[寄稿]プロダクションインクジェットの新境地を制す
インクジェットアナリスト エリザベス・グッディング氏
2022年9月8日スペシャリスト
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プロダクションインクジェットの新境地とは、高画質、広色領域であるグラフィックアーツアプリケーションである。この市場の課題は、大量のインクを正確に吸水性及び非吸水性の素材に噴射し、素材にダメージを与えることなく高速で乾燥することだ。この市場に供給されている印刷機は非常に数が少なく、この課題に対応することがいかに難しいかを示している。このたび、独自のアプローチにより従来のインクジェットと同等のコストを実現し、オフセットとインクジェットの適切な生産量の差を埋めながら、高品質な印刷を実現する新製品が登場した。
差別化に重要な機能を複数備えた、KODAK PROSPER ULTRA520フルカラーインクジェットウェブプレスが高品質印刷分野に参入する。500フィート/分(FPM)という印刷速度は、コート紙への印刷分野では最速クラス。最も重要な機能は、対応するすべての用紙に対し、最高速度の印刷時にも最大解像度を提供すること。このカテゴリーの印刷機はどれも水性インクジェットを使用しているが、コンティニュアスインクジェット(CIJ)プリントヘッドを採用しているのは唯一、この印刷機だけ。この印刷機には、次世代ULTRASTREAMインクジェットテクノロジーが搭載され、このヘッドは静電偏向を利用して噴射速度を向上させ、プリントアレイのサイズが縮小されている。また、独自のハードウェアベースのスクリーニング技術を採用し、スピード、性能、写像性を向上させることで差別化を図っている。
PROSPER ULTRA 520プレスのすべてのコンポーネントが組み合わさることで、オフセット領域の印刷量をインクジェットへ移行することがいかに魅力的なものとなるのかを説明する。
オフセット品質を提供
品質に対する認識を左右する要因として、解像度、ドロップサイズ、ドロップの均一さ、色域などがある。解像度のみを品質の指標とするのは、とくに印刷速度や基材の違いにより、印刷機がサポートする解像度に高低差が生じると虚偽表示となる恐れがある。PROSPER ULTRA 520は、一貫して600×1,800の解像度を提供する。解像度を語る上では、ドロップのサイズや配置といった要因も考慮しなければならない。最高の解像度を誇る印刷機であっても、ドロップの形状が不揃いであったり、あるいは不正確に配置されたりすれば、優れた画質を実現することはできない。
コダックは、画質を表す際に、オフセットの専門家が最もよく使うlpi(line per inch)という用語を使用する。コダックが主張する200lpiという印刷品質は、KODAK SQUARESPOTイメージングテクノロジーを搭載したコダックプレートセッターを使用した枚葉オフセット印刷機へのベンチマークに基づくものだ。lpiに注目することで、解像度とドロップサイズ、グレイ階調、bit深度の連携について掘り下げる必要性は低減するが、ドロップの形成と正確性に少し焦点を当てたいと思う。
当然のことながら、ドロップが正確に着弾しなければ、画像はぼやけ、輪郭は不鮮明になる。あまり知られていないのは、ドロップの形状と均一性による影響である。ドロップが完全な円形で、4pLより小さければ精密な結果になる。ドロップにサテライトやアーチファクトをともなう場合も、インクの一部がドロップのターゲットからはみ出るため、ドロップの配置が不正確な場合と同様の問題が生じる。サテライトは、プリントヘッドの下を移動する紙の空気抗力にドロップが影響され形成される。滴下速度が遅くなるほど、空気抗力がドロップの形成に与える影響は大きくなる。
PROSPER ULTRA 520プレスの基盤となっているKODAK ULTRASTREAMインクジェットテクノロジーは、サテライトドロップを生じさせることなく3.75pLのドロップを正確に配置する。CIJ方式のプリントヘッドはDOD方式のプリントヘッドとは異なり、プリントヘッド内部にドロップのカーテンを作る。ULTRASTREAMのプリントヘッドでは、一部のドロップが用紙に着弾するが、他のドロップは静電気により方向が変わり、各ドロップは前のドロップの直後に続いて滴下することができ、プリントヘッドを離れるまで抗力や速度の低下は一切起きない。ULTRASTREAMのヘッドは他の印刷機に比べて遠くから基材へとインクを噴き付けるが、噴射の勢いも3倍である。噴射の勢いに加え、機材からの距離があることにより、埃が逆流してヘッドに入ることを防ぎ、基材の凹凸からヘッドを保護することができる。
ULTRASTREAMヘッドと、コダックナノ粒子顔料インク、向上したドライヤー機能の組み合わせにより、Pantone Solid Coatedのカラーの93%に対応し、SWOP、GRACoL、ISOcoatedV2(FOGRA39)などの標準CMYKカラースペースよりもはるかに幅広い色域を実現した。ULTRASTREAMヘッドに最適化されたスクリーニング技術であるKodak Error Diffusionは、正確なドロップを、グレインが少なくコントラストの際立った、よりクリアな画像へと変化させる。しかし、オフセットのカラーターゲットを上回り、優れた画質を実現するには、確固たるビジネスモデルがなければ、印刷物の移行を促進するには不十分である。
