コダック、「PROSPER」ブランドをパッケージ分野へ展開
「高速処理=プライマー」- Stream技術の優位性とは
執行役員エンタープライズIJシステム本部長 河原一郎氏に聞く
2019年4月9日スペシャリスト
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パッケージ分野に適したコンティニュアスインクジェット
ULTRASTREAMのOEMベンダーには、段ボールや紙器、フレキシブルフィルムなど、パッケージ関連機器を手掛ける企業が多い。その背景には、やはりULTRASTREAM、引いては、PROSPERシステムのコア技術となっているコンティニュアス方式の「Streamインクジェットテクノロジー」の優位性に起因するものがある。
まず、ULTRASTREAMの幅の柔軟性が挙げられる。スペック上は24モジュールまでステッチングでき、2.47メートルまでの幅が可能である。ただ、2.47メートル幅でフルカラーバリアブルができるRIPのエンジンの開発が追いついていないため、現在のOEMベンダーとの契約は、印刷幅により優先順位を変えている。それでも、少なくとも1〜1.2メートル幅が必要とされるパッケージ分野においては現時点でもカバーできる。
一方、コンティニュアス方式の「Streamインクジェットテクノロジー」によるドロップ生成メカニズムは、均等に配列されたノズルから加圧し、コンティニュアスインクジェットノズルで常に一定した液流を形成する。その液流が熱エネルギーの刺激を受けてインク液滴に分裂し、用紙方向あるいは再循環用のガターに向かって進むというもの。これに対してドロップ・オン・デマンド(DOD)方式の場合、ノズルからインクが常に出ているわけではなく、信号によってドロップを落とすため、使わないノズルは乾いてしまい「白抜け」という現象が起こる。これを避けるため、インク中にウェッティングエージェント(保湿剤)を混入させる必要があり、これが紙に塗布されると「乾きづらい」ということになる。Streamインクジェットテクノロジーは保湿剤が極めて少量なため、乾燥性が高く、高カバレッジの仕事への対応、あるいは用紙多様性というメリットをもたらす。ベタが多いパッケージ分野に適していると言える。
「乾燥」について、こんな余談がある。去年5月に我々がUteco社を訪れたとき、「Sapphire EVO」の1号機が組み上がっていた。しかし、ラミネートを含めたトータルなテストの中で様々な課題に直面したという。その理由は、インクの乾燥に問題があったからだ。150メートル/分で印刷して巻き取り、裏移りしないという状況が乾燥度合いの今までの指標(とくに紙の場合)であった。しかし、その後のラミネート工程まで考慮すると話が違ってくる。ラミネート作業の際、中に残っている水分が、たとえ微小であろうと接着不良の原因となる。この問題については、さらに沸点の低い改良インクを開発し、改善した。コダックがプリントヘッド並びにケミカル両方の開発を手掛ける会社である所以である。コンティニュアス方式のインクでも100〜150メートル/分クラスになるとそういう状況。保湿剤の割合が多いDOD用のインクだとなおさら高速化は難しいだろう。
一方、PROSPERの網点再現性の高さも大きなアドバンテージだ。DODの着弾速度が8メートル/秒、ノズルから用紙までの距離が1〜2ミリで、強制的なエアー力を使わないのに対し、コンティニュアスは、着弾速度が20メートル/秒、ノズルから用紙までの距離が9ミリで、強制的なエアー力を使うことで正確な着弾精度を維持している。この特性により、コンティニュアス方式は印刷スピードの影響を受けず、均一で綺麗な網点を再現できるほか、ノズルと用紙の距離をとれることから、加工したDMや反りの大きい段ボール用紙などもノズルにぶつかることなく制御できる。さらに、プライマーとしてコート紙用、上質紙用に加え、フレキシブルフィルム用をラインアップしていることも優位性のひとつである。これら複合的な優位性が、プロダクション用途に絶えうる高速化を実現しており、これまでインクジェットで対応できなかったパッケージのマーケットのニーズに最適な結果となっている。
さらに、根本的に食品パッケージ分野における「水性」という優位性もあるだろう。およそ50年間、「コンティニュアス」「水性」を貫いてきたコダックの思想に時代が追いついてきたという感じではないだろうか。
