富士特殊紙業、安倍首相が視察 − デジタルグラビア印刷機など見学
先進的な働き方改革・生産性改革推進を評価
2018年9月14日企業・経営ケーススタディ
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食品パッケージの印刷・加工を手がける富士特殊紙業(株)(本社/愛知県瀬戸市暁町3-14-3、杉山真一郎社長)は、「働きやすい職場環境づくり」に向けた先進的な取り組みで成長を続ける企業として8月30日、安倍首相の視察訪問を受けた。杉山仁朗会長、杉山社長が社内を案内し、同社が開発した水性グラビア印刷技術やデジタルグラビア印刷機「FUJI・M・O」、さらに福利厚生制度などについて説明した。
女性や高齢者が活躍できる職場環境づくり
富士特殊紙業は、地球環境問題、労働環境問題を改善し、包装する食品の安全を図るため、業界で初めて脱溶剤を掲げて「水性グラビア印刷技術」を開発し、実用化に成功したほか、2015年には富士フイルムとの共同プロジェクトによりデジタルグラビア印刷機「FUJI・M・O」(フジモ)を開発。この「UVインクジェットと水性グラビアのハイブリッド印刷機」が、昨今急速に進む小ロット・多品種化に対応する革新的な印刷技術であると高く評価されている。また、かねてから推進していた働き方改革や、女性や高齢者が活躍できる職場環境づくりにも「水性グラビア印刷技術」や「FUJI・M・O」が大きく貢献しているとして、今回の視察につながった。
同社は、女性や高齢者を含め、誰でもが安心して活躍できる職場環境づくりに長年取り組んでおり、「出産育児、介護支援制度」「66歳定年制」などを実施。また、女性だけでなく男性社員からも高く評価されているのが、事業所内に設置された保育所「あかつきキッズランド」。これは、いわゆるキッズスペースとは違い、乳児から幼児までの保育を目的とした独立した保育施設で、自社だけでなく近隣企業の従業員の子どもも預かっている。これらの取り組みが評価され、富士特殊紙業は「ダイバーシティ経営企業100選」「あいち女性輝きカンパニー」「障害者雇用優良企業」の認定を受けている。
商品開発面では、食品パッケージ印刷のパイオニアとして、有機溶剤を使用しない低環境負荷の印刷・加工方式を積極的に採用することで、「食の安心・安全」を社会に提供している。経験豊富な高齢技術者の技能を活かし、グラビア印刷技術の中でも極めて難易度の高い水性グラビア印刷の実用化を果たしたことで、より安全性の高い製品づくりが可能になり、商品価値の向上にもつながったほか、併せて開発した無溶剤ラミネート技術により、印刷からラミネート工程までを含めた有機溶剤フリーを実現した。
さらに、この水性グラビア印刷の技術を活かして富士フイルム、オリエント総業、ミヤコシと共同開発した「FUJI・M・O」は、急増する小ロットジョブに効率よく対応でき、ジョブ切り替え時もグラビア印刷用のシリンダー交換が白1版のみで済むため、作業負荷軽減に寄与。工場全体の生産性を大きく向上させているだけでなく、重いシリンダーの交換作業が軽減されたことで女性でも働きやすい職場環境が実現し、働き方改革にもつながっている。
職場環境改善の取り組みについて、同社の杉山会長はこう語っている。
「愛知県は、求人の難しい地域であることから、職場環境を改善することで、より良い人材を集め、社員の定着率の向上も図りたいという思いがあった。また、当社は20年以上前から定年を66歳としているが、今後、長寿化に伴って定年が延びる傾向は続いていくと考える。さらに女性の活躍も広がっていくだろう。こうしたことからも『誰もが働きやすい職場環境』を整えることは非常に重要なことだと認識している」
スキルレス化に貢献する「FUJI・M・O」に期待の言葉
今回の視察で安倍首相は、まずショールームでさまざまな食品パッケージのサンプルを手に取りながら、水性フレキソ印刷技術などの解説を熱心に聞いた後、印刷現場を見学。杉山社長から「グラビア印刷は、高度な技能を必要とし、重量物を扱うこともあるため、高齢者や女性には厳しい職場だが、『FUJI・M・O』は、入社したばかりの女性オペレーターが難なく使いこなしている。食品パッケージの印刷にこのような人材を起用している例は世界で他に例がない」と説明を受けると、「誰もが働きやすい環境を実現されており、まさに『一億総活躍社会』の理念に合致した取り組みだと思う」と評価。また、「FUJI・M・O」についても「これからの小ロット・多品種の時代に相応しい、画期的な印刷機だ」と述べ、今後のさらなる活用に期待を示した。