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プロダクションインクジェットの新境地とは、高画質、広色領域であるグラフィックアーツアプリケーションである。この市場の課題は、大量のインクを正確に吸水性及び非吸水性の素材に噴射し、素材にダメージを与えることなく高速で乾燥することだ。この市場に供給されている印刷機は非常に数が少なく、この課題に対応することがいかに難しいかを示している。このたび、独自のアプローチにより従来のインクジェットと同等のコストを実現し、オフセットとインクジェットの適切な生産量の差を埋めながら、高品質な印刷を実現する新製品が登場した。
差別化に重要な機能を複数備えた、KODAK PROSPER ULTRA520フルカラーインクジェットウェブプレスが高品質印刷分野に参入する。500フィート/分(FPM)という印刷速度は、コート紙への印刷分野では最速クラス。最も重要な機能は、対応するすべての用紙に対し、最高速度の印刷時にも最大解像度を提供すること。このカテゴリーの印刷機はどれも水性インクジェットを使用しているが、コンティニュアスインクジェット(CIJ)プリントヘッドを採用しているのは唯一、この印刷機だけ。この印刷機には、次世代ULTRASTREAMインクジェットテクノロジーが搭載され、このヘッドは静電偏向を利用して噴射速度を向上させ、プリントアレイのサイズが縮小されている。また、独自のハードウェアベースのスクリーニング技術を採用し、スピード、性能、写像性を向上させることで差別化を図っている。
PROSPER ULTRA 520プレスのすべてのコンポーネントが組み合わさることで、オフセット領域の印刷量をインクジェットへ移行することがいかに魅力的なものとなるのかを説明する。
オフセット品質を提供
品質に対する認識を左右する要因として、解像度、ドロップサイズ、ドロップの均一さ、色域などがある。解像度のみを品質の指標とするのは、とくに印刷速度や基材の違いにより、印刷機がサポートする解像度に高低差が生じると虚偽表示となる恐れがある。PROSPER ULTRA 520は、一貫して600×1,800の解像度を提供する。解像度を語る上では、ドロップのサイズや配置といった要因も考慮しなければならない。最高の解像度を誇る印刷機であっても、ドロップの形状が不揃いであったり、あるいは不正確に配置されたりすれば、優れた画質を実現することはできない。
コダックは、画質を表す際に、オフセットの専門家が最もよく使うlpi(line per inch)という用語を使用する。コダックが主張する200lpiという印刷品質は、KODAK SQUARESPOTイメージングテクノロジーを搭載したコダックプレートセッターを使用した枚葉オフセット印刷機へのベンチマークに基づくものだ。lpiに注目することで、解像度とドロップサイズ、グレイ階調、bit深度の連携について掘り下げる必要性は低減するが、ドロップの形成と正確性に少し焦点を当てたいと思う。
当然のことながら、ドロップが正確に着弾しなければ、画像はぼやけ、輪郭は不鮮明になる。あまり知られていないのは、ドロップの形状と均一性による影響である。ドロップが完全な円形で、4pLより小さければ精密な結果になる。ドロップにサテライトやアーチファクトをともなう場合も、インクの一部がドロップのターゲットからはみ出るため、ドロップの配置が不正確な場合と同様の問題が生じる。サテライトは、プリントヘッドの下を移動する紙の空気抗力にドロップが影響され形成される。滴下速度が遅くなるほど、空気抗力がドロップの形成に与える影響は大きくなる。
PROSPER ULTRA 520プレスの基盤となっているKODAK ULTRASTREAMインクジェットテクノロジーは、サテライトドロップを生じさせることなく3.75pLのドロップを正確に配置する。CIJ方式のプリントヘッドはDOD方式のプリントヘッドとは異なり、プリントヘッド内部にドロップのカーテンを作る。ULTRASTREAMのプリントヘッドでは、一部のドロップが用紙に着弾するが、他のドロップは静電気により方向が変わり、各ドロップは前のドロップの直後に続いて滴下することができ、プリントヘッドを離れるまで抗力や速度の低下は一切起きない。ULTRASTREAMのヘッドは他の印刷機に比べて遠くから基材へとインクを噴き付けるが、噴射の勢いも3倍である。噴射の勢いに加え、機材からの距離があることにより、埃が逆流してヘッドに入ることを防ぎ、基材の凹凸からヘッドを保護することができる。
ULTRASTREAMヘッドと、コダックナノ粒子顔料インク、向上したドライヤー機能の組み合わせにより、Pantone Solid Coatedのカラーの93%に対応し、SWOP、GRACoL、ISOcoatedV2(FOGRA39)などの標準CMYKカラースペースよりもはるかに幅広い色域を実現した。ULTRASTREAMヘッドに最適化されたスクリーニング技術であるKodak Error Diffusionは、正確なドロップを、グレインが少なくコントラストの際立った、よりクリアな画像へと変化させる。しかし、オフセットのカラーターゲットを上回り、優れた画質を実現するには、確固たるビジネスモデルがなければ、印刷物の移行を促進するには不十分である。
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