昨今の消費指向の多様化を背景とする多品種小ロット化は、もはや後戻りができないムーブメントとなり、生産者側もこの動きに対応することが必須であることに、疑いの余地はない。一般商業印刷や出版印刷分野では、インクジェット方式、あるいは電子写真方式による様々なデジタル印刷機が導入され、多品種小ロット・短納期といった市場ニーズに対応した生産が本格化している。一方、軟包装印刷を手がけるグラビア印刷の現場は、従来のグラビア機を主軸に、オペレータの絶え間ない作業改善によって生産を維持しているのが実態で「紙」に対するデジタル印刷と比べ、「フイルム基材」への生産は、極わずかに留まっている。この様な状況の中、今年10月、富士フイルムデジタルプレス(株)(FFDP)が、発売を開始したのが軟包装用途向けUVインクジェットデジタルプレス「Jet Press 540WV」だ。今回、同社・営業部第3グループ担当部長の菅沼敦氏に、導入事例を踏まえ「Jet Press 540WV」がグラビア印刷業界にもたらす効果などについて聞いた。
「Jet Press 540WV」は、富士フイルム独自の画像形成技術「EUCON Technology(ユーコンテクノロジー)」を搭載した、裏刷り・ラミネート有りの軟包装用途向けに開発されたUVインクジェットデジタルプレス。印刷スピードは、50m/分で解像度は600×600dpi。色数はCMYK+白の5色。使用できる基材は、OPP、PETやNYなどで基材幅は580mmから300mmまで対応する。さらにLED-UV硬化による乾燥方式のため、熱による基材への影響や電力消費量を抑制する。
同機の最大の特徴である「EUCON Technology」について菅沼氏は、「新開発のUVインク『Uvijet』とプラスチックフイルム基材面上でのインクにじみを防止する『下塗り技術』、UVインク特有の臭気を大幅に低減する『窒素パージ技術』から成り立っている」と説明する。
臭気低減やインクのにじみを抑える新技術
「Uvijet」は、従来のグラビアインキに近い濃度域を持ち、鮮やかで美しい発色が得られる、加熱処理に耐えられる、さらに、再現安定性に優れていることが特長。フイルム系基材に対して高い密着性を発揮し、ラミネート後に画像部を加熱した場合でも、インクの剥離や溶融などが発生することがない。このため、製袋の際のヒートシール加工や高温での殺菌処理を行う食品のパッケージなどでも、高い仕上がり品質を実現する。
「下塗り技術」は、プラスチック系素材のような非吸収体の基材に対して、にじみが発生することなく、確実にインクを着弾させるために、新たに開発した「プレコート液」を下塗りした後に、CMYKWの各色インクを吐出することで定着性を高め、にじみのないクリアな画像再現が可能となる。
一般的にUVインクは、ノンVOCで速乾性に優れ、多様な種類の基材に対応できるなどの優れた特徴があるが、印刷後に臭気が残るという課題があった。これは、紫外線硬化の際、空気中の酸素が硬化反応を阻害し、微量のモノマーが未反応のまま残留するために起こる現象。その問題を解決するために開発されたのが「窒素パージ技術」で、具体的には、高速搬送される基材の表面を瞬時に窒素ガスで満たすもの。これにより酸素を完全にシャットアウトして反応効率を高め、未反応なモノマーを削減し、臭気を劇的に低減することを可能とした。
「従来のUVインクでは、どうしても臭気が発生してしまうため、主に食品包材に使われる軟包装材用途としては敬遠される傾向にあった。この問題を解決するために開発されたのが、EUCON Technologyを搭載したJet Press 540WVである」(菅沼氏)
さらに、同機に使用されるインクは、印刷インキ工業連合会が制定した食品包装用インキの自主規制「NLマーク」を取得。これにより業界の基準にそった安心と安全性を示すことができるようになった。
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「Jet Press 540WV」は、富士フイルム独自の画像形成技術「EUCON Technology(ユーコンテクノロジー)」を搭載した、裏刷り・ラミネート有りの軟包装用途向けに開発されたUVインクジェットデジタルプレス。印刷スピードは、50m/分で解像度は600×600dpi。色数はCMYK+白の5色。使用できる基材は、OPP、PETやNYなどで基材幅は580mmから300mmまで対応する。さらにLED-UV硬化による乾燥方式のため、熱による基材への影響や電力消費量を抑制する。
同機の最大の特徴である「EUCON Technology」について菅沼氏は、「新開発のUVインク『Uvijet』とプラスチックフイルム基材面上でのインクにじみを防止する『下塗り技術』、UVインク特有の臭気を大幅に低減する『窒素パージ技術』から成り立っている」と説明する。
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