コダックジャパン、頁物印刷とパーソナライズDMの市場開拓へ
より合理的な思考へ〜郵便料金改訂を「好機」に
コダックジャパン・河原一郎本部長に聞く
2024年4月3日スペシャリスト
-
コダックジャパンは、日本市場において「効率性」にフォーカスした「頁物印刷」と、郵便料金改定とSDGsを起点とした「パーソナライズDM」という2つの市場に向けたインクジェットプリンティングソリューションを強化し、両分野におけるアプリケーション開発の支援に乗り出している。今回、コダックジャパン・プリント事業部デジタルプリンティング営業本部の河原一郎本部長に、その背景や市場動向について、ユーザー事例を交えながら語ってもらった。
コダックのインクジェットビジネスは、PROSPERプリントヘッドを基軸に、Streamインクジェット技術を搭載した「PROSPERプレス」シリーズ、さらに新技術であるULTRASTREAMコンティニュアスインクジェット技術を搭載した「PROSPER ULTRA 520プレス」の3つの事業が軸になっている。
アジアパシフィックでは、プリントヘッドの需要が旺盛で、とくに宝くじの生産ラインでは、年間100ヘッド以上の潜在需要があり、先日、アジアのお客様から宝くじの生産ライン向けに20ヘッドを受注。瞬発力と大量生産能力が必要で、しかもセキュアな宝くじの市場において、PROSPERプリントヘッドの導入が拡大している。一方、日本市場においては、既存マーケットがある程度成熟してきているため、現在はグルアーや輪転機に搭載して高速150m/分以上でQRコードや可変ナンバーを印字するというようなパッケージ分野向けが主な活動になっている。
そして日本では今年、フルカラーデジタルプレスの訴求に注力していく考えで、今回は世界最高速の「PROSPER 7000 Turboプレス」と世界最高品質クラスの「PROSPER ULTRA 520プレス」という2つの違ったポジショニングの製品について、その市場動向やユーザー事例を交えて紹介したい。
米国マーキュリープリントプロダクションズ社
まず、「PROSPER 7000 Turboプレス」世界1号機を導入したマーキュリープリントプロダクションズ社の事例を紹介する。
同社は、コダック本社のお膝元である米国・ロチェスターにある出版印刷系の印刷会社。2012年に2台のPROSPER 5000 XLを導入している。その狙いはトナー機からのリプレイスで、印刷スピードおよびランニングコストで有利なインクジェットへのシフトである。この時点で同社では、PROSPER 5000 XL1台当たり2,700万ページ/月以上のスループットが可能になった。
ここで注目してほしいのが「生産効率」にフォーカスした設備投資であることだ。デジタル印刷は、オフセット印刷と比べてリードタイムが圧倒的に短い。とくに出版やカタログ、中綴じ冊子などの頁物は、オフセット印刷の場合、その頁数分の台数(ジョブ)が必要になり、それを折って丁合し、製本、断裁して成果物が完成する。すべての印刷が終わらないと次の工程に移れないし、この生産プロセスは非常に時間がかかる。これがインクジェットプレスなら、印刷と同時に丁合され、そのブックブロックを自動生産して製本するだけ。このスピード感並びに効率性はオフセット印刷と比較して圧倒的である。
現在、日本市場における出版や商業印刷の頁物のデジタル印刷化は遅れている。その原因のひとつだった「品質」は現在、技術的に解消されつつある。やはり最大の要因は、ページ当たりの単価にフォーカスしているからだと推測できる。この分野で先行している印刷会社では、やはり「効率性」「リードタイム」「省人化」に対する効果にフォーカスしている。欧米やアジアでも効率性を重視する傾向は顕著であり、その思考がデジタル印刷への投資を活発化させている。
これら効果を実証できたマーキュリープリントプロダクションズ社では、2014年にモノクロ機の「PROSPER 1000」、2019年には2台の「PROSPER 5000」を追加導入し、5台体制となった。この時点で、PROSPERプレス1台当たり8,000万ページ/月以上の印刷ができるようになり、単純に5台で4億ページ以上という驚異的な生産能力を持つことになった。
そして2023年、PROSPER 50002台を廃棄して「PROSPER 7000 Turboプレス」1台を導入した。PROSPER5000は200m機であるのに対し、PROSPER 7000は410m機で、廃棄した2台分の生産能力をカバーしている。
ここで私は、米国市場の非常に合理的な思考を感じた。PROSPER 7000で410m/分の印刷スピードを出すには解像度を落とす必要がある。通常200m/分だと600×600dpiだが、410m/分だと600×450dpiになる。しかし、彼らは次のように考えている。
「ローカバレッジの頁物だと目視ではそれほど品質に差はない。一方、解像度を落とすことでインク使用量が減り、ランニングコストが下がる。インクが減るので乾燥性が向上。さらに2台を1台にすることで省力・省人化できる」
