「作家ファースト」への理解が不可欠
安井氏は、アール・ブリュット作品を採用する際に、クライアントに対し、必ず伝えることがある。それは、「作家ファースト」への理解だ。
通常の印刷物では、制作段階において「もう少し明るく」や「もっと赤を強調して」など、クライアントからの指示を反映させることが基本となっている。
しかし、アール・ブリュット作品は、作家の創造性や独創性を表現したものであり、この表現に加工を施してしまうことは、その作品自体を否定することとなる。そのため安井氏は、作家の作品イメージを変えるようなことは、いっさい受け付けないということを事前に説明し、理解を得た上で作業を進めている。
また、作品を描いてもらう場合でも、作家の創作活動を基本としたスケジュール調整が大前提となる。
「納期を優先するのではなく、作家のコンディションなどが最優先となる。これに対する理解が得られなければ、アール・ブリュット作品を使うことはできない。つまりクライアントファーストではなく、作家ファーストのスタンスがクライアントや印刷会社に求められる」(安井氏)
この2年間の活動の中で安井氏は、障がい者の家族や社会福祉施設のスタッフから、アート・ブリュット作品の提供に際し、感じた嫌な思いや感想を真摯に聞くことを実践してきた。その中で著作権譲渡要求や承諾を得ないままでの二次利用など、作家側の意向を一切無視したようなやりとりが横行していることを知る。
同社では、これらの行為を完全否定するとともに、アート・ブリュット作品を活用するための正規のやり方を実践で社会に示している。当然、その対価を支払っている。
「この仕組みが社会的に確立することで障がい者の自立支援につながればと考えている」(安井氏)
IPAはグローバル視点での評価を確認できる場
IPAで2年連続入賞を果たした同社だが、このアワードプログラムに参加した理由について坂下氏は、「これまで行ってきた作品制作は、自分達の中では満点評価で、実際にクライアントからの評価も得ていた。しかし、グローバルな観点からは、どのように評価されるのか、ということに興味を感じた」と説明する。
また、グローバルな視点で評価を得たことで社内全体のモチベーションアップにつながったという。
飯塚氏は「前回の入賞を契機に、営業が持ち込んできた案件に対し、さまざまな企画・提案を行えるようになった。入賞後は、当社はもっと良いものを創り出せるという『自信』から『確信』に社内全体の意識が変わった」と、この意識の変化は、受注活動にもつながったと説明する。
その同社では、2023年度のIPAについてもエントリーを予定している。当然、目指すのは最優秀賞の獲得だ。
2024年に創業100周年
2024年に創業100周年を迎える同社では、日常の中からSDGsにつながる項目をピックアップして活動を浸透させていく「創業100周年までに取り組む100のSDGs活動」を掲げ、取り組みを開始した。この活動は普段の業務や生活の中で、どんな些細なことであってもSDGsに貢献できることであれば、提案・実践していくというもの。
「新しいことに挑戦することも大切ですが、これまでの活動を継続していくなかで、新たなことを発見することが重要。100個のSDGsについても、新しい取り組みや、当たり前のように過ごしている日常の中から、各従業員が気づいたことを改善しながら、SDGsにつなげていければと考えている」(飯塚氏)
これに先立ち同社では、これまで廃棄していたロール紙の紙管やダンボールなどを集め、福祉施設に寄贈する活動を実践している。
さらに従業員に協力を呼びかけ、自宅などにある各種紙袋を集めて図書館に寄贈する取り組みも行っている。集められた紙袋は、貸出や返却時に利用者が自由に使えるもので、図書館および利用者双方にメリットを提供している。
そして安井氏は、100周年の節目を記念して、東海地区の100名のアール・ブリュット作家を集めた作品集を制作し、国内だけではなく世界に向けてアール・ブリュットの魅力を発信していく活動の実現を目指しているという。100周年とその先に向けた同社の取り組みに引き続き期待が寄せられる。
新着トピックス
2025年10月1日製品・テクノロジー
産業⽤インクジェットプリンタ、カッティングプロッタ、3Dプリンタを手掛ける(株)ミマキエンジニアリング(本社/長野県東御市、池田和明社長)は今年4月、同社初のUV-DTF(UV硬化式...全文を読む
2025年9月30日製品・テクノロジースペシャリスト
最速900メートル/分の超高速印刷が可能なPROSPERヘッドは、日本でもDM市場を中心に数百台が稼働しているが、コダックジャパン・プリント事業部デジタルプリンティング営業本部の河原...全文を読む
最新ニュース
SCREEN、京都芸大・月桂冠と産学連携 - 学生デザインラベルの日本酒商品化
2025年10月8日
京都市立芸術大学(以下「京都芸大」)、月桂冠(株)、(株)SCREENグラフィックソリューションズ(以下「SCREEN」)の3者は、産学連携による共同プロジェクトを実施し、京都芸大・...全文を読む
ミマキ、OGBS2025で昇華転写用IJプリンタ「TS200」を国内初披露
2025年10月2日
(株)ミマキエンジニアリング(本社/長野県東御市、池田和明社長)は、9月30日と10月1日に東京・池袋のサンシャインシティにおいて開催されたオーダーグッズビジネスショー(OGBS)2...全文を読む
swissQprint Japan、VIPオープンハウスウィーク-10月28日〜31日
2025年10月1日
swissQprint Japan(株)(本社/横浜市港北区新横浜3-2-6、アドリアーノ・グット社長)は、顧客の要望に応え、最新世代のフラットベッドプリンタを紹介するオープンハウス...全文を読む
竹田印刷、IPAに2年連続入賞〜印刷を通じて誰もが輝ける社会の創造へ
アール・ブリュットとSDGsを融合
2023年4月24日企業・経営
「作家ファースト」への理解が不可欠