「紙の価格差」によるプライマー活用
ここ最近、「高速化=プライマー」という方程式が見えてきた。トータル的に見て、高速処理を目的とするプロダクション機においてプライミングは非常に重要であるという認識だ。欧米でもDMなどはインラインもしくはニアラインによるプライミングによってオフセット用紙を使うケースが急増している。その背景には「紙の価格差」がある。
PROSPER PRESSなどのフルカラーの分野だと上質紙が多く、その世界ではインクジェット塗工紙が流通していることから、オフセット用とインクジェット用の価格は1対1.2程度。ほとんどがインクジェット用の上質紙を使う。しかしコート系になると、その価格差は1対2.5くらいとかなり違ってくる。これでは大量処理を前提とした受注は難しい。アメリカでも1対1.6くらいの価格差があるという。ましてやパッケージ用の厚紙の場合、そもそもインクジェット紙はあまり販売されていない。そうなるとオフセットの紙をプライミングすることでコストを抑えることになる。ただ、そこでコーター機に5,000〜6,000万円を投資できるほどの仕事量があるのか。その投資を埋めることができるボリュームさえあれば話しは早いわけだが...。いずれにせよ、アメリカでは、DMのマーケットで、コート系の紙にフルカラーバリアブルのパーソナライズ、大量処理というケースが増えており、プライマー活用がそのひとつの答えだと確信している。
日本でパーソナライズのバリアブルダイレクトメール実現へ
現在、日本国内におけるPROSPER PRESSユーザーはトッパンフォームズ様のみ。5台が24時間フル稼働状態でかなりの生産高を誇り、世界的にも大成功している事例だ。しかし、日本でこのような超大量のフルカラーバリアブルの仕事を持つ会社は、なかなかない。
PROSPER PRESSの場合、A4片面2,000万ページが導入におけるひとつの目安になる。PROSPER PRESSは、生産性は高いが、イニシャルコストが高い。しかしランニングコストは低い。一方、DODの場合、生産性はその半分で、イニシャルコストは低いが、ランニングコストが高い。
プリントボリュームが多くなれば、減価償却を含め、ある部分で1ページ当たりの単価がブレイクイーブンになり、それ以上になればPROSPERの価格優位性が際立つラインに到達する。そこをクリアするほどの仕事をもつ会社はなかなかないものの、今年は日本においてもパーソナライズのバリアブルダイレクトメールの市場拡大の実現に挑戦したいと考えている。現在のところ。日本においてこのクラスのボリュームの事例はほとんどない。
コート系の紙にプライマーを施し、パーソナライズで綺麗なDMを大量に処理する。そのマーケットを開拓しないと我々の生きる道はない。いま、その可能性を感じはじめている。
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まず、ULTRASTREAMの幅の柔軟性が挙げられる。スペック上は24モジュールまでステッチングでき、2.47メートルまでの幅が可能である。ただ、2.47メートル幅でフルカラーバリアブルができるRIPのエンジンの開発が追いついていないため、現在のOEMベンダーとの契約は、印刷幅により優先順位を変えている。それでも、少なくとも1〜1.2メートル幅が必要とされるパッケージ分野においては現時点でもカバーできる。
一方、コンティニュアス方式の「Streamインクジェットテクノロジー」によるドロップ生成メカニズムは、均等に配列されたノズルから加圧し、コンティニュアスインクジェットノズルで常に一定した液流を形成する。その液流が熱エネルギーの刺激を受けてインク液滴に分裂し、用紙方向あるいは再循環用のガターに向かって進むというもの。これに対してドロップ・オン・デマンド(DOD)方式の場合、ノズルからインクが常に出ているわけではなく、信号によってドロップを落とすため、使わないノズルは乾いてしまい「白抜け」という現象が起こる。これを避けるため、インク中にウェッティングエージェント(保湿剤)を混入させる必要があり、これが紙に塗布されると「乾きづらい」ということになる。Streamインクジェットテクノロジーは保湿剤が極めて少量なため、乾燥性が高く、高カバレッジの仕事への対応、あるいは用紙多様性というメリットをもたらす。ベタが多いパッケージ分野に適していると言える。
