新星社西川印刷、立体表現で新事業領域へ - 創造力に寄り添う大判インクジェット事業
ワイドフォーマットUVIJ「アナプルナ H 2050i LED」導入事例
2022年6月24日ケーススタディ
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白インクで厚盛り表現
ここから本題であるワイドフォーマット分野への展開に移りたい。
前記の通り、高品質を求めるクライアントは、常に何か新しい変わったものを求めてくる傾向にある。例えば出版社なら冊子のカバーやスリーブ、パッケージなどに対して「何らかの付加価値を付けたい」と考えている。ワイドフォーマットインクジェットプリンタの導入は、まずそのサンプルづくりの内製化がひとつの狙いだった。従来のアナログ工程では木型が必要なことから気軽にデザイン変更することは難しい。その工程がインクジェットによってデジタル化されることで、デザインや形状までをいとも簡単に提案することが可能になる。
一方で、「私は現在65歳。息子も5年程前に入社している。今回の投資は、次の世代の新たな事業の柱にしていきたいという想いもある」との心境を語る西川社長。その経営戦略の方向性として、「出力のバリエーションのひとつであることには違いないが、それ以上に様々なデザイナーやクリエイティブなクライアントとのコミュニケーションツールにしたいと考えている」と説明する。これは同社のブランディングにも繋がるわけだ。
機種選択において重要視されたのは「立体感のある描写」である。「1〜2ミリ程度の限られたインキ膜で、シャドーからハイライトのグラデーションへ如何に立体感を出せるか。この条件を満たす機種として白インクで厚盛りができるアナプルナが最も近いと判断した」(西川社長)
また、ワイドフォーマット事業の立ち上げを担当した営業部の渋谷昭仁課長は「厚盛り表現ができるプリンタは他にもあるが、多くの機種がCMYK、あるいはニスで盛り上げる機構となっている。その中で当社は、白で盛り上げを表現することで差別化を図りたいと考えた。いま流行のファブリックパネルなどへも応用できる」と説明する。
さらに西川社長は、「紙は白だけではないし、様々な素材への印刷も想定していた。そこに白を引くだけで絵柄が鮮明に再現され、浮き出るような立体感のある描写が可能になる」と語る。
一方で、フラットベッドタイプも選択肢にあったようだが、スペースの問題で断念。アナプルナはロール/フラットベッドのハイブリッド仕様で、その汎用性も大きな特長である。
あくまで「クリエイティブ」を軸足に
今回、新星社西川印刷が今年2月に導入したモデルは、「アナプルナ H 2050i LED」。最大印刷幅2.05メートル、解像度1,440dpi、6色(C・M・Y・K・LC・LM)+白の仕様となっている。アナプルナLEDシリーズは、16ワット/平方メートルという高出力のUV LEDユニットを採用。アグフア独自のUVインク・テクノロジーにより、アナプルナLEDシリーズ専用に開発された次世代型UVインクは、塩ビシート、ターポリンはもちろん、多様な印刷基材に対する密着性、柔軟性、低臭性を実現しているほか、放射熱も少なく熱に弱い薄物メディアとの相性も良い。
導入から3ヵ月あまり。すでに、これまでの事業の延長線上にあるイベント関連ではタペストリーなど、出版社などからはキャンパスボードの引き合いも多い。
一方、コロナ禍において抗ウイルスや抗菌、消臭などの機能性壁紙が注目を集める中、大手リフォーム会社との協業で、施工主の嗜好にあわせたオリジナルの壁紙を供給するプロジェクトも走り出しているという。これら「大判+オンデマンド」の要素でカバーできる商材の開発で、商業印刷の仕事ではない、あるいはクライアントではない層へのアプローチで事業領域の拡大をはかっていく考えで、アナプルナはそのためのツールであり戦略機として位置付けられる。
また、今回はプリンタと同時に、コムネット(株)(本社/神戸市中央区)が販売代理店をつとめるイタリア・SEI社のレーザー加工機「SEIシリーズ X-TYPE」も導入している。このレーザーカッターは薄い素材を得意とし、刻印もできることからプリンタとの組み合わせで表現の幅を広げる可能性を秘めている。
新たなアプリケーションへの開発意欲を掻き立てるプリンタ+レーザーカッター。「我々だけがその活用方法を試行錯誤しても『宝の持ち腐れ』。クリエイターが創造力を掻き立て、表現できる場を提供できれば」と西川社長。今後の展開についても「あくまで当社のワイドフォーマット事業は『プロダクト』ではなく、『クリエイティブ』に軸足を置いた展開を目指す。そこで需要が大きく膨らめば、その出力業務を地方の同業者に委託していきたいと考えており、全国のアナプルナユーザーとのネットワークも必要になるかもしれない」と語る。