安井氏は、アール・ブリュット作品を採用する際に、クライアントに対し、必ず伝えることがある。それは、「作家ファースト」への理解だ。
通常の印刷物では、制作段階において「もう少し明るく」や「もっと赤を強調して」など、クライアントからの指示を反映させることが基本となっている。
しかし、アール・ブリュット作品は、作家の創造性や独創性を表現したものであり、この表現に加工を施してしまうことは、その作品自体を否定することとなる。そのため安井氏は、作家の作品イメージを変えるようなことは、いっさい受け付けないということを事前に説明し、理解を得た上で作業を進めている。
また、作品を描いてもらう場合でも、作家の創作活動を基本としたスケジュール調整が大前提となる。
「納期を優先するのではなく、作家のコンディションなどが最優先となる。これに対する理解が得られなければ、アール・ブリュット作品を使うことはできない。つまりクライアントファーストではなく、作家ファーストのスタンスがクライアントや印刷会社に求められる」(安井氏)
この2年間の活動の中で安井氏は、障がい者の家族や社会福祉施設のスタッフから、アート・ブリュット作品の提供に際し、感じた嫌な思いや感想を真摯に聞くことを実践してきた。その中で著作権譲渡要求や承諾を得ないままでの二次利用など、作家側の意向を一切無視したようなやりとりが横行していることを知る。
同社では、これらの行為を完全否定するとともに、アート・ブリュット作品を活用するための正規のやり方を実践で社会に示している。当然、その対価を支払っている。
「この仕組みが社会的に確立することで障がい者の自立支援につながればと考えている」(安井氏)
IPAはグローバル視点での評価を確認できる場
IPAで2年連続入賞を果たした同社だが、このアワードプログラムに参加した理由について坂下氏は、「これまで行ってきた作品制作は、自分達の中では満点評価で、実際にクライアントからの評価も得ていた。しかし、グローバルな観点からは、どのように評価されるのか、ということに興味を感じた」と説明する。
また、グローバルな視点で評価を得たことで社内全体のモチベーションアップにつながったという。
飯塚氏は「前回の入賞を契機に、営業が持ち込んできた案件に対し、さまざまな企画・提案を行えるようになった。入賞後は、当社はもっと良いものを創り出せるという『自信』から『確信』に社内全体の意識が変わった」と、この意識の変化は、受注活動にもつながったと説明する。
その同社では、2023年度のIPAについてもエントリーを予定している。当然、目指すのは最優秀賞の獲得だ。
2024年に創業100周年
2024年に創業100周年を迎える同社では、日常の中からSDGsにつながる項目をピックアップして活動を浸透させていく「創業100周年までに取り組む100のSDGs活動」を掲げ、取り組みを開始した。この活動は普段の業務や生活の中で、どんな些細なことであってもSDGsに貢献できることであれば、提案・実践していくというもの。
「新しいことに挑戦することも大切ですが、これまでの活動を継続していくなかで、新たなことを発見することが重要。100個のSDGsについても、新しい取り組みや、当たり前のように過ごしている日常の中から、各従業員が気づいたことを改善しながら、SDGsにつなげていければと考えている」(飯塚氏)
これに先立ち同社では、これまで廃棄していたロール紙の紙管やダンボールなどを集め、福祉施設に寄贈する活動を実践している。
さらに従業員に協力を呼びかけ、自宅などにある各種紙袋を集めて図書館に寄贈する取り組みも行っている。集められた紙袋は、貸出や返却時に利用者が自由に使えるもので、図書館および利用者双方にメリットを提供している。
そして安井氏は、100周年の節目を記念して、東海地区の100名のアール・ブリュット作家を集めた作品集を制作し、国内だけではなく世界に向けてアール・ブリュットの魅力を発信していく活動の実現を目指しているという。100周年とその先に向けた同社の取り組みに引き続き期待が寄せられる。
新着トピックス
-
樋口印刷所(大阪)、下請け100%のJet Pressビジネスとは
2025年10月8日 ケーススタディ
-
ダイコウラベル、新市場への進出に貢献〜デジタルの強みで顧客メリットを創出
2025年10月7日 ケーススタディ
-
ミマキ、UV-DTF市場に参入〜プリント形状の課題を解決
2025年10月1日 製品・テクノロジー
-
コダック、パッケージ分野で新アプリケーション開拓へ
2025年9月30日 製品・テクノロジースペシャリスト
-
青森県コロニー協会、多様性のある職場環境の構築を支援 [インプレミアIS29s導入事例]
2025年9月30日 ケーススタディ
新着ニュース
SNSランキング
- 63shares講談社、フルデジタル書籍生産システムが新たな領域に
- 50sharesリコー、企業内・商用印刷の幅広いニーズに対応するカラー機の新機種発売
- 44shares富士フイルムBI、デジタル印刷ワークフローソフトウェアが「IDEA」ファイナリストに
- 40shares樋口印刷所(大阪)、下請け100%のJet Pressビジネスとは
- 38shares門那シーリング印刷(大阪)、除電機能で作業効率向上[Revoria Press PC1120導入事例]
- 38sharesコニカミノルタジャパン、AccurioDays2025で新たなフラッグシップモデルを公開
- 37sharesSCREEN GAとSCREEN GPJ、「パッケージに彩りを」テーマに「JAPAN PACK 2025」に出展
- 30sharesコニカミノルタジャパン、機能強化モデル「AccurioPress C7100 ENHANCED」発売
- 28sharesパラシュート、Webプラットフォームをベースとした販促資材管理サービスの提供開始
- 28shares日印機工とプリデジ協、IGAS2027の日程決定-2027年8月に東京ビッグサイトで開催