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関西美術印刷、美術印刷を凌駕する表現力と安定感[Jet Press 750S導入事例]

学校アルバムと同人誌〜工程最適化で働き方改革にも貢献

2020年4月3日ケーススタディ

決め手は第3世代の登場

 Jet Press導入の検討を開始したのはおよそ2年前。菊半4色機の老朽化にともなう更新需要でもあった。Jet Pressについて当時から「学校アルバムに向いているデジタル印刷機」という認識はあったものの、同人誌や一般商業印刷での活用の可能性を模索していたという。

 一方で、「UVインクはどうしても粒状感があり、アルバム品質には向いていないと感じていた。やはり写真の滑らかな階調表現には水性インクがマッチする」と増田部長。そして最終的な決定打となったのが第3世代「Jet Press 750S」の上市だった。

 「第2世代のJet Press 720Sに対して、薄紙の両面印刷適性が向上していた。ドラムに吸着する部分の機構や乾燥機構の改良の効果もあるようだが、紙の波打ちがなく、フラットな印刷物が仕上がり、製本適性も向上していた。『小ロット両面』の同人誌のフルカラー冊子にも十分対応できると確信した」(増田部長)

 Jet Press 750Sは、プリントヘッドの打滴速度を高速化させ、さらにインク吐出量の制御を高精度化し、新たな乾燥機構の採用によって毎時3600枚(「720S」の1.3倍)という高速出力を実現。また、印刷用紙をベルトコンベアに密着させて直接熱を与える新たな乾燥機構により消費電力を約20%削減。乾燥装置本体の全長が従来機に比べ70センチ短縮したため、設置面積も約15%削減し、省スペース化を実現している。

 本稼働に入ったのは昨年11月。取材中、導入後初の繁忙期を迎えていたわけだが、その効果は「働き方改革」にも大きく貢献しているという。

 「オフセットは版待ち、Jet Pressはデータ待ちの状態を維持し、仕事の進行も前年と比べると約1週間前倒しで進んでいる。毎年慣例化していた繁忙期の残業が激減し、休日出勤においては、今年はゼロでいける見込み」(増田部長)

 また、Jet Press 750Sでは、最大用紙サイズが750×585ミリに拡大されていることから、オフセットでは四六四裁1丁付けで印刷していた学校アルバムの表紙が2丁付けできるようになった。表紙の進行はおよそ1ヵ月前倒しで進行しており、工程全体の進捗を早める要因にもなっている。「これが最大の効果かもしれない」と増田部長は笑みを浮かべる。

 「見た目が綺麗で、発色のある『ウケの良い印刷物』が仕上がる」と評価する増田部長は、Jet Press品質を「オフセットを超える品質」、あるいは「データ作成者が満足できる品質」と表現している。学校アルバムに関するJet Press比率は、現在のところ全体の2割程度だが、「まだまだ増やせる、増やしたい。当面の目標は全体の5割まで持っていきたいが、将来的に学校アルバムは100%Jet Pressに移行してもいいと考えている。それだけ手応えを感じている」(増田部長)という。

普遍的な価値を大切に

 「Jet Pressは使えば使うほど学校アルバム適性を感じる。実際、アルバム業界での実績、認知が写真館の顧客にも広がっており、いまでは『Jet Press指定』の顧客もいる」とし、増設も視野に入れながらJet Press比率を高めていく考えだ。

 また、これまでトナー機でオフセット印刷後に追刷りしていたバリアブル印字についても、同人誌から派生するイベントなどのチケットに対して高品質なイラスト入りのナンバリングが可能になる。さらに、現在では外注しているフォトブック製造の内製化も視野に入れており、Jet Pressを軸とした新たなビジネスが動き出そうとしている。

 同社は今後、学校アルバムで培ってきた高度な印刷・加工技術をベースに、「捨てられない印刷物(商品)」をコンセプトとした事業を展開していく一方で、グッズ関連をはじめとする紙メディアにとらわれない商社的な機能も高めていきたいとしている。「学校アルバムの重量は50g〜1kg。そんなスマートフォンより重いものを手にとって見てもらう。そういう人間の普遍的な価値を大切にしながら紙の良さを伝えていきたい」(増田部長)

