アール・ブリュットの魅力を広く社会に発信
今回、デザイナーとして作品制作に参加した安井氏が、本格的にアール・ブリュット作品、つまり障がい者作家のアート作品を手掛けるようになったのは約2年前のこと。ある展示会に出展する企業からの「出展ブースにアール・ブリュットを使った展示をしたい」という依頼がきっかけだったという。
「アール・ブリュット」とは、「生の芸術」を意味するフランス語で、「正規の美術教育を受けていない人の芸術」など、その解釈は様々だが、日本では「障がい者の表現」として知られている。
その企業は当初、多くの障がい者作家のアート作品をプロダクト化して提供している団体に依頼をしたが、予算面で折り合いが合わず断念したという。
学生時代からアール・ブリュットに高い関心を寄せていた安井氏は、「コストを理由に素晴らしいアート作品が、世に出る機会を失っていることが非常に残念」との想いから、自身でアート作品を提供できるルートを開拓しようと活動を開始。そして学生時代の友人から、ある福祉施設を紹介された。以後、安井氏は福祉施設への訪問を重ねると同時に真摯に自身の想いを伝えた結果、アート作品提供の協力を得ることができた。
安井氏は、そのアート作品を使用したデザインほか、数点の展示ブースデザイン を出展企業に提案し、最終的に採用されたのは障がい者作家のアート作品であった。そして、そのデザインこそが今回のIPA2022において、ダイレクトメール部門第1位の作品に採用されているアール・ブリュット作品だ。
「初めてアール・ブリュットを実際のビジネスに活用するきっかけとなった作品でIPAに入賞できたことは、非常に感慨深い」(安井氏)
第1位獲得の吉報は、作家とその両親にも伝えられ、喜びと感謝のことばを述べていたという。また、今回は、作家にも同様に表彰状が贈られている。
アート作品を生かす印刷
今回の入賞作品は、アール・ブリュットの採用のほか、用紙にエシカルペーパーを使用したSDGsに貢献するダイレクトメールとして制作されていることも大きな特徴の1つだ。
印刷に使用した富士フイルムBIの1パス6色エンジン搭載のプロダクションプリンターは、その優れた用紙対応力をもって、表面に凹凸感のあるエシカルペーパーに対しても問題なく高品質に印刷することができた。
エシカルペーパーへの対応については、とくに問題視していなかった坂下氏が一番懸念していたのは、「アート作品を生かす印刷」だという。
「デザインと用紙の色が似ているときなど、ホワイトトナーを下刷りしてCMYKの上刷りし、鮮明な印刷を行っていた。しかし、実際に印刷してみると思っていたイメージと違う。そこでホワイトトナーを使用せず、CMYKだけで印刷をしてみたらデザインと用紙の風合いを活かした印刷ができた。このように試行錯誤を繰り返しながら作業を続けてきた」(坂下氏)
飯塚氏も「エシカルペーパーなどは、印刷をしてみて初めてそのデザインとマッチングした表現力が確認できる。色紙だからホワイトトナーを下刷りする、といった従来の概念を払拭し、さまざまな表現方法を試していく。その工程がワクワクする」と、様々な視点から印刷表現の可能性を模索することで新たな価値が生まれてくると説明する。
新着トピックス
-
ケーススタディ 門那シーリング印刷(大阪)、除電機能で作業効率向上[Revoria Press PC1120導入事例]
-
ケーススタディ 尾崎スクリーン、熱転写の新たな領域へ[HP Indigo 7K デジタル印刷機導入事例]
リンクス、スキルレスで人材確保、育成期間短縮[JetPress750S導入事例]
2025年6月27日ケーススタディ
「アイデア什器」の(株)リンクス(本社/岐阜県関市倉知2639-1、吉田哲也社長)は昨年11月、富士フイルムの枚葉インクジェットデジタルプレス「JetPress750S」(厚紙仕様)...全文を読む
コニカミノルタジャパン、AccurioDays2025で新たなフラッグシップモデルを公開
2025年6月4日製品・テクノロジー
コニカミノルタジャパン(株)は、デジタルカラー印刷システムの最上位機種「AccurioPress(アキュリオプレス) C14010シリーズ」の発売を記念して4月23・24日の2日間、...全文を読む
最新ニュース
エプソン、世界最少の小型軽量デジタルプリンター「EP-101」が「機械遺産」に選定
2025年8月7日
セイコーエプソン(株)がエプソンミュージアム諏訪(長野県諏訪市)に所蔵している、1968年より発売した世界最小(同社調べ(当時))の小型軽量デジタルプリンター「EP-101」が、(一...全文を読む
リコー、広幅対応DTFプリンター「RICOH Pro D1600」を松井色素化学工業所に供給開始
2025年8月7日
(株)リコー(大山晃社長)は、産業用テキスタイル印刷市場向けに、高生産性を実現する広幅対応Direct To Film(DTF)プリンター「RICOH Pro D1600」について、...全文を読む
コニカミノルタ、反応染料用インライン前処理インク「O'ROBE」の提供開始
2025年7月29日
コニカミノルタ(株)(本社/東京都千代田区、大幸利充社長、以下、コニカミノルタ)は、インクジェットテキスタイルプリンター「Nassenger(ナッセンジャー)」シリーズ用インクとして...全文を読む
竹田印刷、IPAに2年連続入賞〜印刷を通じて誰もが輝ける社会の創造へ
アール・ブリュットとSDGsを融合
2023年4月24日企業・経営
