キーワードで検索

コダック、パッケージ分野におけるPROSPERシステムの可能性

執行役員 エンタープライズインクジェットシステム 本部長 河原 一郎 氏に聞く

2018年11月26日製品・テクノロジーマーケティング

 インクジェットの技術開発においておよそ50年の歴史を誇るコダック。2008年から市場投入したPROSPERプリントヘッドが「確立された技術」となり、DMの宛名印字分野でデファクトスタンダードとなった現在、次のターゲットとしてワールドワイドで販促を強化しているのがパッケージ分野だ。現在、新規の商談の約8割がパッケージ分野を対象としたものになっているという。そこで今回、執行役員エンタープライズインクジェットシステム本部長の河原一郎氏に、紙器・段ボール、軟包装分野に向けたソリューションについて聞いた。

河原 一郎 氏

 コダックのパッケージ分野向けインクジェットソリューションは大きく分けて「紙器パッケージ・段ボール」と「軟包装パッケージ」の2つ。それぞれでハイブリッドおよびフルカラーのソリューションを持つ。

 PROSPERシステムのコア技術となっているのがコンティニュアス方式の「Streamインクジェットテクノロジー」である。同技術によるドロップ生成メカニズムは、均等に配列されたノズルから加圧し、コンティニュアスインクジェットノズルで常に一定した液流を形成する。その液流が熱エネルギーの刺激を受けてインク液滴に分裂し、用紙方向あるいは再循環用のガターに向かって進むというもの。これに対してドロップ・オン・デマンド(DOD)方式の場合、ノズルからインクが常に出ているわけではなく、信号によってドロップを落とすため、使わないノズルは乾いてしまい「白抜け」という現象が起こる。これを避けるため、インク中にウェッティングエージェント(保湿剤)を混入させる必要があり、これが紙に塗布されると「乾きづらい」ということになる。Streamインクジェットテクノロジーには保湿剤が極めて少量なため、乾燥性が高く、高カバレッジの仕事への対応、あるいは用紙多様性というメリットをもたらす。比較的ベタが多いパッケージ分野に適していると言える。

PROSPERプリントヘッド

 さらにPROSPERの網点再現性の高さは実証済みだ。DODの着弾速度が8メートル/秒、ノズルから用紙までの距離が1〜2ミリで、強制的なエアー力を使わないのに対し、コンティニュアスは、着弾速度が20メートル/秒、ノズルから用紙までの距離が9ミリで、強制的なエアー力を使うことで正確な着弾精度を維持している。この特性により、コンティニュアス方式は印刷スピードの影響を受けず、均一で綺麗な網点を再現できるほか、ノズルと用紙の距離をとれることから、加工したDMや反りの大きい段ボール用紙などもノズルにぶつかることなく制御できる。

 一方、drupa2016で発表したULTRASTREAMの開発が最終段階に入っており、来年1月にジェネレーション3が完成する予定で、いよいよラインヘッドの供給が開始される。

 ULTRASTREAMは、小さいサイズのドロップを均一に落とし、印刷されない部分に電荷をチャージして、それを抜き取るという技術。印刷部分は電荷に影響されずに落ちてイメージを形成する。この技術により、インクサイズはStreamのおよそ1/3になり、各種の用紙やフィルムに最高150m/分の速度で600×1,800dpiの高精細印刷が可能となる。

 現在約20社のOEMベンダーと覚書を締結。既に法的拘束力のある開発契約に同意したベンダーもあり、いよいよ製品開発がスタートする。

 日本のパートナー企業には、富士機械工業や三菱重工機械システムを含む5社が名を連ねており、日本でも製品化の実現に向けて進めていきたい。

新着トピックス

mimaki_ujv300dtf-75_ij25_tn.jpg

ミマキ、UV-DTF市場に参入〜プリント形状の課題を解決

2025年10月1日製品・テクノロジー

 産業⽤インクジェットプリンタ、カッティングプロッタ、3Dプリンタを手掛ける(株)ミマキエンジニアリング(本社/長野県東御市、池田和明社長)は今年4月、同社初のUV-DTF(UV硬化式...全文を読む

prosper-smart-bar-heads_tn.jpg

コダック、パッケージ分野で新アプリケーション開拓へ

2025年9月30日製品・テクノロジースペシャリスト

 最速900メートル/分の超高速印刷が可能なPROSPERヘッドは、日本でもDM市場を中心に数百台が稼働しているが、コダックジャパン・プリント事業部デジタルプリンティング営業本部の河原...全文を読む