結果、マーキュリープリントプロダクションズ社では、インクジェットプレスへ移行できる生産ロットのレンジを3,500冊まで引き上げることに成功している。米国や中国、インドの出版系ユーザーに聞くと、インクジェットによる生産ロットのスイートスポットは50〜1,500冊というのが平均的な数字である(ちなみに1,500冊から5,000冊のレンジが枚葉印刷機、5,000冊以上が輪転印刷機)。「3,500冊までインクジェットで行う」という数字は、PROSPER 7000の印刷スピードおよび低ランニングコストによる効果である。
新着トピックス
奥村印刷、新たな価値を紙に付加〜「折り紙食器 beak」でIPA2024に入賞
2024年11月20日企業・経営
奥村印刷(株)(本社/東京都北区、奥村文泰社長)は、2024年度の「Innovation Print Awards(以下、IPA)」において、「サステナビリティ部門」第1位を獲得した...全文を読む
富士フイルム、TOKYO PACKでブランドオーナーにデジタル印刷活用促す
2024年11月15日マーケティング
「もっと自由にパッケージ・オンデマンド」─富士フイルムグループは、10月23日から開催された「TOKYO PACK 2024(東京国際包装展)」において、富士フイルムが独自開発した幅...全文を読む
最新ニュース
日本HP、KADOKAWA「出版製造流通DXプロジェクト」を支援
2025年1月21日
(株)日本HP(本社/東京都港区、岡戸伸樹社長)は1月16日、(株)KADOKAWA(本社/東京都千代田区、夏野剛社長・CEO)の運営する埼玉県所沢市の大型文化複合施設「ところざわサ...全文を読む
2025年1月20日
ローランド ディー.ジー.(株)は、大判インクジェットプリンターTrueVISシリーズ「LG-640/540/300」と、DGXPRESSシリーズの「UG-642」で使用できる拡張テ...全文を読む
swissQprint、第5世代フラットベッド新モデル-生産性23%向上
2025年1月14日
swissQprintは、プラットフォームを全面的に刷新し、生産性、精度、アプリケーションの多用途性を新たなレベルへと引き上げたフラットベッド新世代モデルを発表した。新モデルは従来機...全文を読む
コダックジャパン、頁物印刷とパーソナライズDMの市場開拓へ
より合理的な思考へ〜郵便料金改訂を「好機」に コダックジャパン・河原一郎本部長に聞く
2024年4月3日スペシャリスト
コダックジャパンは、日本市場において「効率性」にフォーカスした「頁物印刷」と、郵便料金改定とSDGsを起点とした「パーソナライズDM」という2つの市場に向けたインクジェットプリンティングソリューションを強化し、両分野におけるアプリケーション開発の支援に乗り出している。今回、コダックジャパン・プリント事業部デジタルプリンティング営業本部の河原一郎本部長に、その背景や市場動向について、ユーザー事例を交えながら語ってもらった。
コダックのインクジェットビジネスは、PROSPERプリントヘッドを基軸に、Streamインクジェット技術を搭載した「PROSPERプレス」シリーズ、さらに新技術であるULTRASTREAMコンティニュアスインクジェット技術を搭載した「PROSPER ULTRA 520プレス」の3つの事業が軸になっている。
アジアパシフィックでは、プリントヘッドの需要が旺盛で、とくに宝くじの生産ラインでは、年間100ヘッド以上の潜在需要があり、先日、アジアのお客様から宝くじの生産ライン向けに20ヘッドを受注。瞬発力と大量生産能力が必要で、しかもセキュアな宝くじの市場において、PROSPERプリントヘッドの導入が拡大している。一方、日本市場においては、既存マーケットがある程度成熟してきているため、現在はグルアーや輪転機に搭載して高速150m/分以上でQRコードや可変ナンバーを印字するというようなパッケージ分野向けが主な活動になっている。
そして日本では今年、フルカラーデジタルプレスの訴求に注力していく考えで、今回は世界最高速の「PROSPER 7000 Turboプレス」と世界最高品質クラスの「PROSPER ULTRA 520プレス」という2つの違ったポジショニングの製品について、その市場動向やユーザー事例を交えて紹介したい。
米国マーキュリープリントプロダクションズ社
まず、「PROSPER 7000 Turboプレス」世界1号機を導入したマーキュリープリントプロダクションズ社の事例を紹介する。
同社は、コダック本社のお膝元である米国・ロチェスターにある出版印刷系の印刷会社。2012年に2台のPROSPER 5000 XLを導入している。その狙いはトナー機からのリプレイスで、印刷スピードおよびランニングコストで有利なインクジェットへのシフトである。この時点で同社では、PROSPER 5000 XL1台当たり2,700万ページ/月以上のスループットが可能になった。
