<国内におけるマスカスタマイゼーションモデル成功の秘訣>(兵藤氏)
近年、大手企業を中心に印刷の内製化が進んでいる。その背景には、ITの進化によりデジタル印刷機の運用ハードルが下がったことが挙げられる。さらにブランドオーナー側でワークフロー設計が簡単にできるようになり、また、デジタル印刷機の進化により、専門知識がなくても運用できる時代になった。また、時代の変化に応じて制作のルールを見直すことで合理化することもできるようになった。
加えて小ロットニーズとコストバランス、そして短納期対応も要因となっている。オフセット印刷では、1,000部でも2,000部でもそれほど変わらないが、ブランドオーナー側では、1,000部以下の小ロットでの印刷を求めている。さらに大量ロットでは、在庫が必須となり、保管費用なども発生してくる。また、長期間の在庫により、紙の劣化なども懸念される。そして無理な短納期対応を求めてしまうと下請法に抵触するリスクもある。そのためブランドオーナーは、これらを解決するには、デジタル印刷機を活用し、自社内で小ロット・短納期のオーダーを内製化するメリットを理解するようになった。その結果、ITの進化により企業主体でマスカスタマイゼーションモデルの構築が可能となった。
自動化を実現するための運用ルール
このモデルを運用していくには、様々なルールが存在し、そのルールに沿った運用が重要なポイントとなる。まず、冊子は同じサイズに統一すること。デジタル印刷機と後加工機の設定変更をなくすことで稼働率を飛躍的に向上させることができる。また、サイズを固定することで発送・梱包など、ロジスティックの自動化もでき、さらにオペレータの作業負荷も最小限に抑えることができる。
そして製本形態も同じにすることで、設定変更作業をなくし、稼働率も向上する。このサイズと製本形態の統一ができなければ、効率的な運用を行うことができない。そして最後に用紙も同じもので統一すること。用紙を統一することで大量契約によるコストダウンを図ることができる。また、デジタル印刷機と後加工機の設定値を固定できるので、稼働率向上にもつながる。この3つを意識してルール作りをすることが重要だと考えている。
スマートファクトリーの構築で得たメリット
デジタル印刷機であれば、小ロット・短納期生産が可能となるが、1番のメリットは自動化を実現できること。そのためには、ワークフロー設計が必要となる。印刷データは、様々な種類があるが、これらの印刷データをすべてソフトウェア側で自動的に印刷用PDFに変換することが重要となる。その印刷データを保管し、最終的にオーダーシステムを介してデータ仕分けにジョブ情報が送られ、バーコード情報を付与した印刷データがデジタル印刷機などの生産機に入稿され、自動で生産を開始する。このバーコード情報を活用することで、配送までの自動化も可能となる。これによりオペレータの人数を最小限にでき、人件費の削減にもつながる。また、印刷のスペシャリストを配置する必要もなくなる。
以前は、オフセット印刷機やトナー系のデジタル印刷機で生産、納品していた。インクジェット印刷機移行後、品質については若干ダウングレードしたが、インクジェット専用用紙などを使用することで品質低下を抑えることができた。その結果、小部数・大量オーダーに対し、Book Of Oneによる1冊、1冊違った印刷物を作ることができた。
在庫レスを実現したことで保管用の倉庫も不要となり、緊急の短納期オーダーでも社内で対応可能となった。これによる従来の外製7日納品から内製4日での納品が可能となった。コストで比較するとトナー用紙よりもインクジェット用紙の方がコスト高になったが、自動化を推進したことで外製13名から内製7名による運用で賄えるようになり、人件費を抑えることができた。その結果、トータルコストで約30%のコスト削減をすることができた。
【兵藤伊織氏】
2004年にデジタルプリントサービスのオペレーション業務を担当して以来、デジタル印刷に関わってきている。2019年からは、インクジェット輪転機と加工システムによるカラーにマニュアル生産の自動化を実現し、スマートファクトリーの構築に携わってきた。現在は、セールスプロモーション担当として、デジタルと紙媒体を併用したプロモーション活動も展開している。
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<国内におけるマスカスタマイゼーションモデル成功の秘訣>(兵藤氏)
