1966年の創業以来、「共存共栄の精神」を大切に、栃木県で地域に根差した事業を展開する(株)井上総合印刷(本社/宇都宮市岩曽町1355番地、井上加容子社長)は、2020年の「Jet Press 750S」に続き今年3月、トナー機の新戦力として「Revoria Press PC1120」を導入し、デジタル印刷の生産体制の強化を図った。持ち前の発想力と企画力で、これまでもさまざまなアイデアを生み出してきた同社が、最新POD機をどのように活用し、どんな価値を提供していくのか。井上社長に、導入の背景や現時点でのメリット、そして今後の活用戦略などを伺った。

「機能」や「付加価値」を持った印刷物の需要が増えている
同社は、宇都宮市内に本社工場と2つのオフセット印刷・製本加工の工場、東京都内に営業所を持ち、商業印刷物のほか、図録や記念誌、写真集、ノベルティ、自費出版の書籍などを幅広く手がける。また、「ミウラ折り」のライセンスを取得し、印刷・折り加工から管理まで一貫して行える体制を確立しているのも特色のひとつだ。印刷の枠を超えた地域振興活動にも積極的に取り組んでおり、2017年にレンタルスペース&カフェ「Cafe ink Blue」を宇都宮市内中心部に開設、2020年には観光地支援の一環として、観光名所である大谷石採掘場跡地に「そば倶楽部稲荷山」をオープンさせた。

デジタル印刷については、Jet Press 750Sと、Revoria Press PC1120を含むPOD機3台を本社工場に配置し、優れた機動力と高品質・バリアブルといった特徴を活かした多彩な提案を行っている。その成果もあり、コロナ禍の影響や、原材料費や物流費・光熱費の高騰といった厳しい環境下でも、堅調に受注を得ている。井上社長は、昨今の市場ニーズの傾向についてこう語る。
「単に情報を伝えるだけの印刷物というのは、かなり厳しい状況。この傾向はコロナ禍で拍車がかかり、加えてあらゆるものの値段が高騰しているので、情報を伝えるだけの手段としては、紙はますます選ばれにくくなっている。ではどんな『紙』なら必要とされるのかと考えると、たとえばパッケージやオリジナルカレンダーなど、広告宣伝やビジネス書類とは違った『機能』を持ったモノとしての紙が注目され始めているように思う。つまり『それ自体を使える印刷物』。そしてそこにお金を出すからには、デザインや形状・素材などにもこだわりたいという方も増えている」
飲食店などで使われる紙マットや油避けの紙など、いままで「機能だけが求められていた紙」に、新たに付加価値をつけたいといった印刷需要も増えているという。
「これから、『多少高価でも付加価値の高いモノを』と考える方がもっと増えてくると思う。そうしたお客様の価値観にどれだけマッチした商品を創り出せるかが大事である。いま、多くの企業が『いかにコストをかけずに商品を売るか』を考えているが、本当に価値を伝えたいとか、高級なものを売りたいというときには、Webやメールではなく紙の印刷を選ばれるお客様が多いので、そのニーズに対してどんな提案ができるか。そこがデジタル印刷機の重要な使いどころにもなってくる」
機械の設計面でもサポート面でも、信頼性の高さを確信
同社では現在、Jet PressとPOD機3台を、オフセット印刷機とカラーマッチングを図った上で、仕事内容に応じて使い分けている。Jet Pressは、B2サイズ対応・高画質・バリアブルといった特徴を活かしてコロナ禍でも新たな需要の創出に活躍してきたが、井上社長は、これからの印刷需要を考える中で、より小回りが利き、かつ高い付加価値を生み出せるデジタル機が必要だと感じていたという。
「PODの主力機であったColor 1000 Pressが入れ替えの時期を迎えていたこともあり、他社機も含めて新たな機種の検討を進めていた」
付加価値提供の観点から、シルバーやゴールドなどの特殊色の使用を前提として選定することに。複数のメーカーからプレゼンを受け、実機デモも確認し、さまざまな角度から検討した。
「最終的にRevoria Press PC1120に決めた理由は、機械と人への信頼。機械の信頼性については、これまでいろいろなメーカーのPOD機を見てきているので、蓋を開けて内部構造を見るとだいたいわかる。その点、PC1120は、大事な部分をしっかりとつくり込んでいるというのが一目瞭然だった。開発担当のプレゼンも非常に熱意がこもっていて、プリンターの延長ではなく生産機として考え抜いてつくられていることが伝わってきた」
もちろん、同社にとって重要な戦力となる設備である以上、感覚的な判断だけでは決められない。
「出力品質については、私の独断ではなく、できるだけ多くの目で検討しようと。最終的に候補に残った2社のメーカーに同じデータを同じ日に出力してもらい、名前を伏せて印刷オペレーターやデザイナー、企画スタッフに見てもらって投票させた。結果、『圧倒的にPC1120の方がいい』ということになった」
人への信頼という点では、従来機「Color 1000 Press」運用時からのサポート対応の安心感があった。
「Color 1000 Pressを10年近く使ってきたので、修理が必要になることもあったが、富士フイルムのエンジニアは、こまめに状況を見に来てくれ、『転ばぬ先の杖』で大きなトラブルになる前にメンテナンスしてくれる。これはとても心強い。機械の状態を常に把握してもらっているという安心感もある。この信頼関係は、長く使っていく上で非常に重要」
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「機能」や「付加価値」を持った印刷物の需要が増えている
同社は、宇都宮市内に本社工場と2つのオフセット印刷・製本加工の工場、東京都内に営業所を持ち、商業印刷物のほか、図録や記念誌、写真集、ノベルティ、自費出版の書籍などを幅広く手がける。また、「ミウラ折り」のライセンスを取得し、印刷・折り加工から管理まで一貫して行える体制を確立しているのも特色のひとつだ。印刷の枠を超えた地域振興活動にも積極的に取り組んでおり、2017年にレンタルスペース&カフェ「Cafe ink Blue」を宇都宮市内中心部に開設、2020年には観光地支援の一環として、観光名所である大谷石採掘場跡地に「そば倶楽部稲荷山」をオープンさせた。