ここで注目してほしいのが「生産効率」にフォーカスした設備投資であることだ。デジタル印刷は、オフセット印刷と比べてリードタイムが圧倒的に短い。とくに出版やカタログ、中綴じ冊子などの頁物は、オフセット印刷の場合、その頁数分の台数(ジョブ)が必要になり、それを折って丁合し、製本、断裁して成果物が完成する。すべての印刷が終わらないと次の工程に移れないし、この生産プロセスは非常に時間がかかる。これがインクジェットプレスなら、印刷と同時に丁合され、そのブックブロックを自動生産して製本するだけ。このスピード感並びに効率性はオフセット印刷と比較して圧倒的である。
現在、日本市場における出版や商業印刷の頁物のデジタル印刷化は遅れている。その原因のひとつだった「品質」は現在、技術的に解消されつつある。やはり最大の要因は、ページ当たりの単価にフォーカスしているからだと推測できる。この分野で先行している印刷会社では、やはり「効率性」「リードタイム」「省人化」に対する効果にフォーカスしている。欧米やアジアでも効率性を重視する傾向は顕著であり、その思考がデジタル印刷への投資を活発化させている。
これら効果を実証できたマーキュリープリントプロダクションズ社では、2014年にモノクロ機の「PROSPER 1000」、2019年には2台の「PROSPER 5000」を追加導入し、5台体制となった。この時点で、PROSPERプレス1台当たり8,000万ページ/月以上の印刷ができるようになり、単純に5台で4億ページ以上という驚異的な生産能力を持つことになった。
そして2023年、PROSPER 50002台を廃棄して「PROSPER 7000 Turboプレス」1台を導入した。PROSPER5000は200m機であるのに対し、PROSPER 7000は410m機で、廃棄した2台分の生産能力をカバーしている。
ここで私は、米国市場の非常に合理的な思考を感じた。PROSPER 7000で410m/分の印刷スピードを出すには解像度を落とす必要がある。通常200m/分だと600×600dpiだが、410m/分だと600×450dpiになる。しかし、彼らは次のように考えている。
「ローカバレッジの頁物だと目視ではそれほど品質に差はない。一方、解像度を落とすことでインク使用量が減り、ランニングコストが下がる。インクが減るので乾燥性が向上。さらに2台を1台にすることで省力・省人化できる」
結果、マーキュリープリントプロダクションズ社では、インクジェットプレスへ移行できる生産ロットのレンジを3,500冊まで引き上げることに成功している。米国や中国、インドの出版系ユーザーに聞くと、インクジェットによる生産ロットのスイートスポットは50〜1,500冊というのが平均的な数字である(ちなみに1,500冊から5,000冊のレンジが枚葉印刷機、5,000冊以上が輪転印刷機)。「3,500冊までインクジェットで行う」という数字は、PROSPER 7000の印刷スピードおよび低ランニングコストによる効果である。
新着トピックス
-
FFGS、潜在ニーズ発見と技術検証の場として機能[Solution Design Lab.]
2024年12月23日 企業・経営
-
竹田印刷、多様な個性をかたちに〜アール・ブリュット作品を世界に発信
2024年12月6日 企業・経営
-
奥村印刷、新たな価値を紙に付加〜「折り紙食器 beak」でIPA2024に入賞
2024年11月20日 企業・経営
-
富士フイルム、TOKYO PACKでブランドオーナーにデジタル印刷活用促す
2024年11月15日 マーケティング
-
価値協創で新たな潮流|エイエイピー、Jet Press 750Sが新たなステージへ
2024年11月13日 企業・経営
新着ニュース
SNSランキング
- 41sharesローランドDG、UVプリンターが紙器パッケージ製作に対応
- 39sharesSCREEN、Hunkeler Innovationdaysでインクジェットと後加工機の連携披露
- 39sharesミマキ、印刷脱色技術実用化でタペストリーのアップサイクル実現
- 38sharesKOMORI、241名が来場した新春特別内覧会のデモ動画(Impremia IS29s」公開
- 36sharesエプソン、使いやすさと安定稼働を両立したエプソン初のDTF専用プリンター発売
- 33sharesFFGS、潜在ニーズ発見と技術検証の場として機能[Solution Design Lab.]
- 29sharesKOMORI、インクジェット印刷機とデジタル加飾機の連携披露
- 25shares富士フイルムBI、デジタル印刷作品のコンテスト「IPA」の作品募集開始
- 25sharesSCREEN GA、高速連帳IJの次世代モデル「Truepress JET 520NX AD」発売
- 25shares富士フイルムBI、1パス5色印刷を可能にしたミドルレンジモデルを発売