第一印刷所、商業印刷分野におけるJet Pressの活用効果
枚葉オフ機の生産性20%向上 〜「全体最適」と「付加価値追求」が鍵
2017年9月15日ケーススタディ
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(株)第一印刷所(本社/新潟県新潟市中央区和合町2-4-18、堀一社長)が導入した富士フイルムのB2インクジェットデジタル印刷機「Jet Press 720S」が導入効果を挙げている。同社グループでは、第7次中期経営計画の最終年度となる今年を「デジタル印刷元年」と位置付け、同機導入で商業印刷物をターゲットとした多品種小ロット化への対応を強化している。そこで今回、9月5日に富士フイルムデジタルプレス(株)主催で開催された「Power of Inkjet Session 2017」の第一印刷所・代表取締役専務の小出博信氏による講演から、Jet Pressの活用状況や導入効果を紹介する。
同社グループ「D'sNET」では、さまざまな機能を持つ企業の連携による一貫生産体制を目指し、POD機「Color 1000 iPress」を導入するなど計画的な設備投資を実施してきた。そして、第7次中期経営計画の最終年度となる今年を「デジタル印刷元年」と位置付け、商業印刷物をターゲットとした多品種小ロット化への対応を強化するため「Jet Press 720S」を導入。4月5日に始動式が執り行われ、本稼働に入った。
生産性向上と高付加価値化
同社では、市場環境の変化として「汎用から多様化へ」「印刷物から電子化へ」「人口減が進むローカル環境」の3点を捉え、とくに「今後10年の新潟のGDPはマイナス7〜8%と言われている。ローカルには非常に厳しいマーケット事情がある」(小出専務)と指摘する。結果、印刷物の小ロット・短納期・高付加価値が進み、これら変化から生まれるクライアントの困り事を解決する必要があると考え、そのひとつの策としてデジタル印刷機導入の検討に入ったという。
そこで同社がデジタル印刷機に求めたスペックは、「オフセット印刷機と同等の印刷品質」「オフセット印刷機と同等の用紙・サイズ適正(薄紙・両面印刷)」「変動のない印刷品質」の3点。「はたしてこれらの要件をすべて満たすデジタル印刷機が存在するのか」という中で訪れたのが、drupa2016での「ブレークスルー」だ。
「drupa2016でのインクジェットデジタル印刷機の品質と性能向上はめざましく、従来の懸案事項を解消し、実運用できるレベルまで到達できると判断した。とくにJetPress720SのSAMBAヘッドを核としたインクジェットテクノロジーの完成度に着目。事前テスト評価で当社が求める要件を満たすことを確認し、導入を決定した」(小出専務)
そこで、導入効果を考えた時に、まず生産性の向上がある。小ロット物件の生産性が向上することはもちろんだが、既存オフセット印刷機側ではロットの増加、色合わせでのボトルネックジョブの削減、本機校正作業の削減などによって生産性が向上。同社では高色域技術をベースにJetPress720Sによる本紙校正への切り替えを推進している。
さらに、デジタル印刷機が創造する「価値」を「スマートプリント」「おもてなしプリント」としてブランディングすることで、新需要開拓に乗り出している。
【スマートプリント】
メディアプロダクトメーカー・ソリューションプロバイダーとしての役割を発揮。JetPress720Sの高い印刷再現性と刷版レスによる革新的な小ロット適性を最大限に活用して顧客の課題解決型の製品提供を目指す。
▽フルデジタルフローによる短納期対応
▽制作部数の最適化による在庫削減
▽試作品製造やテストマーケティング支援
▽データベースを活用したOne to One印刷物の制作
【おもてなしプリント】
JetPress720Sの変動のない印刷品質と高色域および小ロット適性を活かし、利用者に配慮した印刷物、感性に訴える高付加価値ツールの提供を目指す。
▽インバウンド需要に向けた多言語対応
▽ユニバーサルデザイン
▽高色域を活かした高彩度印刷年間印刷実績200万枚も視野に
現在のJetPress720Sの印刷実績は、計画していた年間印刷枚数100万枚を大幅に超え、ほぼ倍の印刷実績が見込める状況になっているという。そこには商業印刷分野の小ロット需要に加え、新しいマーケットの需要が含まれている。
同社では、Jet Press導入に際して「刷版1万2,000版削減」「従来印刷機の生産性20%向上」「超勤時間30%削減」という目標を掲げている。
生産性の向上という部分では、実際には1,000枚以下の小ロット印刷作業をJet Pressに割り振ったことで、片面4色機比で63.7%向上し、予備紙も69.7%削減に成功している。
さらに、オフセット枚葉印刷機でのカラー印刷においては、ロットが14.2%向上したことにより、生産性が目標通り20%向上し、予備紙も7.7%削減されている。
これにより、枚葉カラー印刷工程においては加工高が13.3%増加。かつ資材および原材料費が削減されたことにより、時間当たりの粗利益が11.3%向上している。また、超勤時間においても44.6%減と目標を大きく上回る成果を達成している(平成27年2月〜7月の、6ヵ月間の生産実績から算出)。
同社では今後、「全体最適」と「付加価値の追求」が鍵になるとしている。
