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サンエムカラー、「高精細印刷の匠」が展開するインクジェットビジネス

「技術」と「感性」で運用〜高濃度で広いダイナミックレンジ
[枚葉IJデジタルプレスJet Press 750S導入事例]

2022年9月30日ケーススタディ

 「高精細印刷技術の匠」として知られる(株)サンエムカラー(本社/京都市南区吉祥院嶋樫山町37)は今年4月、富士フイルムのB2サイズ枚葉インクジェットデジタルプレス「JetPress750S」を導入し、同社がオフセット印刷の分野で培ってきた「高濃度でダイナミックレンジが広く、シャドー側の表情が豊かな印刷」をデジタル印刷の世界で再現している。今回、印刷物に「感性」という概念を吹き込むサンエムカラーが新たに展開するインクジェットビジネスを取材した。

JetPressでもオフセットで培った「サンエムっぽさ」を最大限意識

「芸術の工業化」で夢と感動を発信

 「印刷業とは、古くから受け継がれてきた美術・芸術という文化に貢献する重要な産業である」と語る松井会長。中学卒業と同時に印刷業界に足を踏み入れて以来、67年にわたり印刷技術の発展を見届けてきた究極の「印刷職人」である。84歳を迎えた現在も、「生涯現役、まだまだこれから」と、社員とともに印刷技術の研鑽に奮闘している。

松井 会長 サンエムカラーは、この松井会長が印刷機のオペレーターから独立する形で1984年に「特殊印刷のアウトソーシング企業」として創業。「印刷技術がいかに進歩しようとも、芸術表現の根幹はあくまでも『人』であり、『職人の心』である」という理念のもと、最先端のテクノロジーと美の追求に妥協を許さない職人の「技」と「心」を掛け合わせ、印刷物を通じた「芸術の工業化」で夢と感動を発信し続けている。これまで、書画のレプリカや掛け軸、色紙、ミニ屏風などの伝統工芸品や国宝級の絵画や古文書の複製などを手掛けるほか、写真家や芸術家、デザイナー、イラストレーターなどとタッグを組み、写真集や図録、大判ポスターなどを世に送り出している。

 サンエムカラーと言えば、「高精細印刷技術の匠」として全国的に知られる存在。この技術を圧倒的な表現で世に知らしめたのが、6年前にFFGSとSCREENの3社で共同開発した超高精細印刷「燦・エクセル・アート(印刷の8K)」だ。20年以上前から4K(600線相当)を手掛けていた同社だが、この技術は、従来の印刷の33倍の細かな点描で、RGB表現に近似する精細な「彩度」「明度」「深い濃度」を実現した世界初の色彩再現技術である。「オレンジやバイオレット、また水の色や着物の紺の色の再現に長けている」(松井会長)。

 通常のFMスクリーニングの網点サイズは20ミクロンだが、同技術は6ミクロンという極限まで小さな網点を形成する、1,000線相当の超高精細印刷。網点の重なりを抑制することで色の混ざりによる濁りをなくし、再現できる色域を格段に広げている。また、高濃度によるダイナミックレンジの広さも特徴のひとつで、色彩だけでなく濃淡差の表現も得意な技法であるため、アート作品や文化財が持つ魅力を余すところなく紙に再現できるというわけだ。「印刷=商品」として会社作りを行ってきた松井会長の思いがひとつの形となったもので、同技術は令和2年度京都中小企業優秀技術賞を受賞している。

機種選択の決め手は「高いポテンシャル」

 「世にないもの、ユーザーが期待する以上のものを追い求めることで、そこに知恵が生まれる。いわば印刷は『感性』の事業だ。だからこそ楽しいし、やればやるほど夢が膨らむ」と松井会長。そして次のステージにおいて「感性印刷」で叶えた夢が、オフセット印刷の「サンエムカラー品質」を踏襲するとともに、新たな事業領域の創造を担うデジタル印刷分野だ。松井会長は「より消費者のニーズが細分化される中で、印刷物にもよりオンデマンド性、即時性が求められる」とし、印刷の魅力、あるいは産業自身の地位向上にデジタル印刷は欠かせない技術だとしている。

大畑マネージャー 同社では、枚葉デジタルプレスへの投資に際し、3機種に候補を絞って、同一データによる出力テストをはじめ、それぞれの機種のICCプロファイルによるガモット測定、さらに同社が作成したICCプロファイルを当てた状態での出力テストなど、綿密かつ広範な検証を重ねたという。結果、「高いポテンシャル」が決め手となり、富士フイルムの商業印刷向け枚葉インクジェットデジタルプレス「JetPress750S」を導入した。