最新ニュース

screen_kyotogeidai_gekkeikan_tn.jpg

SCREEN、京都芸大・月桂冠と産学連携 - 学生デザインラベルの日本酒商品化

2025年10月8日

 京都市立芸術大学(以下「京都芸大」)、月桂冠(株)、(株)SCREENグラフィックソリューションズ(以下「SCREEN」)の3者は、産学連携による共同プロジェクトを実施し、京都芸大・...全文を読む

33mimaki251001_tn.jpg

ミマキ、OGBS2025で昇華転写用IJプリンタ「TS200」を国内初披露

2025年10月2日

 (株)ミマキエンジニアリング(本社/長野県東御市、池田和明社長)は、9月30日と10月1日に東京・池袋のサンシャインシティにおいて開催されたオーダーグッズビジネスショー(OGBS)2...全文を読む

swissQ251001_tn.jpg

swissQprint Japan、VIPオープンハウスウィーク-10月28日〜31日

2025年10月1日

 swissQprint Japan(株)(本社/横浜市港北区新横浜3-2-6、アドリアーノ・グット社長)は、顧客の要望に応え、最新世代のフラットベッドプリンタを紹介するオープンハウス...全文を読む

コダック、パッケージ分野におけるPROSPERシステムの可能性

執行役員 エンタープライズインクジェットシステム 本部長 河原 一郎 氏に聞く

2018年11月26日製品・テクノロジーマーケティング

  • twitter
  • facebook
  • line

 インクジェットの技術開発においておよそ50年の歴史を誇るコダック。2008年から市場投入したPROSPERプリントヘッドが「確立された技術」となり、DMの宛名印字分野でデファクトスタンダードとなった現在、次のターゲットとしてワールドワイドで販促を強化しているのがパッケージ分野だ。現在、新規の商談の約8割がパッケージ分野を対象としたものになっているという。そこで今回、執行役員エンタープライズインクジェットシステム本部長の河原一郎氏に、紙器・段ボール、軟包装分野に向けたソリューションについて聞いた。

河原 一郎 氏

 コダックのパッケージ分野向けインクジェットソリューションは大きく分けて「紙器パッケージ・段ボール」と「軟包装パッケージ」の2つ。それぞれでハイブリッドおよびフルカラーのソリューションを持つ。

 PROSPERシステムのコア技術となっているのがコンティニュアス方式の「Streamインクジェットテクノロジー」である。同技術によるドロップ生成メカニズムは、均等に配列されたノズルから加圧し、コンティニュアスインクジェットノズルで常に一定した液流を形成する。その液流が熱エネルギーの刺激を受けてインク液滴に分裂し、用紙方向あるいは再循環用のガターに向かって進むというもの。これに対してドロップ・オン・デマンド(DOD)方式の場合、ノズルからインクが常に出ているわけではなく、信号によってドロップを落とすため、使わないノズルは乾いてしまい「白抜け」という現象が起こる。これを避けるため、インク中にウェッティングエージェント(保湿剤)を混入させる必要があり、これが紙に塗布されると「乾きづらい」ということになる。Streamインクジェットテクノロジーには保湿剤が極めて少量なため、乾燥性が高く、高カバレッジの仕事への対応、あるいは用紙多様性というメリットをもたらす。比較的ベタが多いパッケージ分野に適していると言える。

PROSPERプリントヘッド

 さらにPROSPERの網点再現性の高さは実証済みだ。DODの着弾速度が8メートル/秒、ノズルから用紙までの距離が1〜2ミリで、強制的なエアー力を使わないのに対し、コンティニュアスは、着弾速度が20メートル/秒、ノズルから用紙までの距離が9ミリで、強制的なエアー力を使うことで正確な着弾精度を維持している。この特性により、コンティニュアス方式は印刷スピードの影響を受けず、均一で綺麗な網点を再現できるほか、ノズルと用紙の距離をとれることから、加工したDMや反りの大きい段ボール用紙などもノズルにぶつかることなく制御できる。

 一方、drupa2016で発表したULTRASTREAMの開発が最終段階に入っており、来年1月にジェネレーション3が完成する予定で、いよいよラインヘッドの供給が開始される。

 ULTRASTREAMは、小さいサイズのドロップを均一に落とし、印刷されない部分に電荷をチャージして、それを抜き取るという技術。印刷部分は電荷に影響されずに落ちてイメージを形成する。この技術により、インクサイズはStreamのおよそ1/3になり、各種の用紙やフィルムに最高150m/分の速度で600×1,800dpiの高精細印刷が可能となる。

 現在約20社のOEMベンダーと覚書を締結。既に法的拘束力のある開発契約に同意したベンダーもあり、いよいよ製品開発がスタートする。

 日本のパートナー企業には、富士機械工業や三菱重工機械システムを含む5社が名を連ねており、日本でも製品化の実現に向けて進めていきたい。

新着トピックス

新着ニュース

PAGE TOP