オフセットからデジタルへの転換を探る[コダックのインクジェットビジネス戦略]
イーストマンコダック上級副社長 デジタル印刷事業統括 ランディ・バンダグリフ氏
2023年9月11日マーケティングスペシャリスト
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PROSPER ULTRA 520プレス
PROSPER ULTRA 520プレスは、ハイスピードかつ高品質な印刷を可能とする小型で非常にコンパクトなデジタルプレス。通常のドロップ・オン・デマンドのデバイスよりも2倍から3倍速いスピードで印刷が可能で、オフセット印刷と同等の印刷品質(200LPI)を実現。印刷ボリュームでは、A2サイズで約1万3,000枚/時、A4換算で12万1,200枚/時となっている。
機種としては、P520とC520の2つのモデルをラインアップ。P520は、いわゆる塗工紙でない紙に印刷するモデルで、例えばトランザクションペーパーや出版、新聞などの印刷を想定したものだ。一方でC520は、光沢紙に印刷する、いわゆるフルのコマーシャルバージョン。ハイクオリティでハイカバレッジの印刷を想定している。
印刷幅は520m、また印刷スピードは1分当たり最高150m。45〜250g/平方メートルまでの標準的なオフセット印刷用紙に対応している。また、オープンアーキテクチャー設計で、様々なサードパーティーのオプションをインライン接続できる。印刷対象は、雑誌・カタログ・パンフレット・ダイレクトメール・書籍・写真本・カレンダー・トランザクションなど。
オフセットとデジタルのクロスオーバーポイント
それでは、オフセットからデジタルへ転換するメリットはどのような点にあるのか。
まず、要求数量に対して、そこに発生するコストをコントロールできる。またデジタルの場合、ターンアラウンドタイムをかなり短縮することができる。そして、バリアブル印刷も可能なほか、労働力の確保、あるいは印刷基材についてもフレキシブルな対応が可能だ。さらに水性インクを採用していることから、環境にも優しい特性を持っている。
では、オフセットからインクジェットに変換するにあたり、最も有意な転換点はどこなのか。
グラフ1は、ランニングコストに与える影響を、さまざまな要素に分けて分析しているもの。左側が水性インクジェット、右側がB1枚葉UVオフセットで印刷した場合のコスト分析である。
これを見ると、インクおよび印刷用紙の2つの比率が大きいことがわかる。また同時に、オフセットの場合は印刷ヤレおよびプレートを合計すると、28%のランニングコストを占めていることがわかる。
では、どこにクロスオーバーポイントがあるのかを分析するために、グラフ2で印刷数量と比較した場合を見てみよう。縦軸にランニングコスト、横軸に印刷枚数をとっている。また、この表にはEP(エレクトロフォトグラフィー・電子写真方式)を入れている。
これを見ると、PROSPER ULTRA 520プレスのコストに比べて、EPのコストは常に2倍程度であることがわかる。また、印刷枚数が増えると、今度はオフセット印刷の方が、むしろEPよりもコストが安くなることもわかる。そして、PROSPER ULTRA 520プレスは、EPと同等、さらには高い品質であるにもかかわらずコストは安いという位置付けになる。
さらに、インクジェットとオフセットのコストがクロスするところを見てみると、1,500枚から7,000枚ぐらいの間では、オフセットよりもPROSPER ULTRA 520プレスの方が、コスト効率が高いことがわかる。
1ページあたりのインクカバレッジが30%程度、16ページ×16折の冊子印刷を想定した場合、4,500冊(A4片面換算で57万6,000ページ)がオフセット印刷とのクロスオーバーポイントになる。
マーケットトレンド
次に、どのように印刷方式が変わってきているか。5年ごとにその数字を見てみると、デジタル印刷機の売上は増加しているが、アナログ印刷機は一貫して低下していることが分かる。一方、インクジェットは2016年以降、非常に大きく伸び、あらゆる種類の機械の中で最も高い成長率を報告しており、金額の点でも最大のイメージングテクノロジーとなっている。2026年には、インクジェットは印刷機器全体の分野で最大になると予測されている。
次に、ダイレクトメールにおいて、どのようなマーケットトレンドが予想されるか。
まず、印刷において人工知能(AI)が使われるであろう。つまりデータベースから様々なデータが活用され、それに基づいて「何を、どのように印刷するか」が判断されるということになる。
また、印刷の生産において、ロボット技術やスマートテクノロジーが使われることによって生産効率が上がる。これらが「割引要素」となって、例えば郵便料金も、より安い価格で提供されることになるだろう。
また、ダイレクトメールは、よりサステナビリティに注目することになるだろう。従ってリサイクル用紙の利用率が高まり、また、より軽量化された紙が使われることになり、環境に優しい印刷手法が求められることになるだろう。
アーリーアダプタープログラム
PROSPER ULTRA 520プレスは現在、当社のアーリーアダプタープログラムによって米国トップ5に入る印刷会社にすでに設置が完了しており、初期の印刷物生産を開始した段階にある。
