投資回収試算で旧富士ゼロックスと協業
一方、フルデジタル印刷による生産環境は、雇用面でも有利に働いているようだ。
「当社はオフセットの職人を教育するのではなく、デジタル印刷のスキルレス化によって品質の安定を確保した。逆に言えば、人材の確保が容易になったと言える。人手不足が叫ばれる中でこれは大きなメリットであり、専門職を雇用する必要がないため、人件費抑制の効果もある。現在は多能工化も進めており、製本現場のスタッフでもPOD機を稼働できるようになっている」(鴻村社長)
このように、工程の無駄を省き、PODで利益率の高い生産体制を構築した同社。その過程において「運用にかかるコストをトータルで洗い出し、投資回収を試算する」という部分で、旧富士ゼロックスとの協業があった。
当時を知る鈴木部長は「オフセット印刷とデジタル印刷とを共存させた生産環境、あるいは特定ジョブをデジタルに移行し、運用の最適化が進んだ環境が、会社経営にもたらすメリットについて、当時我々は断片的にしか理解できていなかった。しかし、ここでの協業が『投資の原資を抽出し、利益を産み出すメカニズを解明する』という視点を生み、その答えが『足元の改善』にあるということに辿り着いた。このコームラ様との協業が、現在我々が提案する『最適生産ソリューション』のベースになっている」と説明する。
「コームラ様では2014年から本格的なオフセット印刷機とPODの共存運用を初め、定期モニタリングを通じて常に最適運用環境の維持改善を追求してきた。また、生産改革で生まれた時間や人材の余力資源を営業戦略に再配分し、学会サポート事業の創造や部門を越えたコミュニケーション風土の醸成を実現してこられた。結果的にオールデジタルになったが、その変遷と好業績の裏側にあるものを学ばせて頂いた。同時に、関西・東京のユーザーを中心に、同様の検証を重ね、様々なケースを経験し、ソリューションの完成度を高めてきた。賛同頂ける印刷会社は8割におよぶ」と印刷会社の反応を肌で感じているようだ。
一方で、発言は慎重だ。「利益創出のメカニズムが整理できたとは言え、経営者にとっては当たり前だと言われるロジック。そこで武器となるのが、利益創出に必要な重要な指標を見える化する分析手法である。日常的に費消している4つの経営資源『時間・人材・設備・コスト』を分析し、対話を重ねて実現可能な最適な姿を共に考え、運用ポリシーを策定する。とてもスキルを要することだが、富士フイルムの提供価値として習得しなくてはならないと考えている」(鈴木部長)
「DX」最大の課題は「人」
今後は、この生産工程の最適化で抽出した経営資源を成長戦略に再分配していくことが重要になるが、同社にとってもこの部分はまだまだ課題が残っている。
「デジタル活用で時間の余力が大きく生まれた。印刷に必要だった機器が無くなったことでスペースも生まれた。そのスペースは広く空いたままで、活用方法を模索している。人材にも余力が生まれたことで、オフセット印刷のオペレータは現在、製本工程に回ってもらっているが、今後は、この『人』という経営資源の有効活用が課題になる。ひとつの案として、帳簿製本技術の保存・継承というところで活躍してもらうことも考えている。この先にある『DX』の最大の課題は適正人員の再配置にあるのかもしれない」(鴻村社長)
当然ながらその受け皿としての新規事業開発にも着手し、年3回開催している経営勉強会でも社員全員が新規事業を提案するという試みをはじめている。ドローン事業などもその選択肢のひとつになっているという。
これら一連の経営改革実践において「社員の意識に変化は見られたか」という問いに対し、鴻村社長は「私が一番変わったかもしれない」と。盛和塾で学んだ鴻村社長は「学生の時よりも勉強した」と笑って答えてくれたが、実際、風通しの良い企業風土の醸成にも成果をあげている。飲み会や合宿などを会社の年間スケジュールに組み込み、その横断的なコミュニケーションによって社員の自主性を引き出している。「業績V字回復」「最高益更新」の最大の原動力は、この企業風土が生んだ同社の組織力にあるのかもしれない。
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投資回収試算で旧富士ゼロックスと協業
