オフセットからデジタルへの転換を探る[コダックのインクジェットビジネス戦略]
イーストマンコダック上級副社長 デジタル印刷事業統括 ランディ・バンダグリフ氏
2023年9月11日マーケティングスペシャリスト
コダックジャパンは8月23日、販売店およびユーザー向けのオンラインイベント「コダック グローバルビジョンセミナー2023」を開催。その中で、イーストマンコダック上級副社長でデジタル印刷事業統括のランディ・バンダグリフ氏が「コダックのインクジェットビジネス戦略〜オフセットからデジタルへの転換を探る」と題して講演を行った。今回、その要旨を紙上で紹介する。
コダック社は、インクジェット技術におけるイノベーションを50年以上にわたって繰り返してきた会社として長い歴史を誇る。時系列で見ると、第1世代から第4世代に分けられ、第3世代がPROSPER6000/7000プレス、第4世代が高品質でハイスピードの「PROSPER ULTRA 520プレス」になる。
コダック社のPROSPERシステムのコア技術となっているのが独自のコンティニュアスプリントヘッド技術。この技術では、およそ1秒あたり40万個の液滴を生成することが可能で、このスピードだけを取っても他社製品と比べて5倍から10倍の優位性があり、印刷スピード、すなわち生産性の差に直結する。
ULTRASTREAM技術
コンティニュアス方式は、均等に配列されたノズルから加圧し、コンティニュアスインクジェットノズルで常に一定した液流を形成。その液流が熱エネルギーの刺激を受けてインク液滴に分裂し、用紙方向あるいは再循環用のガターに向かって進むというもの。常にインクがノズルから吐出されているため、ノズルの乾きを想定した保湿剤も極めて少量であることから、インクコストが安価で、印刷物の乾燥性が高く、インクカバレッジが大きい仕事への対応、あるいは用紙多様性というメリットをもたらす。
このコンティニュアス方式でも、前世代のSTREAM技術と第4世代のULTRASTREAM技術とでは、ドロップを生成するテクノロジーは同様であるものの、制御方法が異なる。
STREAM技術は、大小のドロップを均一に落とし、小さいドロップを風で飛ばして再循環用に回収し、大きなドロップを落としてイメージを形成する。これに対し、第4世代となるULTRASTREAMはその逆。大きいドロップに電荷をチャージして抜き取り、小さいドロップを落としてイメージを形成する。この技術により、インクサイズはSTREAMのおよそ1/3になり、粒状性のある高解像度の品質を実現できるわけだ。このULTRASTREAM技術の開発においては、700を超える特許を取得しており、サステナブルで非常に優位な競争力を持っている。
この高い印刷品質をプロダクションスピードで維持できるのが特徴。つまり、品質のためにスピードを落とす必要がないということ。高い生産性を維持したままオフセットクラスの印刷品質を提供でき、さらには光沢紙に対しても水性インクを使って1分あたり150mの速度で印刷することができる。
KODACHROMEインク
一方、コダック社ではULTRASTREAMコンティニュアスインクジェットテクノロジーを使用した印刷機で高い演色性、画像の安定性およびディテールを実現する「KODACHROMEインク」を開発した。
このインクは、独自の顔料マイクロミリングプロセスにより、さまざまな基材上で優れた彩度と濃度を再現。このプロセスにより通常50ナノメートル未満という非常に細かく分散された顔料粒子の製造が可能になることで、インクの乾燥時間が短縮され、乾燥したインク層は非常に薄くなる。このインク技術によって、非常に広い色域を再現でき、PANTONEのカラー再現についても、追加3色を添加する必要がない。そしてこのインクをPROSPER ULTRA 520プレスで印刷した場合、SWOP(オフ輪)よりも95%大きい色域体積を持ち、GRACoL(枚葉オフセット)よりも39%広い色域を再現できる。
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コダック社は、インクジェット技術におけるイノベーションを50年以上にわたって繰り返してきた会社として長い歴史を誇る。時系列で見ると、第1世代から第4世代に分けられ、第3世代がPROSPER6000/7000プレス、第4世代が高品質でハイスピードの「PROSPER ULTRA 520プレス」になる。
コダック社のPROSPERシステムのコア技術となっているのが独自のコンティニュアスプリントヘッド技術。この技術では、およそ1秒あたり40万個の液滴を生成することが可能で、このスピードだけを取っても他社製品と比べて5倍から10倍の優位性があり、印刷スピード、すなわち生産性の差に直結する。
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この高い印刷品質をプロダクションスピードで維持できるのが特徴。つまり、品質のためにスピードを落とす必要がないということ。高い生産性を維持したままオフセットクラスの印刷品質を提供でき、さらには光沢紙に対しても水性インクを使って1分あたり150mの速度で印刷することができる。
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