オンデマンドブック事業では、Jet Pressとバリアブル製本システムが高度に連携するシステムを構築し、さらなる全体最適化を推進する。また、加飾による新たな価値の提供にも注力し、Jet Pressの小ロット適性と様々な加飾機との組み合わせを試行し、プリントメディアの新たな価値を創出していく方針を打ち出している。
最後に小出専務は、「いまやるべきことをやらないと機会損失を被るだけだ。マーケットは必ずある」と述べて講演を締めくくった。
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同社グループ「D'sNET」では、さまざまな機能を持つ企業の連携による一貫生産体制を目指し、POD機「Color 1000 iPress」を導入するなど計画的な設備投資を実施してきた。そして、第7次中期経営計画の最終年度となる今年を「デジタル印刷元年」と位置付け、商業印刷物をターゲットとした多品種小ロット化への対応を強化するため「Jet Press 720S」を導入。4月5日に始動式が執り行われ、本稼働に入った。
生産性向上と高付加価値化
同社では、市場環境の変化として「汎用から多様化へ」「印刷物から電子化へ」「人口減が進むローカル環境」の3点を捉え、とくに「今後10年の新潟のGDPはマイナス7〜8%と言われている。ローカルには非常に厳しいマーケット事情がある」(小出専務)と指摘する。結果、印刷物の小ロット・短納期・高付加価値が進み、これら変化から生まれるクライアントの困り事を解決する必要があると考え、そのひとつの策としてデジタル印刷機導入の検討に入ったという。
そこで同社がデジタル印刷機に求めたスペックは、「オフセット印刷機と同等の印刷品質」「オフセット印刷機と同等の用紙・サイズ適正(薄紙・両面印刷)」「変動のない印刷品質」の3点。「はたしてこれらの要件をすべて満たすデジタル印刷機が存在するのか」という中で訪れたのが、drupa2016での「ブレークスルー」だ。
「drupa2016でのインクジェットデジタル印刷機の品質と性能向上はめざましく、従来の懸案事項を解消し、実運用できるレベルまで到達できると判断した。とくにJetPress720SのSAMBAヘッドを核としたインクジェットテクノロジーの完成度に着目。事前テスト評価で当社が求める要件を満たすことを確認し、導入を決定した」(小出専務)
そこで、導入効果を考えた時に、まず生産性の向上がある。小ロット物件の生産性が向上することはもちろんだが、既存オフセット印刷機側ではロットの増加、色合わせでのボトルネックジョブの削減、本機校正作業の削減などによって生産性が向上。同社では高色域技術をベースにJetPress720Sによる本紙校正への切り替えを推進している。
さらに、デジタル印刷機が創造する「価値」を「スマートプリント」「おもてなしプリント」としてブランディングすることで、新需要開拓に乗り出している。
【スマートプリント】
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▽フルデジタルフローによる短納期対応
▽制作部数の最適化による在庫削減
▽試作品製造やテストマーケティング支援
▽データベースを活用したOne to One印刷物の制作
【おもてなしプリント】
JetPress720Sの変動のない印刷品質と高色域および小ロット適性を活かし、利用者に配慮した印刷物、感性に訴える高付加価値ツールの提供を目指す。
▽インバウンド需要に向けた多言語対応
▽ユニバーサルデザイン
▽高色域を活かした高彩度印刷
年間印刷実績200万枚も視野に
現在のJetPress720Sの印刷実績は、計画していた年間印刷枚数100万枚を大幅に超え、ほぼ倍の印刷実績が見込める状況になっているという。そこには商業印刷分野の小ロット需要に加え、新しいマーケットの需要が含まれている。
同社では、Jet Press導入に際して「刷版1万2,000版削減」「従来印刷機の生産性20%向上」「超勤時間30%削減」という目標を掲げている。
生産性の向上という部分では、実際には1,000枚以下の小ロット印刷作業をJet Pressに割り振ったことで、片面4色機比で63.7%向上し、予備紙も69.7%削減に成功している。
さらに、オフセット枚葉印刷機でのカラー印刷においては、ロットが14.2%向上したことにより、生産性が目標通り20%向上し、予備紙も7.7%削減されている。
これにより、枚葉カラー印刷工程においては加工高が13.3%増加。かつ資材および原材料費が削減されたことにより、時間当たりの粗利益が11.3%向上している。また、超勤時間においても44.6%減と目標を大きく上回る成果を達成している(平成27年2月〜7月の、6ヵ月間の生産実績から算出)。
同社では今後、「全体最適」と「付加価値の追求」が鍵になるとしている。
オンデマンドブック事業では、Jet Pressとバリアブル製本システムが高度に連携するシステムを構築し、さらなる全体最適化を推進する。また、加飾による新たな価値の提供にも注力し、Jet Pressの小ロット適性と様々な加飾機との組み合わせを試行し、プリントメディアの新たな価値を創出していく方針を打ち出している。
最後に小出専務は、「いまやるべきことをやらないと機会損失を被るだけだ。マーケットは必ずある」と述べて講演を締めくくった。
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