この印刷会社は、コマーシャルグラフィックスのお客様で、カレンダー、ダイレクトメール、フォトブックなど、さまざまなアプリケーションにこのPROSPER ULTRA 520プレスを使用する予定だ。
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イーストマンコダック上級副社長 デジタル印刷事業統括 ランディ・バンダグリフ氏
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PROSPER ULTRA 520プレス
PROSPER ULTRA 520プレスは、ハイスピードかつ高品質な印刷を可能とする小型で非常にコンパクトなデジタルプレス。通常のドロップ・オン・デマンドのデバイスよりも2倍から3倍速いスピードで印刷が可能で、オフセット印刷と同等の印刷品質(200LPI)を実現。印刷ボリュームでは、A2サイズで約1万3,000枚/時、A4換算で12万1,200枚/時となっている。
機種としては、P520とC520の2つのモデルをラインアップ。P520は、いわゆる塗工紙でない紙に印刷するモデルで、例えばトランザクションペーパーや出版、新聞などの印刷を想定したものだ。一方でC520は、光沢紙に印刷する、いわゆるフルのコマーシャルバージョン。ハイクオリティでハイカバレッジの印刷を想定している。
印刷幅は520m、また印刷スピードは1分当たり最高150m。45〜250g/平方メートルまでの標準的なオフセット印刷用紙に対応している。また、オープンアーキテクチャー設計で、様々なサードパーティーのオプションをインライン接続できる。印刷対象は、雑誌・カタログ・パンフレット・ダイレクトメール・書籍・写真本・カレンダー・トランザクションなど。
オフセットとデジタルのクロスオーバーポイント
それでは、オフセットからデジタルへ転換するメリットはどのような点にあるのか。
まず、要求数量に対して、そこに発生するコストをコントロールできる。またデジタルの場合、ターンアラウンドタイムをかなり短縮することができる。そして、バリアブル印刷も可能なほか、労働力の確保、あるいは印刷基材についてもフレキシブルな対応が可能だ。さらに水性インクを採用していることから、環境にも優しい特性を持っている。
では、オフセットからインクジェットに変換するにあたり、最も有意な転換点はどこなのか。
グラフ1は、ランニングコストに与える影響を、さまざまな要素に分けて分析しているもの。左側が水性インクジェット、右側がB1枚葉UVオフセットで印刷した場合のコスト分析である。
これを見ると、インクおよび印刷用紙の2つの比率が大きいことがわかる。また同時に、オフセットの場合は印刷ヤレおよびプレートを合計すると、28%のランニングコストを占めていることがわかる。
では、どこにクロスオーバーポイントがあるのかを分析するために、グラフ2で印刷数量と比較した場合を見てみよう。縦軸にランニングコスト、横軸に印刷枚数をとっている。また、この表にはEP(エレクトロフォトグラフィー・電子写真方式)を入れている。
これを見ると、PROSPER ULTRA 520プレスのコストに比べて、EPのコストは常に2倍程度であることがわかる。また、印刷枚数が増えると、今度はオフセット印刷の方が、むしろEPよりもコストが安くなることもわかる。そして、PROSPER ULTRA 520プレスは、EPと同等、さらには高い品質であるにもかかわらずコストは安いという位置付けになる。
さらに、インクジェットとオフセットのコストがクロスするところを見てみると、1,500枚から7,000枚ぐらいの間では、オフセットよりもPROSPER ULTRA 520プレスの方が、コスト効率が高いことがわかる。
1ページあたりのインクカバレッジが30%程度、16ページ×16折の冊子印刷を想定した場合、4,500冊(A4片面換算で57万6,000ページ)がオフセット印刷とのクロスオーバーポイントになる。
マーケットトレンド
次に、どのように印刷方式が変わってきているか。5年ごとにその数字を見てみると、デジタル印刷機の売上は増加しているが、アナログ印刷機は一貫して低下していることが分かる。一方、インクジェットは2016年以降、非常に大きく伸び、あらゆる種類の機械の中で最も高い成長率を報告しており、金額の点でも最大のイメージングテクノロジーとなっている。2026年には、インクジェットは印刷機器全体の分野で最大になると予測されている。
次に、ダイレクトメールにおいて、どのようなマーケットトレンドが予想されるか。
まず、印刷において人工知能(AI)が使われるであろう。つまりデータベースから様々なデータが活用され、それに基づいて「何を、どのように印刷するか」が判断されるということになる。
また、印刷の生産において、ロボット技術やスマートテクノロジーが使われることによって生産効率が上がる。これらが「割引要素」となって、例えば郵便料金も、より安い価格で提供されることになるだろう。
また、ダイレクトメールは、よりサステナビリティに注目することになるだろう。従ってリサイクル用紙の利用率が高まり、また、より軽量化された紙が使われることになり、環境に優しい印刷手法が求められることになるだろう。
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