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関西美術印刷、美術印刷を凌駕する表現力と安定感[Jet Press 750S導入事例]

学校アルバムと同人誌〜工程最適化で働き方改革にも貢献

2020年4月3日ケーススタディ

 「信頼される製品づくり」─学校アルバムで知られる関西美術印刷(株)(本社/奈良市西木辻町153-1、西田晴彦社長)は昨年11月、富士フイルムの商業印刷向け枚葉インクジェットデジタルプレスの第3世代機「Jet Press 750S」を導入。学校アルバムで培った美術印刷の技術品質をデジタル印刷の世界で表現するとともに、いまや主力事業に成長した同人誌のカラー表紙へも展開。Jet Pressは、ブレのない安定感と滑らかな表現という品質面に加え、平均ロット100部以下と言われる両事業において工程の最適化による製造コスト低減をもたらし、さらには働き方改革にも貢献するなど、多くの導入効果を弾き出している。

執行役員・プロダクショングループの増田朋幸部長

同人誌参入で収益構造に大きな変化

 製本業として創業後、その技術を活かして学校アルバムの専業メーカーとして古都・奈良の地で産声をあげた関西美術印刷。その名の通り、設立以来、写真表現において高度な美術印刷の技術を追求することで、写真品質に目の肥えた写真館の要求、需要に応え、その地位を確立してきた。

 54年の社歴のおよそ半分強を学校アルバム専業メーカーとして歩んできた同社だが、DTPの普及を機に、その事業領域を一般商業印刷へと広げるとともに、現在と比べるとまだまだ黎明期だったと言える同人誌の世界に着目。学校アルバムで培った技術を同人誌の世界に転用し、当時、モノクロが主体だった同人誌の表紙のカラー化を推進した。同事業について同社執行役員・プロダクショングループの増田朋幸部長は「季節物で小ロットの学校アルバムという性質上、付け合わせ、今で言う『ギャンギング』を当たり前のように20年以上前からやっていた。その技術で低コストを実現するとともに、学校アルバムで培ってきた美術印刷の技術で高品質なカラー表紙を提供することで同人誌事業は加速度的な成長を遂げた」と当時を振り返る。8月と12月に大きなイベントがある同人誌の事業は、学校アルバムの繁忙期の合間を埋める形となることから、その相性も良い。さらに、冊子だけに留まらず、それに派生するグッズへの展開も好調だ。当時、売上の9割以上を占めていた学校アルバムは、現在3割程度であるのに対し、同人誌事業はそれを上回る4割を占めるメイン事業へと成長し、同社の収益構造に大きな変化をもたらしている。

「kanbi品質」を担保できるJetPress

 同社の両輪とも言える学校アルバムと同人誌。言うまでもなく、いずれも100部以下が平均ロットとなる。そこで当然のことながら同社でもデジタル印刷機の活用を視野に入れてきたわけだが、高級美術印刷に企業価値を見出してきた同社にとって、いくら極小ロットの仕事であってもPOD品質で世に送り出すことにジレンマを抱えていたという。増田部長は「Jet Pressは、そのジレンマを解消し、『kanbi品質』の印刷物を、自信を持って世に送り出せるデジタル印刷機」と評価する。

Jet Press 750S

 Jet Pressについて、増田部長がまず経営的なメリットとして挙げるのがヤレ紙削減である。写真中心の学校アルバムをオフセット印刷で100部刷るとなると、見当や色合わせで少なくとも同枚数のヤレ紙が発生するだろう。それだけ手間と時間もかかる。JetPressなら極端な話、1枚目からOKシートが得られ、多く見積もっても30枚、平均10枚程度のヤレ紙で済む。無版であることに加え、ヤレ紙削減による製造コストの抑制効果は大きい。「サイズや紙質を統一した運用を試みることで、さらなるコストダウンが可能と考えている」(増田部長)

 さらに、「人手不足」が深刻化する中、「働き方改革」への対応も迫られる印刷会社にとって「スキルレス化」「省人化」「多能工化」への取り組みは必須だ。「職人の腕」に左右されるオフセット印刷に対し、「職人いらず」のJet Pressは大きな武器になる。

