「KICK START」は、リコージャパン(株)と印刷会社が共創することで新たな価値創造に取り組む活動だ。2019年より開始された、この取り組みは、「印刷会社×リコージャパン」、つまり印刷会社が持つ強みとリコージャパンが持つ強みを掛け合わせることで、今までにない新しい価値やビジネスを創り出すことを目的としている。今回、同社・PP事業部 CIPマーケティング推進室の小松紀之氏に、この活動が印刷業界にもたらす可能性や今後の展開などについて聞いた。
印刷需要が減少傾向にある現在の市場環境において、印刷業界は、従来ビジネスに依存するのではなく、新たな発想や仕組みによる新需要創出が求められている。
「KICK START」は、印刷会社がこれまでの業務で培ってきた「コンテンツ」「デザイン」「プロモーション」「企画」などの技術やノウハウと、同社が提供する「プロジェクション」「サイネージ」「デジタル印刷」「イベントソリューション」などの製品やサービスを融合することで、新たな価値をともに創造し、市場に提供していくことを目的としている。
同社が、この取り組みを開始した背景には、激変する市場環境の中で、縮小傾向にある紙メディアへの対応があると小松氏は説明する。
「リコーは、これまで複写機をはじめ、紙を出力する機器販売を手がけてきたが、市場環境の変化により、これら事業は年々、減少傾向にある。一方、印刷業界の出荷額も1991年の8.9兆円をピークに直近の数値では4兆円台にまで減少している。つまり、当社も印刷会社も情報伝達のメディアとして紙を中心としたビジネスだけでなく、新たな情報伝達メディアに対応していくことが急務であった」
互いの強みを融合
紙の出力減少を背景に同社では、「ビジュアルコミュニケーション」というコンセプトのもと、デジタルサイネージやプロジェクターなど、紙以外の情報伝達ソリューションの充実化を図ってきた。しかし、これらソリューションの機能を最大限に発揮するには、同社だけでは限界がある。それはビジュアルコミュニケーションを活かすコンテンツだ。逆にコンテンツを駆使し、様々な印刷物を市場へ提供しているのは印刷会社である。そこで同社は、これらソリューションを印刷会社に提案・提供することで、新たな価値を生み出すことができると判断した。
「アウトプット製品を有する当社とコンテンツを有する印刷会社が手を組めば、紙だけで情報を伝達してきたコンテンツを紙以外の媒体として広く発信することができる。つまり、互いの強みと弱みを補完し合うことで新たな事業を確立できる」
そして同社は、2019年に「印刷会社×リコージャパン」をコンセプトに「KICK START」を立ち上げ、活動を開始した。
新たな印刷顧客の創出にもフォーカス
新型コロナウイルス感染拡大の終息が未だ見えない状況により、多くの企業が経営面で苦戦を強いられている。これは印刷会社も例外ではない。既存顧客だけで、売上を維持することにも限界があり、さらに紙を主軸とした業態だけでは、コロナ禍によって冷え切った市場で収益を上げていくことは難しい環境にある。やはり新たな顧客の創出が喫緊の課題となる。そこで同社が着目したのがECサイト構築による新規需要および新規顧客の創出である。
同社が実施したベンチマーク調査では、独自のECサイトを立ち上げて、厳しい市場環境下においても業績を伸ばしている印刷会社が数多く存在していたという。ECサイトの構築・運用となると、いわゆる「印刷通販」が連想されるが、現在では、大手印刷通販会社が設備力など駆使した「低価格・短納期」を武器に市場で躍進している。その市場に参入しても、価格や納期といった波に巻き込まれてしまう。
しかし、調査で判明したECサイトで業績を上げている印刷会社の共通点は、自社の強みに特化したサービスの提供、つまり、他の印刷通販では手がけていないような商品の提供だ。そしてECサイト自体を見ると、営業窓口として機能するECサイトであり、システム的にはアナログ的な要素も残している作りが多かった。同社もWeb to Printのシステムを販売しており、機能的にも高いパフォーマンスを発揮するが、その分、導入コストは高くなる。
成功ユーザーの運用状況を確認した小松氏は、フルスペックのシステムではなく、必要な機能だけをもったシンプル設計で安価なシステムの方が、多くの印刷会社のビジネスに貢献するはずと考えた。そこで同社は、アイ・モバイル(株)が提供するECサイトソリューション「スマートページ」を印刷業界向けにカスタマイズしたパッケージとして2020年10月より提供を開始。このECサイトソリューションの提供で新たな顧客の創出を支援している。
「印刷会社のホームページを見ると、注文受付フォームのようなものを構築しているものは少なく、『お問い合わせ』フォームが唯一のコンタクト手段となっているものが多かった。当社が提供するECサイトソリューションは、低コスト・低労力で、このような『お問い合わせ』フォームをECサイトの入り口に手軽に変えることができる」
ECサイトをリアルコミュニケーションの手段に
ベンチマークした印刷会社のECサイトは、完全にデジタル化されたものではなく、注文後にスタッフがメールや電話をするなど、アナログ作業が残っていた。この部分をデジタル化することで、さらなる効率化ができるのだが、あえてそこに手をつけていないという。
「小口注文を新規顧客との接点として電話やメールなどを活用しており、そこからコミュニケーションを密にし、大口の受注獲得につなげている」
各種デジタル印刷機で生産した多品種小ロットの特化商材などをECサイトで受注・販売することで顧客との接点を創出し、最終的には、オフセット印刷機で印刷できるような大口受注の獲得につなげていく。つまりECサイト自体を営業窓口にして活用できるということだ。