近年、大手企業を中心に印刷の内製化が進んでいる。その背景には、ITの進化によりデジタル印刷機の運用ハードルが下がったことが挙げられる。さらにブランドオーナー側でワークフロー設計が簡単にできるようになり、また、デジタル印刷機の進化により、専門知識がなくても運用できる時代になった。また、時代の変化に応じて制作のルールを見直すことで合理化することもできるようになった。
加えて小ロットニーズとコストバランス、そして短納期対応も要因となっている。オフセット印刷では、1,000部でも2,000部でもそれほど変わらないが、ブランドオーナー側では、1,000部以下の小ロットでの印刷を求めている。さらに大量ロットでは、在庫が必須となり、保管費用なども発生してくる。また、長期間の在庫により、紙の劣化なども懸念される。そして無理な短納期対応を求めてしまうと下請法に抵触するリスクもある。そのためブランドオーナーは、これらを解決するには、デジタル印刷機を活用し、自社内で小ロット・短納期のオーダーを内製化するメリットを理解するようになった。その結果、ITの進化により企業主体でマスカスタマイゼーションモデルの構築が可能となった。
自動化を実現するための運用ルール
このモデルを運用していくには、様々なルールが存在し、そのルールに沿った運用が重要なポイントとなる。まず、冊子は同じサイズに統一すること。デジタル印刷機と後加工機の設定変更をなくすことで稼働率を飛躍的に向上させることができる。また、サイズを固定することで発送・梱包など、ロジスティックの自動化もでき、さらにオペレータの作業負荷も最小限に抑えることができる。
そして製本形態も同じにすることで、設定変更作業をなくし、稼働率も向上する。このサイズと製本形態の統一ができなければ、効率的な運用を行うことができない。そして最後に用紙も同じもので統一すること。用紙を統一することで大量契約によるコストダウンを図ることができる。また、デジタル印刷機と後加工機の設定値を固定できるので、稼働率向上にもつながる。この3つを意識してルール作りをすることが重要だと考えている。
スマートファクトリーの構築で得たメリット
デジタル印刷機であれば、小ロット・短納期生産が可能となるが、1番のメリットは自動化を実現できること。そのためには、ワークフロー設計が必要となる。印刷データは、様々な種類があるが、これらの印刷データをすべてソフトウェア側で自動的に印刷用PDFに変換することが重要となる。その印刷データを保管し、最終的にオーダーシステムを介してデータ仕分けにジョブ情報が送られ、バーコード情報を付与した印刷データがデジタル印刷機などの生産機に入稿され、自動で生産を開始する。このバーコード情報を活用することで、配送までの自動化も可能となる。これによりオペレータの人数を最小限にでき、人件費の削減にもつながる。また、印刷のスペシャリストを配置する必要もなくなる。
以前は、オフセット印刷機やトナー系のデジタル印刷機で生産、納品していた。インクジェット印刷機移行後、品質については若干ダウングレードしたが、インクジェット専用用紙などを使用することで品質低下を抑えることができた。その結果、小部数・大量オーダーに対し、Book Of Oneによる1冊、1冊違った印刷物を作ることができた。
在庫レスを実現したことで保管用の倉庫も不要となり、緊急の短納期オーダーでも社内で対応可能となった。これによる従来の外製7日納品から内製4日での納品が可能となった。コストで比較するとトナー用紙よりもインクジェット用紙の方がコスト高になったが、自動化を推進したことで外製13名から内製7名による運用で賄えるようになり、人件費を抑えることができた。その結果、トータルコストで約30%のコスト削減をすることができた。
【兵藤伊織氏】
2004年にデジタルプリントサービスのオペレーション業務を担当して以来、デジタル印刷に関わってきている。2019年からは、インクジェット輪転機と加工システムによるカラーにマニュアル生産の自動化を実現し、スマートファクトリーの構築に携わってきた。現在は、セールスプロモーション担当として、デジタルと紙媒体を併用したプロモーション活動も展開している。
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