奥村印刷、新たな価値を紙に付加〜「折り紙食器 beak」でIPA2024に入賞
能登半島地震の被災者支援でも活用
2024年11月20日企業・経営
-
IPA2024「サステナビリティ部門」第1位を獲得
完成したbeakは、A4サイズから抜き出す平らな紙を折り紙のように立体に組み立てる紙製の食器。100人分の紙食器を組み立て前に積み重ねた厚さは、わずか45mmしかなく、保管や輸送の負担を軽減できる。用紙は、耐熱・耐水・耐油性に優れながらも2年で自然分解される大王製紙の「エリプラ+(プラス)」を使用している。
IPAに出品された作品は、日本からのエントリーということで「和」をイメージできるようブラックをベースに錦鯉や扇子などの絵柄を採用し、さらにゴールドトナーによるアクセントも付加している。アウトドア商材としての活用も進む
営業としてbeakの拡販を担う藤枝氏は、各種展示会への出展や大手流通チェーンなどでのワークショップを開催し、その機能性を体験してもらうことに注力してきた。
「ワークショップでは、小学生から高齢者まで、beakを楽しみながら組み立ててくれたことが、大きな収穫であった」(藤枝氏)
同じく拡販に携わる梅田氏は、「CSRの観点から多くの民間企業に防災グッズとして提案し、受注を獲得することができた。また、自治体にも備蓄用の食器として提案している」とbeakの市場展開について説明する。
これらの拡販活動が功を奏し、beakは多くのメディアにも取り上げられるなど大きな反響を得ることとなる。さらに当初想定していた防災グッズとしてだけではなく、持ち運びが便利で洗う手間もないことから、キャンプなどのアウトドアグッズとしても注目を集めるようになった。beakは、2021年4月に特許出願され、2023年3月には、日本発明振興協会(石井卓爾会長)と日刊工業新聞社共催の「第48回(2022年度)発明大賞」において「考案功労賞」を受賞している。
beak 10,000シートを被災地・石川県に発送
2024年1月1日、最大震度7を記録した能登半島地震が発生した。同社は、石川県健康福祉部厚生政策課に災害支援を申し出て、beak の皿と丼、合わせて1万シートを1月11日に寄贈している。
震災発生の報道を受け、石川県との連絡を行った藤枝氏は、「先方の担当者からは、食器が足りないので、すぐにでも送って欲しいとの返答があった」と当時の切迫した状況を振り返る。
年末に「年賀用beak」5,000セットを生産していたため、仕事始めの1月5日の時点では「エリプラ+(プラス)」の在庫がない状況だったが、1月9日に用紙が納品されるとすぐに作業を開始。そして11日には石川県に向けて無事発送した。
「中1日で10,000シートを仕上げることができた。これは作業に関わったすべての社員に感謝している」(山田氏)
紙製食器の強みを発揮
被災地域では未だ混乱が治まっていないことから石川県側の要望を受け、発送には宅急便を利用。ここでも、シート状であるbeakの最大の強みが活かされた。
通常の食器を10,000個発送するとなると、破損を防ぐための緩衝材などが必要となるため、その箱数は膨大となる。しかし、beakはシート状のため、緩衝材も必要ない。実際に1万シートの発送費用は15,000円と、シート状であることに加え、紙製のため軽量であることから発送面での優位性も発揮している。また、多くの被災者が肩を寄せ合って暮らす避難所では、保管スペースを確保することすら難しいが、シート状のbeakは、場所を選ぶことなく比較的省スペースで保管できる。また、beakを箱詰めした段ボールには、QRコードを表示し、組み立て方法を動画で確認できるように配慮している。同社では現在、beakを通じて学校などの教育機関と連携し、避難訓練などに参加し、防災意識の重要性を訴えている。
今年8年ぶりに開催された「drupa 2024」においてIPA2024入賞作品として展示されたbeakは、世界中からの来場者の関心を多く集めていたという。
同社では、現在の折り紙食器としての活用方以外のアイテムとして、beakの新たな商品開発も検討している。
新着トピックス
富士フイルム、TOKYO PACKでブランドオーナーにデジタル印刷活用促す
2024年11月15日マーケティング
「もっと自由にパッケージ・オンデマンド」─富士フイルムグループは、10月23日から開催された「TOKYO PACK 2024(東京国際包装展)」において、富士フイルムが独自開発した幅...全文を読む
価値協創で新たな潮流|エイエイピー、Jet Press 750Sが新たなステージへ
2024年11月13日企業・経営
「人と、地域と、共鳴する。」〜さまざまなメディアを駆使したプロモーション支援を手がける(株)エイエイピー(本社/静岡市駿河区森下町3-6、土屋康一代表)は、同社内に組織された幅広い事...全文を読む
最新ニュース
日本HP、KADOKAWA「出版製造流通DXプロジェクト」を支援
2025年1月21日
(株)日本HP(本社/東京都港区、岡戸伸樹社長)は1月16日、(株)KADOKAWA(本社/東京都千代田区、夏野剛社長・CEO)の運営する埼玉県所沢市の大型文化複合施設「ところざわサ...全文を読む
2025年1月20日
ローランド ディー.ジー.(株)は、大判インクジェットプリンターTrueVISシリーズ「LG-640/540/300」と、DGXPRESSシリーズの「UG-642」で使用できる拡張テ...全文を読む
swissQprint、第5世代フラットベッド新モデル-生産性23%向上
2025年1月14日
swissQprintは、プラットフォームを全面的に刷新し、生産性、精度、アプリケーションの多用途性を新たなレベルへと引き上げたフラットベッド新世代モデルを発表した。新モデルは従来機...全文を読む
奥村印刷、新たな価値を紙に付加〜「折り紙食器 beak」でIPA2024に入賞
能登半島地震の被災者支援でも活用