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「KICK START」は、リコージャパン(株)と印刷会社が共創することで新たな価値創造に取り組む活動だ。2019年より開始された、この取り組みは、「印刷会社×リコージャパン」、つまり印刷会社が持つ強みとリコージャパンが持つ強みを掛け合わせることで、今までにない新しい価値やビジネスを創り出すことを目的としている。今回、同社・PP事業部 CIPマーケティング推進室の小松紀之氏に、この活動が印刷業界にもたらす可能性や今後の展開などについて聞いた。
印刷需要が減少傾向にある現在の市場環境において、印刷業界は、従来ビジネスに依存するのではなく、新たな発想や仕組みによる新需要創出が求められている。
「KICK START」は、印刷会社がこれまでの業務で培ってきた「コンテンツ」「デザイン」「プロモーション」「企画」などの技術やノウハウと、同社が提供する「プロジェクション」「サイネージ」「デジタル印刷」「イベントソリューション」などの製品やサービスを融合することで、新たな価値をともに創造し、市場に提供していくことを目的としている。
同社が、この取り組みを開始した背景には、激変する市場環境の中で、縮小傾向にある紙メディアへの対応があると小松氏は説明する。
「リコーは、これまで複写機をはじめ、紙を出力する機器販売を手がけてきたが、市場環境の変化により、これら事業は年々、減少傾向にある。一方、印刷業界の出荷額も1991年の8.9兆円をピークに直近の数値では4兆円台にまで減少している。つまり、当社も印刷会社も情報伝達のメディアとして紙を中心としたビジネスだけでなく、新たな情報伝達メディアに対応していくことが急務であった」
互いの強みを融合
紙の出力減少を背景に同社では、「ビジュアルコミュニケーション」というコンセプトのもと、デジタルサイネージやプロジェクターなど、紙以外の情報伝達ソリューションの充実化を図ってきた。しかし、これらソリューションの機能を最大限に発揮するには、同社だけでは限界がある。それはビジュアルコミュニケーションを活かすコンテンツだ。逆にコンテンツを駆使し、様々な印刷物を市場へ提供しているのは印刷会社である。そこで同社は、これらソリューションを印刷会社に提案・提供することで、新たな価値を生み出すことができると判断した。
「アウトプット製品を有する当社とコンテンツを有する印刷会社が手を組めば、紙だけで情報を伝達してきたコンテンツを紙以外の媒体として広く発信することができる。つまり、互いの強みと弱みを補完し合うことで新たな事業を確立できる」
そして同社は、2019年に「印刷会社×リコージャパン」をコンセプトに「KICK START」を立ち上げ、活動を開始した。
新たな印刷顧客の創出にもフォーカス
新型コロナウイルス感染拡大の終息が未だ見えない状況により、多くの企業が経営面で苦戦を強いられている。これは印刷会社も例外ではない。既存顧客だけで、売上を維持することにも限界があり、さらに紙を主軸とした業態だけでは、コロナ禍によって冷え切った市場で収益を上げていくことは難しい環境にある。やはり新たな顧客の創出が喫緊の課題となる。そこで同社が着目したのがECサイト構築による新規需要および新規顧客の創出である。
同社が実施したベンチマーク調査では、独自のECサイトを立ち上げて、厳しい市場環境下においても業績を伸ばしている印刷会社が数多く存在していたという。ECサイトの構築・運用となると、いわゆる「印刷通販」が連想されるが、現在では、大手印刷通販会社が設備力など駆使した「低価格・短納期」を武器に市場で躍進している。その市場に参入しても、価格や納期といった波に巻き込まれてしまう。
しかし、調査で判明したECサイトで業績を上げている印刷会社の共通点は、自社の強みに特化したサービスの提供、つまり、他の印刷通販では手がけていないような商品の提供だ。そしてECサイト自体を見ると、営業窓口として機能するECサイトであり、システム的にはアナログ的な要素も残している作りが多かった。同社もWeb to Printのシステムを販売しており、機能的にも高いパフォーマンスを発揮するが、その分、導入コストは高くなる。
成功ユーザーの運用状況を確認した小松氏は、フルスペックのシステムではなく、必要な機能だけをもったシンプル設計で安価なシステムの方が、多くの印刷会社のビジネスに貢献するはずと考えた。そこで同社は、アイ・モバイル(株)が提供するECサイトソリューション「スマートページ」を印刷業界向けにカスタマイズしたパッケージとして2020年10月より提供を開始。このECサイトソリューションの提供で新たな顧客の創出を支援している。
「印刷会社のホームページを見ると、注文受付フォームのようなものを構築しているものは少なく、『お問い合わせ』フォームが唯一のコンタクト手段となっているものが多かった。当社が提供するECサイトソリューションは、低コスト・低労力で、このような『お問い合わせ』フォームをECサイトの入り口に手軽に変えることができる」
ECサイトをリアルコミュニケーションの手段に
ベンチマークした印刷会社のECサイトは、完全にデジタル化されたものではなく、注文後にスタッフがメールや電話をするなど、アナログ作業が残っていた。この部分をデジタル化することで、さらなる効率化ができるのだが、あえてそこに手をつけていないという。
「小口注文を新規顧客との接点として電話やメールなどを活用しており、そこからコミュニケーションを密にし、大口の受注獲得につなげている」
各種デジタル印刷機で生産した多品種小ロットの特化商材などをECサイトで受注・販売することで顧客との接点を創出し、最終的には、オフセット印刷機で印刷できるような大口受注の獲得につなげていく。つまりECサイト自体を営業窓口にして活用できるということだ。
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