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決め手は第3世代の登場

 Jet Press導入の検討を開始したのはおよそ2年前。菊半4色機の老朽化にともなう更新需要でもあった。Jet Pressについて当時から「学校アルバムに向いているデジタル印刷機」という認識はあったものの、同人誌や一般商業印刷での活用の可能性を模索していたという。

 一方で、「UVインクはどうしても粒状感があり、アルバム品質には向いていないと感じていた。やはり写真の滑らかな階調表現には水性インクがマッチする」と増田部長。そして最終的な決定打となったのが第3世代「Jet Press 750S」の上市だった。

 「第2世代のJet Press 720Sに対して、薄紙の両面印刷適性が向上していた。ドラムに吸着する部分の機構や乾燥機構の改良の効果もあるようだが、紙の波打ちがなく、フラットな印刷物が仕上がり、製本適性も向上していた。『小ロット両面』の同人誌のフルカラー冊子にも十分対応できると確信した」(増田部長)

 Jet Press 750Sは、プリントヘッドの打滴速度を高速化させ、さらにインク吐出量の制御を高精度化し、新たな乾燥機構の採用によって毎時3600枚(「720S」の1.3倍)という高速出力を実現。また、印刷用紙をベルトコンベアに密着させて直接熱を与える新たな乾燥機構により消費電力を約20%削減。乾燥装置本体の全長が従来機に比べ70センチ短縮したため、設置面積も約15%削減し、省スペース化を実現している。

 本稼働に入ったのは昨年11月。取材中、導入後初の繁忙期を迎えていたわけだが、その効果は「働き方改革」にも大きく貢献しているという。

 「オフセットは版待ち、Jet Pressはデータ待ちの状態を維持し、仕事の進行も前年と比べると約1週間前倒しで進んでいる。毎年慣例化していた繁忙期の残業が激減し、休日出勤においては、今年はゼロでいける見込み」(増田部長)

 また、Jet Press 750Sでは、最大用紙サイズが750×585ミリに拡大されていることから、オフセットでは四六四裁1丁付けで印刷していた学校アルバムの表紙が2丁付けできるようになった。表紙の進行はおよそ1ヵ月前倒しで進行しており、工程全体の進捗を早める要因にもなっている。「これが最大の効果かもしれない」と増田部長は笑みを浮かべる。

 「見た目が綺麗で、発色のある『ウケの良い印刷物』が仕上がる」と評価する増田部長は、Jet Press品質を「オフセットを超える品質」、あるいは「データ作成者が満足できる品質」と表現している。学校アルバムに関するJet Press比率は、現在のところ全体の2割程度だが、「まだまだ増やせる、増やしたい。当面の目標は全体の5割まで持っていきたいが、将来的に学校アルバムは100%Jet Pressに移行してもいいと考えている。それだけ手応えを感じている」(増田部長)という。

普遍的な価値を大切に

 「Jet Pressは使えば使うほど学校アルバム適性を感じる。実際、アルバム業界での実績、認知が写真館の顧客にも広がっており、いまでは『Jet Press指定』の顧客もいる」とし、増設も視野に入れながらJet Press比率を高めていく考えだ。

 また、これまでトナー機でオフセット印刷後に追刷りしていたバリアブル印字についても、同人誌から派生するイベントなどのチケットに対して高品質なイラスト入りのナンバリングが可能になる。さらに、現在では外注しているフォトブック製造の内製化も視野に入れており、Jet Pressを軸とした新たなビジネスが動き出そうとしている。

 同社は今後、学校アルバムで培ってきた高度な印刷・加工技術をベースに、「捨てられない印刷物(商品)」をコンセプトとした事業を展開していく一方で、グッズ関連をはじめとする紙メディアにとらわれない商社的な機能も高めていきたいとしている。「学校アルバムの重量は50g〜1kg。そんなスマートフォンより重いものを手にとって見てもらう。そういう人間の普遍的な価値を大切にしながら紙の良さを伝えていきたい」(増田部長)

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