KADOKAWAの出版DX
日本国内では2012年、講談社がHP PageWide Web Pressを導入するとともに後加工システムをインライン接続し、書籍の印刷から製本までの一連の工程をワンストップで生産できるラインを構築したことが大きな話題となったが、2016年には、さらに国内出版社の1社が、導入に名乗りをあげている。それはKADOKAWAだ。
田口氏は、drupa2016において、HP PageWide Web Pressを組み入れたフルデジタル書籍生産システム導入を発表し、すでに稼働を開始しているKADOKAWAの出版DX事例として「ロウソクの科学」の重版印刷で説明する。
2019年にノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏は、受賞後のインタビューで自身が化学への興味をもった原点として小学校時代に愛読した書籍「ロウソクの科学」を紹介した。この発言を受け、KADOKAWAに同書への問い合わせが殺到するなど市場が過敏に反応した。そのためKADOKAWAは急遽、重版を決定。その生産機としてHP PageWide Web Pressが活用された。
2営業日で重版2万部を実現
具体的なタイムスケジュールとしては、吉野氏の「ロウソクの科学」が原点とのコメントから翌10日にKADOKAWA内にSlackを活用して対策本部チャネルを立ち上げ、協議を開始。同日には、緊急重版2万部の生産を開始するとともにプレスリリース配信やSNS等を活用したプロモーションを展開。そして10月15日には、書店への発送を完了している。土日祝日(10月12・13・14日)の3連休を挟んでいることから、実際には2営業日という短い期間で印刷・発送を実現している。
その後は、販売数の進捗を見据えながら小刻みに重版を重ね、2019年12月時点で14万部の重版となった。
「この事例は、単純な短納期対応ではなく、吉野氏の発言から数日で本を仕上げ、書店に置くことができたこと。つまりトレンドとなっている時期を外すことなく店頭に置くことで、書籍の販売部数にも貢献できる。これが2週間後や3週間後であれば、市場が一番反応した時期を逃してしまうので販売部数にも影響を及ぼしていたかもしれない。また、一気に大量生産する重版ではなく、販売部数の動向を注視しながら追加生産することで、在庫などの問題も解消できている」
市場トレンドに迅速に対応できる機動力
オフセット印刷機には、枚葉機と輪転機があり、今も全世界で稼働している設備である。田口氏は、改めてオフセット印刷機とデジタル印刷機のメリット・デメリットについて「大量ロットの同一絵柄印刷については、オフセット輪転機の方が圧倒的なコストメリットを提供できる生産機だと認識している」と、生産性におけるオフセット輪転機の優位性を語る一方で、デジタル印刷機の優位性として市場トレンドへの柔軟かつ迅速な対応力を挙げる。
「市場トレンドへの迅速な対応、またブランドオーナー側の意向、具体的には、ターゲットを絞った顧客へのアプローチなど日々変化するニーズに柔軟に対応できるのは、デジタル印刷機である。もちろんファーストステップとして、多くの消費者に同一内容の情報を盛り込んだ印刷物を配布し、認知度を高めていくこともマーケティングとして重要なことであり、その分野では、オフセット印刷機が優位性をもっている。つまり、すべてがオフセット、あるいはデジタルという考え方ではなく、より効果的なマーケティングを行うには、その目的とフェーズによって、どちらが適しているのかを見極めていくことが大切である」
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田口氏は、drupa2016において、HP PageWide Web Pressを組み入れたフルデジタル書籍生産システム導入を発表し、すでに稼働を開始しているKADOKAWAの出版DX事例として「ロウソクの科学」の重版印刷で説明する。
2019年にノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏は、受賞後のインタビューで自身が化学への興味をもった原点として小学校時代に愛読した書籍「ロウソクの科学」を紹介した。この発言を受け、KADOKAWAに同書への問い合わせが殺到するなど市場が過敏に反応した。そのためKADOKAWAは急遽、重版を決定。その生産機としてHP PageWide Web Pressが活用された。
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