アール・ブリュットの魅力を広く社会に発信
今回、デザイナーとして作品制作に参加した安井氏が、本格的にアール・ブリュット作品、つまり障がい者作家のアート作品を手掛けるようになったのは約2年前のこと。ある展示会に出展する企業からの「出展ブースにアール・ブリュットを使った展示をしたい」という依頼がきっかけだったという。
「アール・ブリュット」とは、「生の芸術」を意味するフランス語で、「正規の美術教育を受けていない人の芸術」など、その解釈は様々だが、日本では「障がい者の表現」として知られている。
その企業は当初、多くの障がい者作家のアート作品をプロダクト化して提供している団体に依頼をしたが、予算面で折り合いが合わず断念したという。
学生時代からアール・ブリュットに高い関心を寄せていた安井氏は、「コストを理由に素晴らしいアート作品が、世に出る機会を失っていることが非常に残念」との想いから、自身でアート作品を提供できるルートを開拓しようと活動を開始。そして学生時代の友人から、ある福祉施設を紹介された。以後、安井氏は福祉施設への訪問を重ねると同時に真摯に自身の想いを伝えた結果、アート作品提供の協力を得ることができた。
安井氏は、そのアート作品を使用したデザインほか、数点の展示ブースデザイン を出展企業に提案し、最終的に採用されたのは障がい者作家のアート作品であった。そして、そのデザインこそが今回のIPA2022において、ダイレクトメール部門第1位の作品に採用されているアール・ブリュット作品だ。
「初めてアール・ブリュットを実際のビジネスに活用するきっかけとなった作品でIPAに入賞できたことは、非常に感慨深い」(安井氏)
第1位獲得の吉報は、作家とその両親にも伝えられ、喜びと感謝のことばを述べていたという。また、今回は、作家にも同様に表彰状が贈られている。
アート作品を生かす印刷
今回の入賞作品は、アール・ブリュットの採用のほか、用紙にエシカルペーパーを使用したSDGsに貢献するダイレクトメールとして制作されていることも大きな特徴の1つだ。
印刷に使用した富士フイルムBIの1パス6色エンジン搭載のプロダクションプリンターは、その優れた用紙対応力をもって、表面に凹凸感のあるエシカルペーパーに対しても問題なく高品質に印刷することができた。
エシカルペーパーへの対応については、とくに問題視していなかった坂下氏が一番懸念していたのは、「アート作品を生かす印刷」だという。
「デザインと用紙の色が似ているときなど、ホワイトトナーを下刷りしてCMYKの上刷りし、鮮明な印刷を行っていた。しかし、実際に印刷してみると思っていたイメージと違う。そこでホワイトトナーを使用せず、CMYKだけで印刷をしてみたらデザインと用紙の風合いを活かした印刷ができた。このように試行錯誤を繰り返しながら作業を続けてきた」(坂下氏)
飯塚氏も「エシカルペーパーなどは、印刷をしてみて初めてそのデザインとマッチングした表現力が確認できる。色紙だからホワイトトナーを下刷りする、といった従来の概念を払拭し、さまざまな表現方法を試していく。その工程がワクワクする」と、様々な視点から印刷表現の可能性を模索することで新たな価値が生まれてくると説明する。
新着トピックス
-
門那シーリング印刷(大阪)、除電機能で作業効率向上[Revoria Press PC1120導入事例]
2025年8月8日 ケーススタディ
-
尾崎スクリーン、熱転写の新たな領域へ[HP Indigo 7K デジタル印刷機導入事例]
2025年8月4日 ケーススタディ
-
リンクス、スキルレスで人材確保、育成期間短縮[JetPress750S導入事例]
2025年6月27日 ケーススタディ
-
コニカミノルタジャパン、AccurioDays2025で新たなフラッグシップモデルを公開
2025年6月4日 製品・テクノロジー
-
大村印刷、特殊トナーと用紙対応力で小ロット・高付加価値ニーズに対応
2025年5月8日 ケーススタディ
新着ニュース
SNSランキング
- 63sharesミマキ、330シリーズとエコ溶剤インクが3M MCS保証認定
- 43sharesパラシュート、スマホで偽造品識別が可能なデジタル暗号化技術サービスの提供開始
- 39sharesエプソン、立体物への直接印刷を可能にする「Direct to Shape Printing System」発表
- 38sharesKOMORI、241名が来場した新春特別内覧会のデモ動画(Impremia IS29s」公開
- 29sharesKOMORI、インクジェット印刷機とデジタル加飾機の連携披露
- 27shares日印機工とプリデジ協、IGAS2027の日程決定-2027年8月に東京ビッグサイトで開催
- 27sharesリコー、企業内・商用印刷の幅広いニーズに対応するカラー機の新機種発売
- 26sharesミヤコシ、軟包装向け水性インクジェット「MJP ADVANCED 45X for FILM」発表
- 25shares富士フイルムBI、デジタル印刷作品のコンテスト「IPA」の作品募集開始
- 23sharesリコー、広幅対応DTFプリンター「RICOH Pro D1600」を松井色素化学工業所に供給開始
おすすめコンテンツ
尾崎スクリーン、熱転写の新たな領域へ[HP Indigo 7K デジタル印刷機導入事例]
竹田印刷、多様な個性をかたちに〜アール・ブリュット作品を世界に発信
奥村印刷、新たな価値を紙に付加〜「折り紙食器 beak」でIPA2024に入賞