 一方、品質面において増田部長は「ブレのない安定感」と評価する。例えば、学校アルバムの生徒の個人写真は同じ背景で撮影されることが多い。その背景の色にブレがなく、ページ間の統一性も担保できる。また、同人誌の表紙ではグラデーションや平網、ベタがよく使われるが、ローラーのショック目や左右の色ムラに気を配りながら職人が機械を調整するオフセット印刷に対し、Jet Pressなら美しく綺麗な品質を簡単に再現できる。また、多面付けの場合も、紙面の中のどの部分をとっても見当や濃度にブレがない。そのため同人誌から派生した缶バッチへの印刷の仕事もJet Pressへ移行させているという。

 さらに、学校アルバムには欠かせない「人肌」の表現。「顔には陰影がある。光が当たっている部分と当たっていない部分の繋がりは、オフセットの場合、印圧などに影響を受けるが、Jet Pressの場合は非常に滑らかだ」。これらが増田部長の評価する「安定感」である。加えて、画像部を全面スキャンする方式を採用した描画品質検査機能(インラインセンサー)もその「安定感」を下支えしており、出力後の検品・仕分け工数の削減に貢献している。

 同人誌は、100部以下が中心の世界だが、「作品」という意味からも、その品質要求は高い。「作者にとってはRGBのモニター上の色がすべてであり、プリンタさえ持っていない方もいる。これに対しても、ストレートでデータロスのないRGB表現が可能なJetPressはマッチしている」(増田部長)とし、同人誌の表紙、ケースはすべてJet Pressに移行しているという。さらに、Jet Pressには、その機能を最大限に引き出す「フルガモットモード」がある。これはRGBの色域をカバーするモードで、グリーンやオレンジを鮮やかに表現でき、同人誌には打って付けの機能だ。増田部長は「これは同人誌の分野において競争力を発揮できる機能。今後、ひとつの売りにしていきたい」と語っている。

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学校アルバムと同人誌〜工程最適化で働き方改革にも貢献

2020年4月3日ケーススタディ

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 「信頼される製品づくり」─学校アルバムで知られる関西美術印刷(株)(本社/奈良市西木辻町153-1、西田晴彦社長)は昨年11月、富士フイルムの商業印刷向け枚葉インクジェットデジタルプレスの第3世代機「Jet Press 750S」を導入。学校アルバムで培った美術印刷の技術品質をデジタル印刷の世界で表現するとともに、いまや主力事業に成長した同人誌のカラー表紙へも展開。Jet Pressは、ブレのない安定感と滑らかな表現という品質面に加え、平均ロット100部以下と言われる両事業において工程の最適化による製造コスト低減をもたらし、さらには働き方改革にも貢献するなど、多くの導入効果を弾き出している。

執行役員・プロダクショングループの増田朋幸部長

同人誌参入で収益構造に大きな変化

 製本業として創業後、その技術を活かして学校アルバムの専業メーカーとして古都・奈良の地で産声をあげた関西美術印刷。その名の通り、設立以来、写真表現において高度な美術印刷の技術を追求することで、写真品質に目の肥えた写真館の要求、需要に応え、その地位を確立してきた。

 54年の社歴のおよそ半分強を学校アルバム専業メーカーとして歩んできた同社だが、DTPの普及を機に、その事業領域を一般商業印刷へと広げるとともに、現在と比べるとまだまだ黎明期だったと言える同人誌の世界に着目。学校アルバムで培った技術を同人誌の世界に転用し、当時、モノクロが主体だった同人誌の表紙のカラー化を推進した。同事業について同社執行役員・プロダクショングループの増田朋幸部長は「季節物で小ロットの学校アルバムという性質上、付け合わせ、今で言う『ギャンギング』を当たり前のように20年以上前からやっていた。その技術で低コストを実現するとともに、学校アルバムで培ってきた美術印刷の技術で高品質なカラー表紙を提供することで同人誌事業は加速度的な成長を遂げた」と当時を振り返る。8月と12月に大きなイベントがある同人誌の事業は、学校アルバムの繁忙期の合間を埋める形となることから、その相性も良い。さらに、冊子だけに留まらず、それに派生するグッズへの展開も好調だ。当時、売上の9割以上を占めていた学校アルバムは、現在3割程度であるのに対し、同人誌事業はそれを上回る4割を占めるメイン事業へと成長し、同社の収益構造に大きな変化をもたらしている。

