションをかけて裏からLED照明を照らして掲示するサインシステムで、従来のサインと比べて軽量かつコンパクトに折りたたむことができ、施工もユーザー自ら行うことができる。「今後、日本でも主流になる。そうなると幅広のUV機が必要になると考えた」(吉田社長)
一方、板物については、溶剤系プリンタで塩ビフィルムにプリントし、ラミネート加工、さらにパネルにはめ込むというのがこれまでの工程。この工数は「コスト」に跳ね返る。また「脱プラ」という観点からもUVによるダイレクト印刷が望ましい。そこで同社では、ロール/シートのハイブリッド仕様機に照準を定めた。そこで最有力候補として浮上したのが「JETI MIRA」である。
ただ、そこには2つの課題があった。JETI MIRAのロールユニットの印刷可能幅が2.05mまでであった点と、もうひとつはハイブリッド仕様であるためロールユニットの印刷時は板物に同時に印刷はできないという点である。「ロールで3.2m幅を印刷する」、そして「ロール/シートの両方を効率的に運用し、最大のパフォーマンスを継続維持する」。これら条件をクリアする新たな手段としてアグフアから提案されたのがJETI MIRAとANAPURNAの併用だった。「かなり思い切った決断だった」と振り返る吉田社長だが、その裏には、それだけの投資に見合う市場が見えていたということだろう。昨年12月、両機は肩を並べる形で札幌営業所に設置された。
生産性と品質をバランス良く両立
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「白インクの厚盛り」は、言うまでもなく、実際のデザインの質感や凹凸感をリアルに表現できる。また、JETI MIRAによる3Dレンズ印刷とは、専用のソフトウェアを使い、視覚効果によって立体的な表現を実現するもの。裏に6色+白を印刷した後、表にクリアニスで小さな球状のレンズを印字することで3D効果を表現できる。吉田社長は、「『従来の仕事+α』の付加価値と独自性にも大きな魅力を感じた。新たなアプリケーションの可能性に投資する価値があると判断した」と振り返る。
一方、運用を通じた両機の評価について吉田社長は、「生産性と品質をバランス良く両立したプリンタ」と表現する。「品質はクライアントからも高く評価されている。グラフィックアーツの世界でアグフアが選ばれる理由が分かった」(吉田社長)
JETI MIRAは、メディア厚50mmまで、解像度1,200dpi、6色(C・M・Y・K・LC・LM)+白+クリアニスの仕様。基本的に板物へのダイレクト印刷を担う。一方、ANAPURNAは、メディア厚45mmまで、解像度1,440dpi、6色(C・M・Y・K・LC・LM)の仕様。主に大型の懸垂幕やターポリン、ファブリックへの印刷を担う。なお、紙素材への印刷は、従来の溶剤系や水性系のプリンタで対応。ラミネート加工がある場合も、UVではインクを盛っている分、エッジにエアーが入ることから溶剤系、水性系プリンタの出番となる。
強みを活かす営業ノウハウを蓄積
今後、「SDGs」を意識した経営に軸足を置いていくという吉田社長。環境素材への対応とダイレクト印刷による脱・塩ビという観点からもUVプリンタの活用を推進していく考えだ。
また、両プリンタの品質と「厚盛り」「3Dレンズ印刷」といった特殊印刷機能を武器に、北海道に限定していた大判インクジェット出力サービスを全国展開していくことも視野に入れている。
「昨今のあらゆる市場で、安いものと付加価値があるものの二分化が見られ、中途半端なものは受け入れられない世の中になっている。品質を含めた両プリンタの付加価値は『高価でも受け入れられるもの』になる。また、インクジェット出力サービスは、これまで資機材販売の従来顧客とバッティングするビジネスだったが、『スーパーフォーマット』という希少性と『付加価値』という独自性をもって、従来顧客の下請け的存在にもなれると考えている」(吉田社長)。
現在、大判インクジェット出力事業は売上全体の10%程度だが、目先の目標として20%程度まで引き上げたいとする吉田社長。今後、サービスの全国展開で市場が確認できれば、本州のどこかにプリンタを設置することも考えている。「その時に向けて、今はその強みを活かせるような営業ノウハウを蓄積する段階にある」とし、それだけに両プリンタのポテンシャルが生み出す営業的な波及効果にも期待がかかっている。
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