 同社文化事業部の大畑政孝マネージャーは、「色域と濃度はJetPressが圧倒的に優秀だった。とくにシャドー部の色域。最も彩度の高い部分はどの機種でもわりと表現できるが、なかなか出にくい彩度の低い部分でもJetPressは高濃度ながら色調も正確に表現できていた」と評価する。

 サンエムカラーが手掛けるオフセット印刷の真骨頂は、高濃度でダイナミックレンジが広く、シャドー側の表情が豊かであること。もちろんインクジェットでもこの特長を再現しなければならない。この条件において最もポテンシャルを感じさせたのがJetPressだったわけだ。松井会長は、このJetPressのポテンシャルを「我々のような技術と知識を持つスタッフが、さらなる成長を体験できる機械」と表現している。

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「芸術の工業化」で夢と感動を発信

 「印刷業とは、古くから受け継がれてきた美術・芸術という文化に貢献する重要な産業である」と語る松井会長。中学卒業と同時に印刷業界に足を踏み入れて以来、67年にわたり印刷技術の発展を見届けてきた究極の「印刷職人」である。84歳を迎えた現在も、「生涯現役、まだまだこれから」と、社員とともに印刷技術の研鑽に奮闘している。

松井 会長 サンエムカラーは、この松井会長が印刷機のオペレーターから独立する形で1984年に「特殊印刷のアウトソーシング企業」として創業。「印刷技術がいかに進歩しようとも、芸術表現の根幹はあくまでも『人』であり、『職人の心』である」という理念のもと、最先端のテクノロジーと美の追求に妥協を許さない職人の「技」と「心」を掛け合わせ、印刷物を通じた「芸術の工業化」で夢と感動を発信し続けている。これまで、書画のレプリカや掛け軸、色紙、ミニ屏風などの伝統工芸品や国宝級の絵画や古文書の複製などを手掛けるほか、写真家や芸術家、デザイナー、イラストレーターなどとタッグを組み、写真集や図録、大判ポスターなどを世に送り出している。

 サンエムカラーと言えば、「高精細印刷技術の匠」として全国的に知られる存在。この技術を圧倒的な表現で世に知らしめたのが、6年前にFFGSとSCREENの3社で共同開発した超高精細印刷「燦・エクセル・アート(印刷の8K)」だ。20年以上前から4K(600線相当)を手掛けていた同社だが、この技術は、従来の印刷の33倍の細かな点描で、RGB表現に近似する精細な「彩度」「明度」「深い濃度」を実現した世界初の色彩再現技術である。「オレンジやバイオレット、また水の色や着物の紺の色の再現に長けている」(松井会長)。

 通常のFMスクリーニングの網点サイズは20ミクロンだが、同技術は6ミクロンという極限まで小さな網点を形成する、1,000線相当の超高精細印刷。網点の重なりを抑制することで色の混ざりによる濁りをなくし、再現できる色域を格段に広げている。また、高濃度によるダイナミックレンジの広さも特徴のひとつで、色彩だけでなく濃淡差の表現も得意な技法であるため、アート作品や文化財が持つ魅力を余すところなく紙に再現できるというわけだ。「印刷=商品」として会社作りを行ってきた松井会長の思いがひとつの形となったもので、同技術は令和2年度京都中小企業優秀技術賞を受賞している。

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大畑マネージャー 同社では、枚葉デジタルプレスへの投資に際し、3機種に候補を絞って、同一データによる出力テストをはじめ、それぞれの機種のICCプロファイルによるガモット測定、さらに同社が作成したICCプロファイルを当てた状態での出力テストなど、綿密かつ広範な検証を重ねたという。結果、「高いポテンシャル」が決め手となり、富士フイルムの商業印刷向け枚葉インクジェットデジタルプレス「JetPress750S」を導入した。

 同社文化事業部の大畑政孝マネージャーは、「色域と濃度はJetPressが圧倒的に優秀だった。とくにシャドー部の色域。最も彩度の高い部分はどの機種でもわりと表現できるが、なかなか出にくい彩度の低い部分でもJetPressは高濃度ながら色調も正確に表現できていた」と評価する。

 サンエムカラーが手掛けるオフセット印刷の真骨頂は、高濃度でダイナミックレンジが広く、シャドー側の表情が豊かであること。もちろんインクジェットでもこの特長を再現しなければならない。この条件において最もポテンシャルを感じさせたのがJetPressだったわけだ。松井会長は、このJetPressのポテンシャルを「我々のような技術と知識を持つスタッフが、さらなる成長を体験できる機械」と表現している。

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