「綺麗な印刷物」=「作家がイメージする色再現」
同人誌ビジネスが売上の8割を占める同社にとって、新型コロナウイルス感染症拡大という未曾有の経験は大きな転機となった。そこで新たな戦略機として導入を決めたのが「HP Indigo 7K デジタル印刷機」だ。同デジタル印刷機は、CMYKに加え、RGB色域の再現に適したビビッドピンクとビビッドグリーンによる6色印刷仕様で、色鮮やかな広色域のカラー印刷が可能である。その特長を活かした「同人誌の表紙カラー」が同社の狙いである。同人誌の場合、その8割が本文モノクロ+表紙カラーの仕様で、その表紙カラーを6色による高精細、広色域印刷することで同人誌1冊あたりの付加価値を高める効果が期待できるというわけだ。
「印刷会社の都合で『印刷物はCMYKで入稿するもの』という時代は終わった」と語る岡田社長。同社では、2年前からRGBデータ入稿を推奨し、いまでは60%以上を占めている。これを製版システム上でCMYKに自動変換し、元データのRGBを理想的な形で再現できる仕組みを構築していることで、ユーザーからはオフセット印刷でも「綺麗だ」という評価を得ている。

HP Indigo 7K デジタル印刷機
ここで言う「綺麗な印刷物」とは、「作画作業環境通りの色表現」、あるいは「作家のイメージ通りの色再現」を意味している。岡田社長は、「印刷をよく知る作家は、作画の段階からCMYKで再現できない色は使わない。それが『栄光なら出せる』となれば、作画段階での色の制限を排除でき、クリエイティブの面でも貢献できる」とし、Indigoの色再現が創作意欲を掻き立てることにも繋がると指摘する。
同人誌とIndigoの相性が良いことは以前から広く知られている。それは、グラデーションの表現や肌の滑らかさといった単体の効果ではなく、「作家がイメージした色を忠実に再現できることに尽きる」(岡田社長)という。今年5月から実運用を開始し、SNSなどでの評価も上々で、着実に受注を伸ばしている。
一方、同社ではHP社との共同企画として6色サンプルの無償提供キャンペーン(11月末まで)も実施している。これは、通常のCMYK4色印刷の注文に対し、希望者には表1の6色テスト刷りを付けて納品するというもの。同社では12月以降も様々なIndigoキャンペーンを企画していく考えだ。
同人誌における「栄光ブランド」
Indigo導入には「BtoB事業の拡大」というもうひとつの狙いがある。これまでもノベルティや小ロットの立ち読み本などの仕事を通じて大手出版社およそ10社と取り引きのある同社。最近では、制作会社からの依頼で映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」公開35周年記念パンフレットを印刷し、表紙加工のUVニス疑似エンボス加工が高く評価された。このように今後の新たな成長エンジンとしてBtoB事業が広がりを見せはじめている。
東京にも多くの印刷会社がある中、なぜ福山の栄光にそんな仕事の依頼があるのか。そこには同人誌における知名度、いわゆる「栄光ブランド」が大きく関係している。「同人誌作家のほとんどは本業を持っており、そのスキルを活かして制作やデザインに携わる人が多い。そこで印刷物を発注するとなると、いままで利用し、安心できる印刷会社に発注する。『同人誌愛』というものもあって、栄光を選んでもらえるケースも多い。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のパンフも、そんな流れから受注に至っている」(岡田社長)
以前、本紙が栄光を取材した際、岡田社長は自社を「マイナー界のメジャー企業」と表現していた。しかし、ここ10年ほどで同人誌が市民権を得たことで、栄光のBtoBビジネスへの可能性も大きく広がっている。
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「印刷会社の都合で『印刷物はCMYKで入稿するもの』という時代は終わった」と語る岡田社長。同社では、2年前からRGBデータ入稿を推奨し、いまでは60%以上を占めている。これを製版システム上でCMYKに自動変換し、元データのRGBを理想的な形で再現できる仕組みを構築していることで、ユーザーからはオフセット印刷でも「綺麗だ」という評価を得ている。

HP Indigo 7K デジタル印刷機
ここで言う「綺麗な印刷物」とは、「作画作業環境通りの色表現」、あるいは「作家のイメージ通りの色再現」を意味している。岡田社長は、「印刷をよく知る作家は、作画の段階からCMYKで再現できない色は使わない。それが『栄光なら出せる』となれば、作画段階での色の制限を排除でき、クリエイティブの面でも貢献できる」とし、Indigoの色再現が創作意欲を掻き立てることにも繋がると指摘する。
同人誌とIndigoの相性が良いことは以前から広く知られている。それは、グラデーションの表現や肌の滑らかさといった単体の効果ではなく、「作家がイメージした色を忠実に再現できることに尽きる」(岡田社長)という。今年5月から実運用を開始し、SNSなどでの評価も上々で、着実に受注を伸ばしている。
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以前、本紙が栄光を取材した際、岡田社長は自社を「マイナー界のメジャー企業」と表現していた。しかし、ここ10年ほどで同人誌が市民権を得たことで、栄光のBtoBビジネスへの可能性も大きく広がっている。
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