また、安倍首相視察の後、杉山会長は次のように語った。
「当社では『食品のおいしさを包む』という観点と、社員の健康を守るという目的から、積極的に水性化に取り組んでいる。また、VOCの削減は、東京都がオリンピックに向け重点的に取り組んでいる課題でもあり、『VOCの少ない製品の選択』が全国的に広がりつつある。その点、『FUJI・M・O』や水性グラビア印刷は、VOCの発生が極めて少なく、社会的な潮流にマッチした技術である。安倍首相には、こうした独自技術の開発経緯や具体的なメリットなどについて説明し、高く評価いただいた」
同社は今後、人や環境にやさしい印刷機として「FUJI・M・O」をさらに改良しながら積極的に活用していくほか、グラビア印刷工程・接着工程における有機溶剤の削減にも引き続き取り組み、職場環境のさらなる改善を目指す。
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富士特殊紙業は、地球環境問題、労働環境問題を改善し、包装する食品の安全を図るため、業界で初めて脱溶剤を掲げて「水性グラビア印刷技術」を開発し、実用化に成功したほか、2015年には富士フイルムとの共同プロジェクトによりデジタルグラビア印刷機「FUJI・M・O」(フジモ)を開発。この「UVインクジェットと水性グラビアのハイブリッド印刷機」が、昨今急速に進む小ロット・多品種化に対応する革新的な印刷技術であると高く評価されている。また、かねてから推進していた働き方改革や、女性や高齢者が活躍できる職場環境づくりにも「水性グラビア印刷技術」や「FUJI・M・O」が大きく貢献しているとして、今回の視察につながった。
同社は、女性や高齢者を含め、誰でもが安心して活躍できる職場環境づくりに長年取り組んでおり、「出産育児、介護支援制度」「66歳定年制」などを実施。また、女性だけでなく男性社員からも高く評価されているのが、事業所内に設置された保育所「あかつきキッズランド」。これは、いわゆるキッズスペースとは違い、乳児から幼児までの保育を目的とした独立した保育施設で、自社だけでなく近隣企業の従業員の子どもも預かっている。これらの取り組みが評価され、富士特殊紙業は「ダイバーシティ経営企業100選」「あいち女性輝きカンパニー」「障害者雇用優良企業」の認定を受けている。
商品開発面では、食品パッケージ印刷のパイオニアとして、有機溶剤を使用しない低環境負荷の印刷・加工方式を積極的に採用することで、「食の安心・安全」を社会に提供している。経験豊富な高齢技術者の技能を活かし、グラビア印刷技術の中でも極めて難易度の高い水性グラビア印刷の実用化を果たしたことで、より安全性の高い製品づくりが可能になり、商品価値の向上にもつながったほか、併せて開発した無溶剤ラミネート技術により、印刷からラミネート工程までを含めた有機溶剤フリーを実現した。
さらに、この水性グラビア印刷の技術を活かして富士フイルム、オリエント総業、ミヤコシと共同開発した「FUJI・M・O」は、急増する小ロットジョブに効率よく対応でき、ジョブ切り替え時もグラビア印刷用のシリンダー交換が白1版のみで済むため、作業負荷軽減に寄与。工場全体の生産性を大きく向上させているだけでなく、重いシリンダーの交換作業が軽減されたことで女性でも働きやすい職場環境が実現し、働き方改革にもつながっている。
職場環境改善の取り組みについて、同社の杉山会長はこう語っている。
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また、安倍首相視察の後、杉山会長は次のように語った。
「当社では『食品のおいしさを包む』という観点と、社員の健康を守るという目的から、積極的に水性化に取り組んでいる。また、VOCの削減は、東京都がオリンピックに向け重点的に取り組んでいる課題でもあり、『VOCの少ない製品の選択』が全国的に広がりつつある。その点、『FUJI・M・O』や水性グラビア印刷は、VOCの発生が極めて少なく、社会的な潮流にマッチした技術である。安倍首相には、こうした独自技術の開発経緯や具体的なメリットなどについて説明し、高く評価いただいた」
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