「kanbi品質」を担保できるJetPress

 同社の両輪とも言える学校アルバムと同人誌。言うまでもなく、いずれも100部以下が平均ロットとなる。そこで当然のことながら同社でもデジタル印刷機の活用を視野に入れてきたわけだが、高級美術印刷に企業価値を見出してきた同社にとって、いくら極小ロットの仕事であってもPOD品質で世に送り出すことにジレンマを抱えていたという。増田部長は「Jet Pressは、そのジレンマを解消し、『kanbi品質』の印刷物を、自信を持って世に送り出せるデジタル印刷機」と評価する。

Jet Press 750S

 Jet Pressについて、増田部長がまず経営的なメリットとして挙げるのがヤレ紙削減である。写真中心の学校アルバムをオフセット印刷で100部刷るとなると、見当や色合わせで少なくとも同枚数のヤレ紙が発生するだろう。それだけ手間と時間もかかる。JetPressなら極端な話、1枚目からOKシートが得られ、多く見積もっても30枚、平均10枚程度のヤレ紙で済む。無版であることに加え、ヤレ紙削減による製造コストの抑制効果は大きい。「サイズや紙質を統一した運用を試みることで、さらなるコストダウンが可能と考えている」(増田部長)

 さらに、「人手不足」が深刻化する中、「働き方改革」への対応も迫られる印刷会社にとって「スキルレス化」「省人化」「多能工化」への取り組みは必須だ。「職人の腕」に左右されるオフセット印刷に対し、「職人いらず」のJet Pressは大きな武器になる。

 一方、品質面において増田部長は「ブレのない安定感」と評価する。例えば、学校アルバムの生徒の個人写真は同じ背景で撮影されることが多い。その背景の色にブレがなく、ページ間の統一性も担保できる。また、同人誌の表紙ではグラデーションや平網、ベタがよく使われるが、ローラーのショック目や左右の色ムラに気を配りながら職人が機械を調整するオフセット印刷に対し、Jet Pressなら美しく綺麗な品質を簡単に再現できる。また、多面付けの場合も、紙面の中のどの部分をとっても見当や濃度にブレがない。そのため同人誌から派生した缶バッチへの印刷の仕事もJet Pressへ移行させているという。

 さらに、学校アルバムには欠かせない「人肌」の表現。「顔には陰影がある。光が当たっている部分と当たっていない部分の繋がりは、オフセットの場合、印圧などに影響を受けるが、Jet Pressの場合は非常に滑らかだ」。これらが増田部長の評価する「安定感」である。加えて、画像部を全面スキャンする方式を採用した描画品質検査機能(インラインセンサー)もその「安定感」を下支えしており、出力後の検品・仕分け工数の削減に貢献している。

 同人誌は、100部以下が中心の世界だが、「作品」という意味からも、その品質要求は高い。「作者にとってはRGBのモニター上の色がすべてであり、プリンタさえ持っていない方もいる。これに対しても、ストレートでデータロスのないRGB表現が可能なJetPressはマッチしている」(増田部長)とし、同人誌の表紙、ケースはすべてJet Pressに移行しているという。さらに、Jet Pressには、その機能を最大限に引き出す「フルガモットモード」がある。これはRGBの色域をカバーするモードで、グリーンやオレンジを鮮やかに表現でき、同人誌には打って付けの機能だ。増田部長は「これは同人誌の分野において競争力を発揮できる機能。今後、ひとつの売りにしていきたい」と語っている。

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