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コームラ、オールデジタル印刷化で業績V字回復 - FFGS「最適生産ソリューション」先行事例

付加価値経営で「余力」創出〜スキルレス化で品質安定担保

2022年3月29日企業・経営

ドラスティックな営業・生産改革

 コームラが、「付加価値経営」に大きく舵を切ったのもおよそ10年前。売上が減少する危機感の中で「セルフマネージメントの強化」「営業プロセス管理の徹底」「付加価値重点営業」という3つの重点施策を掲げ、当時専務だった鴻村社長主導のもとで営業改革が遂行された。

 一方、生産改革ではオフセット印刷からオンデマンド印刷(POD)へのシフトを試みた。その理由について鴻村社長は「当社には職人といえる人材がいなかったため、オフセット印刷でのクレームが多かった。その解決策としてPODへと大きく舵を切った」と説明する。

 2014年の社長就任を機に、印刷工程のデジタル印刷化推進を宣言した鴻村社長。単なるデジタル化ではなく、変革の根拠を定量的に示すことを重視し、オフセット印刷では刷版代・丁合い作業人件費・損紙などの目に見える範囲での原価、PODではカウンター代・トナー代・保守料金などの原価をジョブ単位で比較検証した上で、移行可能な案件の洗い出しから始めた。結果、出力機自体の生産品質・能力向上と様々なメディアへの対応が進むのと比例する形でプリントボリュームも増加。PODの守備範囲を1,000部程度にまで引き上げることで順調に移行は進んだという。

 話は少し戻るが、同社は1997年に岐阜県1号機となる「ドキュテック135」を導入している。「当時はまだ印刷品質はもちろん、波打ちの問題などもあって苦労を強いられた」と当時を振り返る鴻村社長。その翌年の1998年に「ドキュメントサービスフォーラム」(旧富士ゼロックスのユーザー会)でアメリカの印刷会社を視察した際、フルデジタル印刷によるビジネスモデルの可能性を感じ取ったという。

 それから約20年が経過した2019年、フルデジタル印刷化に踏み切った。その決断を後押ししたのがプロダクションプリンター「Iridesse Production Press」の登場だったという。

 「Iridesseの品質ならばPODの域を越えたプロフェッショナルなプリントと言える。この品質ならばオフセット印刷は必要ないと判断した」と鴻村社長。カラー機1台、モノクロ機2台の増設を機にオフセット印刷機を全廃し、現在は、カラー機3台、モノクロ機9台、計12台が稼働している。

カラー機3台(上)とモノクロ機9台(下)、計12台のPOD機が稼働

カラー機3台(上)とモノクロ機9台(下)、計12台のPOD機が稼働

 「オールデジタル」による生産環境のメリットについて、鴻村社長は次のように語っている。

 「まず刷版、丁合、色合わせの工程を省略できる。また面付け工程でも、オフセットとPODの2パターンを考慮する必要がなく、しかも富士フイルムBIのソフトウェア『FreeFlow Core』を使って面付け作業を自動化できる。さらにオフセットは1台に1人だが、PODは4台を1人で稼働できる。さらにもっと細かな話をすると、紙のサイズや種類を考える手間が省け、発注業務を簡略化できる」

 これらがすべて「付加価値」になると考えれば、その効果は容易に想像できるだろう。鴻村社長自身も「利益率の向上は予想以上だった」と振り返る。

 これらドラスティックな営業・生産改革が同社の業績をV字回復へと導いた。新型コロナの影響で10期連続の増収は叶わなかったものの、印刷需要が低迷する中で加工高53%、営業利益率5%以上を弾き出すなど、着実に成長するとともに骨太の経営基盤構築を達成している。今後はさらなる自動化を進めるべく、自動スケジューリングを目的に、富士フイルムBIの印刷工程管理システム「Production Cockpit」の検証にも乗り出している。

「FreeFlow Core」で面付け作業を自動化

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ドラスティックな営業・生産改革

 コームラが、「付加価値経営」に大きく舵を切ったのもおよそ10年前。売上が減少する危機感の中で「セルフマネージメントの強化」「営業プロセス管理の徹底」「付加価値重点営業」という3つの重点施策を掲げ、当時専務だった鴻村社長主導のもとで営業改革が遂行された。

 一方、生産改革ではオフセット印刷からオンデマンド印刷(POD)へのシフトを試みた。その理由について鴻村社長は「当社には職人といえる人材がいなかったため、オフセット印刷でのクレームが多かった。その解決策としてPODへと大きく舵を切った」と説明する。

 2014年の社長就任を機に、印刷工程のデジタル印刷化推進を宣言した鴻村社長。単なるデジタル化ではなく、変革の根拠を定量的に示すことを重視し、オフセット印刷では刷版代・丁合い作業人件費・損紙などの目に見える範囲での原価、PODではカウンター代・トナー代・保守料金などの原価をジョブ単位で比較検証した上で、移行可能な案件の洗い出しから始めた。結果、出力機自体の生産品質・能力向上と様々なメディアへの対応が進むのと比例する形でプリントボリュームも増加。PODの守備範囲を1,000部程度にまで引き上げることで順調に移行は進んだという。

 話は少し戻るが、同社は1997年に岐阜県1号機となる「ドキュテック135」を導入している。「当時はまだ印刷品質はもちろん、波打ちの問題などもあって苦労を強いられた」と当時を振り返る鴻村社長。その翌年の1998年に「ドキュメントサービスフォーラム」(旧富士ゼロックスのユーザー会)でアメリカの印刷会社を視察した際、フルデジタル印刷によるビジネスモデルの可能性を感じ取ったという。

 それから約20年が経過した2019年、フルデジタル印刷化に踏み切った。その決断を後押ししたのがプロダクションプリンター「Iridesse Production Press」の登場だったという。

 「Iridesseの品質ならばPODの域を越えたプロフェッショナルなプリントと言える。この品質ならばオフセット印刷は必要ないと判断した」と鴻村社長。カラー機1台、モノクロ機2台の増設を機にオフセット印刷機を全廃し、現在は、カラー機3台、モノクロ機9台、計12台が稼働している。

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 「オールデジタル」による生産環境のメリットについて、鴻村社長は次のように語っている。

 「まず刷版、丁合、色合わせの工程を省略できる。また面付け工程でも、オフセットとPODの2パターンを考慮する必要がなく、しかも富士フイルムBIのソフトウェア『FreeFlow Core』を使って面付け作業を自動化できる。さらにオフセットは1台に1人だが、PODは4台を1人で稼働できる。さらにもっと細かな話をすると、紙のサイズや種類を考える手間が省け、発注業務を簡略化できる」

 これらがすべて「付加価値」になると考えれば、その効果は容易に想像できるだろう。鴻村社長自身も「利益率の向上は予想以上だった」と振り返る。

 これらドラスティックな営業・生産改革が同社の業績をV字回復へと導いた。新型コロナの影響で10期連続の増収は叶わなかったものの、印刷需要が低迷する中で加工高53%、営業利益率5%以上を弾き出すなど、着実に成長するとともに骨太の経営基盤構築を達成している。今後はさらなる自動化を進めるべく、自動スケジューリングを目的に、富士フイルムBIの印刷工程管理システム「Production Cockpit」の検証にも乗り出している。

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