「乾燥」について、こんな余談がある。去年5月に我々がUteco社を訪れたとき、「Sapphire EVO」の1号機が組み上がっていた。しかし、ラミネートを含めたトータルなテストの中で様々な課題に直面したという。その理由は、インクの乾燥に問題があったからだ。150メートル/分で印刷して巻き取り、裏移りしないという状況が乾燥度合いの今までの指標(とくに紙の場合)であった。しかし、その後のラミネート工程まで考慮すると話が違ってくる。ラミネート作業の際、中に残っている水分が、たとえ微小であろうと接着不良の原因となる。この問題については、さらに沸点の低い改良インクを開発し、改善した。コダックがプリントヘッド並びにケミカル両方の開発を手掛ける会社である所以である。コンティニュアス方式のインクでも100〜150メートル/分クラスになるとそういう状況。保湿剤の割合が多いDOD用のインクだとなおさら高速化は難しいだろう。
一方、PROSPERの網点再現性の高さも大きなアドバンテージだ。DODの着弾速度が8メートル/秒、ノズルから用紙までの距離が1〜2ミリで、強制的なエアー力を使わないのに対し、コンティニュアスは、着弾速度が20メートル/秒、ノズルから用紙までの距離が9ミリで、強制的なエアー力を使うことで正確な着弾精度を維持している。この特性により、コンティニュアス方式は印刷スピードの影響を受けず、均一で綺麗な網点を再現できるほか、ノズルと用紙の距離をとれることから、加工したDMや反りの大きい段ボール用紙などもノズルにぶつかることなく制御できる。
さらに、プライマーとしてコート紙用、上質紙用に加え、フレキシブルフィルム用をラインアップしていることも優位性のひとつである。これら複合的な優位性が、プロダクション用途に絶えうる高速化を実現しており、これまでインクジェットで対応できなかったパッケージのマーケットのニーズに最適な結果となっている。
さらに、根本的に食品パッケージ分野における「水性」という優位性もあるだろう。およそ50年間、「コンティニュアス」「水性」を貫いてきたコダックの思想に時代が追いついてきたという感じではないだろうか。
「紙の価格差」によるプライマー活用
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PROSPER PRESSなどのフルカラーの分野だと上質紙が多く、その世界ではインクジェット塗工紙が流通していることから、オフセット用とインクジェット用の価格は1対1.2程度。ほとんどがインクジェット用の上質紙を使う。しかしコート系になると、その価格差は1対2.5くらいとかなり違ってくる。これでは大量処理を前提とした受注は難しい。アメリカでも1対1.6くらいの価格差があるという。ましてやパッケージ用の厚紙の場合、そもそもインクジェット紙はあまり販売されていない。そうなるとオフセットの紙をプライミングすることでコストを抑えることになる。ただ、そこでコーター機に5,000〜6,000万円を投資できるほどの仕事量があるのか。その投資を埋めることができるボリュームさえあれば話しは早いわけだが...。いずれにせよ、アメリカでは、DMのマーケットで、コート系の紙にフルカラーバリアブルのパーソナライズ、大量処理というケースが増えており、プライマー活用がそのひとつの答えだと確信している。
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PROSPER PRESSの場合、A4片面2,000万ページが導入におけるひとつの目安になる。PROSPER PRESSは、生産性は高いが、イニシャルコストが高い。しかしランニングコストは低い。一方、DODの場合、生産性はその半分で、イニシャルコストは低いが、ランニングコストが高い。
プリントボリュームが多くなれば、減価償却を含め、ある部分で1ページ当たりの単価がブレイクイーブンになり、それ以上になればPROSPERの価格優位性が際立つラインに到達する。そこをクリアするほどの仕事をもつ会社はなかなかないものの、今年は日本においてもパーソナライズのバリアブルダイレクトメールの市場拡大の実現に挑戦したいと考えている。現在のところ。日本においてこのクラスのボリュームの事例はほとんどない。
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