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「製本DX」で「売れる本」を[ミューラー・マルティニジャパン 五反田隆社長に聞く]

デジタル生産で販売機会損失を防ぐ〜分業の壁による技術分断が課題

2023年8月18日スペシャリスト

 「出版業界は販売機会を失っている」と指摘するミューラー・マルティニジャパン(株)の五反田隆社長。印刷物の小ロット化が進む中で、書籍の需要と供給のミスマッチによる販売機会の損失を解決し、「売れる本」を世に送り出すために、「デジタル生産」の必要性を強調している。今回は、「印刷物の生産工程において、最も『DX』で効果を弾き出せるのは製本工程である」と語る五反田社長に、その市場背景や「製本DX」の有用性などの視点から見解を語ってもらった。
五反田 社長


「デジタル生産=少部数」ではない

 製本業界における設備投資意欲は、残念ながら現段階ではまだ戻ってきていない。もちろん、忙しい製本会社もあるわけだが、人手不足の状態にある会社でも外国人労働者、いわゆる人海戦術でその場を凌ぐケースが多々見られる。結果として国内の製本後加工機は2000年より前に導入されたものが圧倒的に多くなっている。

 このような状況の中で、「製本DX」と言われるようなイノベーションは起きにくい。日本の印刷製本市場のボリュームは、中国、アメリカに次いで第3位。にもかかわらずDXの先行事例は欧米に比べて非常に少ない。日本の製本業界においてDXは、まだ「馴染みがない」というところだろうか。これに関しては、我々製本機械メーカーがDXへの投資の先にあるメリットや効果を明確に提示できていないという反省もある。ただ、コロナ禍を経て、我々のサービス部門は動き出している。ある程度仕事が戻り、機械が稼働しているということだろう。

 しかし、「DX」のメリットや効果は、印刷工程よりも製本工程の方が大きいと考えている。製本工程をデジタル生産に置き換えるという「DX」を推進した場合、人手がかかる工程ゆえに人員削減の効果は大きい。あるフランスの会社では、省人化を理由に数万部単位の仕事をデジタル生産している。印刷の調整が不要で、ブックブロックの作成および表紙とのマッチングも自動でやってくれるデジタル生産は、決して「=少部数」ではない。

 さらに、工場での生産で欠陥製品を皆無にしようという「ゼロディフェクト」の考え方にもとづいて「品質改善」が期待できる。残念ながら人は間違える。そこをデジタル技術に委ねて機械に管理させることで、合理的に品質を担保でき、過剰な品質検査装置への投資も不要になる。

 そして、最大の効果は受注レンジを拡大できることだ。例えば、出版社側から見ると、これまで諦めていた小部数のタイトルの出版、あるいは重版が可能になることで受注拡大に繋がる。

 また、ローカルでの分業が可能になり、設備がコンパクトになることで物流拠点とのコラボレーションも可能になるだろう。

 さらに、製本側からのカスタマイズが容易になることも期待できる。例えば、「A4よりも少し小さい本が欲しい」となると、当社独自の単独駆動(モーションコントロール)技術を採用したインフィニトリム三方断裁機ならば、同じ印刷物でも少しサイズの異なる本を作ることも容易である。

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2023年8月18日スペシャリスト

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 「出版業界は販売機会を失っている」と指摘するミューラー・マルティニジャパン(株)の五反田隆社長。印刷物の小ロット化が進む中で、書籍の需要と供給のミスマッチによる販売機会の損失を解決し、「売れる本」を世に送り出すために、「デジタル生産」の必要性を強調している。今回は、「印刷物の生産工程において、最も『DX』で効果を弾き出せるのは製本工程である」と語る五反田社長に、その市場背景や「製本DX」の有用性などの視点から見解を語ってもらった。
五反田 社長


「デジタル生産=少部数」ではない

 製本業界における設備投資意欲は、残念ながら現段階ではまだ戻ってきていない。もちろん、忙しい製本会社もあるわけだが、人手不足の状態にある会社でも外国人労働者、いわゆる人海戦術でその場を凌ぐケースが多々見られる。結果として国内の製本後加工機は2000年より前に導入されたものが圧倒的に多くなっている。

 このような状況の中で、「製本DX」と言われるようなイノベーションは起きにくい。日本の印刷製本市場のボリュームは、中国、アメリカに次いで第3位。にもかかわらずDXの先行事例は欧米に比べて非常に少ない。日本の製本業界においてDXは、まだ「馴染みがない」というところだろうか。これに関しては、我々製本機械メーカーがDXへの投資の先にあるメリットや効果を明確に提示できていないという反省もある。ただ、コロナ禍を経て、我々のサービス部門は動き出している。ある程度仕事が戻り、機械が稼働しているということだろう。

 しかし、「DX」のメリットや効果は、印刷工程よりも製本工程の方が大きいと考えている。製本工程をデジタル生産に置き換えるという「DX」を推進した場合、人手がかかる工程ゆえに人員削減の効果は大きい。あるフランスの会社では、省人化を理由に数万部単位の仕事をデジタル生産している。印刷の調整が不要で、ブックブロックの作成および表紙とのマッチングも自動でやってくれるデジタル生産は、決して「=少部数」ではない。

 さらに、工場での生産で欠陥製品を皆無にしようという「ゼロディフェクト」の考え方にもとづいて「品質改善」が期待できる。残念ながら人は間違える。そこをデジタル技術に委ねて機械に管理させることで、合理的に品質を担保でき、過剰な品質検査装置への投資も不要になる。

 そして、最大の効果は受注レンジを拡大できることだ。例えば、出版社側から見ると、これまで諦めていた小部数のタイトルの出版、あるいは重版が可能になることで受注拡大に繋がる。

 また、ローカルでの分業が可能になり、設備がコンパクトになることで物流拠点とのコラボレーションも可能になるだろう。

 さらに、製本側からのカスタマイズが容易になることも期待できる。例えば、「A4よりも少し小さい本が欲しい」となると、当社独自の単独駆動(モーションコントロール)技術を採用したインフィニトリム三方断裁機ならば、同じ印刷物でも少しサイズの異なる本を作ることも容易である。

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