一方、フルデジタル印刷による生産環境は、雇用面でも有利に働いているようだ。
「当社はオフセットの職人を教育するのではなく、デジタル印刷のスキルレス化によって品質の安定を確保した。逆に言えば、人材の確保が容易になったと言える。人手不足が叫ばれる中でこれは大きなメリットであり、専門職を雇用する必要がないため、人件費抑制の効果もある。現在は多能工化も進めており、製本現場のスタッフでもPOD機を稼働できるようになっている」(鴻村社長)
このように、工程の無駄を省き、PODで利益率の高い生産体制を構築した同社。その過程において「運用にかかるコストをトータルで洗い出し、投資回収を試算する」という部分で、旧富士ゼロックスとの協業があった。
当時を知る鈴木部長は「オフセット印刷とデジタル印刷とを共存させた生産環境、あるいは特定ジョブをデジタルに移行し、運用の最適化が進んだ環境が、会社経営にもたらすメリットについて、当時我々は断片的にしか理解できていなかった。しかし、ここでの協業が『投資の原資を抽出し、利益を産み出すメカニズを解明する』という視点を生み、その答えが『足元の改善』にあるということに辿り着いた。このコームラ様との協業が、現在我々が提案する『最適生産ソリューション』のベースになっている」と説明する。
「コームラ様では2014年から本格的なオフセット印刷機とPODの共存運用を初め、定期モニタリングを通じて常に最適運用環境の維持改善を追求してきた。また、生産改革で生まれた時間や人材の余力資源を営業戦略に再配分し、学会サポート事業の創造や部門を越えたコミュニケーション風土の醸成を実現してこられた。結果的にオールデジタルになったが、その変遷と好業績の裏側にあるものを学ばせて頂いた。同時に、関西・東京のユーザーを中心に、同様の検証を重ね、様々なケースを経験し、ソリューションの完成度を高めてきた。賛同頂ける印刷会社は8割におよぶ」と印刷会社の反応を肌で感じているようだ。
一方で、発言は慎重だ。「利益創出のメカニズムが整理できたとは言え、経営者にとっては当たり前だと言われるロジック。そこで武器となるのが、利益創出に必要な重要な指標を見える化する分析手法である。日常的に費消している4つの経営資源『時間・人材・設備・コスト』を分析し、対話を重ねて実現可能な最適な姿を共に考え、運用ポリシーを策定する。とてもスキルを要することだが、富士フイルムの提供価値として習得しなくてはならないと考えている」(鈴木部長)
「DX」最大の課題は「人」
今後は、この生産工程の最適化で抽出した経営資源を成長戦略に再分配していくことが重要になるが、同社にとってもこの部分はまだまだ課題が残っている。
「デジタル活用で時間の余力が大きく生まれた。印刷に必要だった機器が無くなったことでスペースも生まれた。そのスペースは広く空いたままで、活用方法を模索している。人材にも余力が生まれたことで、オフセット印刷のオペレータは現在、製本工程に回ってもらっているが、今後は、この『人』という経営資源の有効活用が課題になる。ひとつの案として、帳簿製本技術の保存・継承というところで活躍してもらうことも考えている。この先にある『DX』の最大の課題は適正人員の再配置にあるのかもしれない」(鴻村社長)
当然ながらその受け皿としての新規事業開発にも着手し、年3回開催している経営勉強会でも社員全員が新規事業を提案するという試みをはじめている。ドローン事業などもその選択肢のひとつになっているという。
これら一連の経営改革実践において「社員の意識に変化は見られたか」という問いに対し、鴻村社長は「私が一番変わったかもしれない」と。盛和塾で学んだ鴻村社長は「学生の時よりも勉強した」と笑って答えてくれたが、実際、風通しの良い企業風土の醸成にも成果をあげている。飲み会や合宿などを会社の年間スケジュールに組み込み、その横断的なコミュニケーションによって社員の自主性を引き出している。「業績V字回復」「最高益更新」の最大の原動力は、この企業風土が生んだ同社の組織力にあるのかもしれない。
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