デジタル印刷については、Jet Press 750Sと、Revoria Press PC1120を含むPOD機3台を本社工場に配置し、優れた機動力と高品質・バリアブルといった特徴を活かした多彩な提案を行っている。その成果もあり、コロナ禍の影響や、原材料費や物流費・光熱費の高騰といった厳しい環境下でも、堅調に受注を得ている。井上社長は、昨今の市場ニーズの傾向についてこう語る。
「単に情報を伝えるだけの印刷物というのは、かなり厳しい状況。この傾向はコロナ禍で拍車がかかり、加えてあらゆるものの値段が高騰しているので、情報を伝えるだけの手段としては、紙はますます選ばれにくくなっている。ではどんな『紙』なら必要とされるのかと考えると、たとえばパッケージやオリジナルカレンダーなど、広告宣伝やビジネス書類とは違った『機能』を持ったモノとしての紙が注目され始めているように思う。つまり『それ自体を使える印刷物』。そしてそこにお金を出すからには、デザインや形状・素材などにもこだわりたいという方も増えている」
飲食店などで使われる紙マットや油避けの紙など、いままで「機能だけが求められていた紙」に、新たに付加価値をつけたいといった印刷需要も増えているという。
「これから、『多少高価でも付加価値の高いモノを』と考える方がもっと増えてくると思う。そうしたお客様の価値観にどれだけマッチした商品を創り出せるかが大事である。いま、多くの企業が『いかにコストをかけずに商品を売るか』を考えているが、本当に価値を伝えたいとか、高級なものを売りたいというときには、Webやメールではなく紙の印刷を選ばれるお客様が多いので、そのニーズに対してどんな提案ができるか。そこがデジタル印刷機の重要な使いどころにもなってくる」
機械の設計面でもサポート面でも、信頼性の高さを確信
同社では現在、Jet PressとPOD機3台を、オフセット印刷機とカラーマッチングを図った上で、仕事内容に応じて使い分けている。Jet Pressは、B2サイズ対応・高画質・バリアブルといった特徴を活かしてコロナ禍でも新たな需要の創出に活躍してきたが、井上社長は、これからの印刷需要を考える中で、より小回りが利き、かつ高い付加価値を生み出せるデジタル機が必要だと感じていたという。
「PODの主力機であったColor 1000 Pressが入れ替えの時期を迎えていたこともあり、他社機も含めて新たな機種の検討を進めていた」
付加価値提供の観点から、シルバーやゴールドなどの特殊色の使用を前提として選定することに。複数のメーカーからプレゼンを受け、実機デモも確認し、さまざまな角度から検討した。
「最終的にRevoria Press PC1120に決めた理由は、機械と人への信頼。機械の信頼性については、これまでいろいろなメーカーのPOD機を見てきているので、蓋を開けて内部構造を見るとだいたいわかる。その点、PC1120は、大事な部分をしっかりとつくり込んでいるというのが一目瞭然だった。開発担当のプレゼンも非常に熱意がこもっていて、プリンターの延長ではなく生産機として考え抜いてつくられていることが伝わってきた」
もちろん、同社にとって重要な戦力となる設備である以上、感覚的な判断だけでは決められない。
「出力品質については、私の独断ではなく、できるだけ多くの目で検討しようと。最終的に候補に残った2社のメーカーに同じデータを同じ日に出力してもらい、名前を伏せて印刷オペレーターやデザイナー、企画スタッフに見てもらって投票させた。結果、『圧倒的にPC1120の方がいい』ということになった」
人への信頼という点では、従来機「Color 1000 Press」運用時からのサポート対応の安心感があった。
「Color 1000 Pressを10年近く使ってきたので、修理が必要になることもあったが、富士フイルムのエンジニアは、こまめに状況を見に来てくれ、『転ばぬ先の杖』で大きなトラブルになる前にメンテナンスしてくれる。これはとても心強い。機械の状態を常に把握してもらっているという安心感もある。この信頼関係は、長く使っていく上で非常に重要」
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