2024年11月20日企業・経営
IPA2024「サステナビリティ部門」第1位を獲得
完成したbeakは、A4サイズから抜き出す平らな紙を折り紙のように立体に組み立てる紙製の食器。100人分の紙食器を組み立て前に積み重ねた厚さは、わずか45mmしかなく、保管や輸送の負担を軽減できる。用紙は、耐熱・耐水・耐油性に優れながらも2年で自然分解される大王製紙の「エリプラ+(プラス)」を使用している。
IPAに出品された作品は、日本からのエントリーということで「和」をイメージできるようブラックをベースに錦鯉や扇子などの絵柄を採用し、さらにゴールドトナーによるアクセントも付加している。
アウトドア商材としての活用も進む
営業としてbeakの拡販を担う藤枝氏は、各種展示会への出展や大手流通チェーンなどでのワークショップを開催し、その機能性を体験してもらうことに注力してきた。
「ワークショップでは、小学生から高齢者まで、beakを楽しみながら組み立ててくれたことが、大きな収穫であった」(藤枝氏)
同じく拡販に携わる梅田氏は、「CSRの観点から多くの民間企業に防災グッズとして提案し、受注を獲得することができた。また、自治体にも備蓄用の食器として提案している」とbeakの市場展開について説明する。
これらの拡販活動が功を奏し、beakは多くのメディアにも取り上げられるなど大きな反響を得ることとなる。さらに当初想定していた防災グッズとしてだけではなく、持ち運びが便利で洗う手間もないことから、キャンプなどのアウトドアグッズとしても注目を集めるようになった。
beakは、2021年4月に特許出願され、2023年3月には、日本発明振興協会(石井卓爾会長)と日刊工業新聞社共催の「第48回(2022年度)発明大賞」において「考案功労賞」を受賞している。
beak 10,000シートを被災地・石川県に発送
2024年1月1日、最大震度7を記録した能登半島地震が発生した。同社は、石川県健康福祉部厚生政策課に災害支援を申し出て、beak の皿と丼、合わせて1万シートを1月11日に寄贈している。
震災発生の報道を受け、石川県との連絡を行った藤枝氏は、「先方の担当者からは、食器が足りないので、すぐにでも送って欲しいとの返答があった」と当時の切迫した状況を振り返る。
年末に「年賀用beak」5,000セットを生産していたため、仕事始めの1月5日の時点では「エリプラ+(プラス)」の在庫がない状況だったが、1月9日に用紙が納品されるとすぐに作業を開始。そして11日には石川県に向けて無事発送した。
「中1日で10,000シートを仕上げることができた。これは作業に関わったすべての社員に感謝している」(山田氏)
紙製食器の強みを発揮
被災地域では未だ混乱が治まっていないことから石川県側の要望を受け、発送には宅急便を利用。ここでも、シート状であるbeakの最大の強みが活かされた。
通常の食器を10,000個発送するとなると、破損を防ぐための緩衝材などが必要となるため、その箱数は膨大となる。しかし、beakはシート状のため、緩衝材も必要ない。実際に1万シートの発送費用は15,000円と、シート状であることに加え、紙製のため軽量であることから発送面での優位性も発揮している。また、多くの被災者が肩を寄せ合って暮らす避難所では、保管スペースを確保することすら難しいが、シート状のbeakは、場所を選ぶことなく比較的省スペースで保管できる。また、beakを箱詰めした段ボールには、QRコードを表示し、組み立て方法を動画で確認できるように配慮している。
同社では現在、beakを通じて学校などの教育機関と連携し、避難訓練などに参加し、防災意識の重要性を訴えている。
今年8年ぶりに開催された「drupa 2024」においてIPA2024入賞作品として展示されたbeakは、世界中からの来場者の関心を多く集めていたという。
同社では、現在の折り紙食器としての活用方以外のアイテムとして、beakの新たな商品開発も検討している。
新着トピックス
-
FFGS、潜在ニーズ発見と技術検証の場として機能[Solution Design Lab.]
2024年12月23日 企業・経営
-
竹田印刷、多様な個性をかたちに〜アール・ブリュット作品を世界に発信
2024年12月6日 企業・経営
-
富士フイルム、TOKYO PACKでブランドオーナーにデジタル印刷活用促す
2024年11月15日 マーケティング
-
価値協創で新たな潮流|エイエイピー、Jet Press 750Sが新たなステージへ
2024年11月13日 企業・経営
-
共同印刷工業(京都)、安定性の高さが決め手[Revoria Press PC1120導入事例]
2024年10月9日 ケーススタディ
新着ニュース
SNSランキング
- 84shares大阪印刷、同人誌印刷ビジネスで「圧倒的な画質」提供[AccurioJet KM-1e導入事例]
- 59sharesエプソン、印刷プロセスのデジタル化をリードするFiery社を完全子会社化
- 41sharesローランドDG、UVプリンターが紙器パッケージ製作に対応
- 39sharesSCREEN、Hunkeler Innovationdaysでインクジェットと後加工機の連携披露
- 39sharesミマキ、印刷脱色技術実用化でタペストリーのアップサイクル実現
- 36sharesエプソン、使いやすさと安定稼働を両立したエプソン初のDTF専用プリンター発売
- 33sharesFFGS、潜在ニーズ発見と技術検証の場として機能[Solution Design Lab.]
- 25sharesSCREEN GA、高速連帳IJの次世代モデル「Truepress JET 520NX AD」発売
- 25shares富士フイルムBI、1パス5色印刷を可能にしたミドルレンジモデルを発売
- 23sharesswissQprint、第5世代フラットベッド新モデル-生産性23%向上