「クリエイティブなクライアントの差別化を如何にお手伝いできるか。我々はそれを試されている。グラフィック、パッケージのみならず、インテリアやアパレルのデザイナー達の表現活動に寄り添うような事業展開を理想としている」(西川社長)
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白インクで厚盛り表現
ここから本題であるワイドフォーマット分野への展開に移りたい。
前記の通り、高品質を求めるクライアントは、常に何か新しい変わったものを求めてくる傾向にある。例えば出版社なら冊子のカバーやスリーブ、パッケージなどに対して「何らかの付加価値を付けたい」と考えている。ワイドフォーマットインクジェットプリンタの導入は、まずそのサンプルづくりの内製化がひとつの狙いだった。従来のアナログ工程では木型が必要なことから気軽にデザイン変更することは難しい。その工程がインクジェットによってデジタル化されることで、デザインや形状までをいとも簡単に提案することが可能になる。
一方で、「私は現在65歳。息子も5年程前に入社している。今回の投資は、次の世代の新たな事業の柱にしていきたいという想いもある」との心境を語る西川社長。その経営戦略の方向性として、「出力のバリエーションのひとつであることには違いないが、それ以上に様々なデザイナーやクリエイティブなクライアントとのコミュニケーションツールにしたいと考えている」と説明する。これは同社のブランディングにも繋がるわけだ。
機種選択において重要視されたのは「立体感のある描写」である。「1〜2ミリ程度の限られたインキ膜で、シャドーからハイライトのグラデーションへ如何に立体感を出せるか。この条件を満たす機種として白インクで厚盛りができるアナプルナが最も近いと判断した」(西川社長)
また、ワイドフォーマット事業の立ち上げを担当した営業部の渋谷昭仁課長は「厚盛り表現ができるプリンタは他にもあるが、多くの機種がCMYK、あるいはニスで盛り上げる機構となっている。その中で当社は、白で盛り上げを表現することで差別化を図りたいと考えた。いま流行のファブリックパネルなどへも応用できる」と説明する。
さらに西川社長は、「紙は白だけではないし、様々な素材への印刷も想定していた。そこに白を引くだけで絵柄が鮮明に再現され、浮き出るような立体感のある描写が可能になる」と語る。
一方で、フラットベッドタイプも選択肢にあったようだが、スペースの問題で断念。アナプルナはロール/フラットベッドのハイブリッド仕様で、その汎用性も大きな特長である。
あくまで「クリエイティブ」を軸足に
今回、新星社西川印刷が今年2月に導入したモデルは、「アナプルナ H 2050i LED」。最大印刷幅2.05メートル、解像度1,440dpi、6色(C・M・Y・K・LC・LM)+白の仕様となっている。アナプルナLEDシリーズは、16ワット/平方メートルという高出力のUV LEDユニットを採用。アグフア独自のUVインク・テクノロジーにより、アナプルナLEDシリーズ専用に開発された次世代型UVインクは、塩ビシート、ターポリンはもちろん、多様な印刷基材に対する密着性、柔軟性、低臭性を実現しているほか、放射熱も少なく熱に弱い薄物メディアとの相性も良い。
導入から3ヵ月あまり。すでに、これまでの事業の延長線上にあるイベント関連ではタペストリーなど、出版社などからはキャンパスボードの引き合いも多い。
一方、コロナ禍において抗ウイルスや抗菌、消臭などの機能性壁紙が注目を集める中、大手リフォーム会社との協業で、施工主の嗜好にあわせたオリジナルの壁紙を供給するプロジェクトも走り出しているという。これら「大判+オンデマンド」の要素でカバーできる商材の開発で、商業印刷の仕事ではない、あるいはクライアントではない層へのアプローチで事業領域の拡大をはかっていく考えで、アナプルナはそのためのツールであり戦略機として位置付けられる。
また、今回はプリンタと同時に、コムネット(株)(本社/神戸市中央区)が販売代理店をつとめるイタリア・SEI社のレーザー加工機「SEIシリーズ X-TYPE」も導入している。このレーザーカッターは薄い素材を得意とし、刻印もできることからプリンタとの組み合わせで表現の幅を広げる可能性を秘めている。
新たなアプリケーションへの開発意欲を掻き立てるプリンタ+レーザーカッター。「我々だけがその活用方法を試行錯誤しても『宝の持ち腐れ』。クリエイターが創造力を掻き立て、表現できる場を提供できれば」と西川社長。今後の展開についても「あくまで当社のワイドフォーマット事業は『プロダクト』ではなく、『クリエイティブ』に軸足を置いた展開を目指す。そこで需要が大きく膨らめば、その出力業務を地方の同業者に委託していきたいと考えており、全国のアナプルナユーザーとのネットワークも必要になるかもしれない」と語る。
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